共産主義車 ソ連編

共産趣味インターナショナル 9
ソ連編

松本京太郎(著/文)
ISBN 978-4-908468-84-1
C0022 四六判 240頁
価格 3,080円 税込 (本体2,800円+税)
書店発売日 2025年4月10日

 

 

紹介

閉鎖的な市場で独自の進化を遂げ
多くの制約の下で関係者が必死に開発した末に生まれた
ポンコツ車が次第に愛らしくなってくる!

★モスクヴィッチ(初代) ドイツから強奪したソビエト大衆車の元祖
★ジグリ 皆が羨む高級車だったのに晩年は最底辺
★ザポロージェツ(初代)VWとフィアットを融合させた鉄の豚
★SMZ-S-1L 傷痍軍人に支給されたサイクロプス3輪車
★オカ 走る棺桶と呼ばれたソビエト軽自動車
★ZiS-110 スターリンが愛したソビエト・パッカード
★ヴォルガ 2代目後期型 ソ連崩壊で凋落した官僚向けセダン
★チャイカ 豪華すぎてゴルバチョフに潰された高級車
★ブハンカ 半世紀を超えて愛されるオフロードバン
★GAZ-51 社会主義建設を支えた東側陣営の象徴的存在

☆「ソ連人民の自動車購入方法」「ソ連製ロータリーエンジン」等のコラム

目次

002 まえがき
003 目次
006 ソ連の自動車産業概史
010 本書で登場する自動車工場

019 第1章 人民の乗用車

020 KIM-10 戦災に泣かされたソ連初の大衆車
023 ★コラム ソ連車の命名規則
024 MZMA-400/401 モスクヴィッチ 初代 ドイツから強奪したソビエト大衆車の元祖
028 MZMA-402/407/403 モスクヴィッチ 2 代目 西側でも愛されたソ連設計の大衆セダン
032 MZMA-408/412 モスクヴィッチ 3 代目前期型 好調な輸出に支えられたコンパクトセダン
036 AZLK-2138/2140 モスクヴィッチ 3 代目後期型 停滞の時代を象徴する落ち目のセダン
039 AZLKのコンセプトカー
040 AZLK-2141 モスクヴィッチ 4 代目 新設計で生まれ変わった末代モデル
044 Izh-408/412 モスクヴィッチ 武器屋が作る人民のセダン
048 Izh-2125 コンビ 規制の網をかいくぐる妙案ハッチバック
052 Izhのコンセプトカー
050 Izh-2126 オーダ 後ろ盾に見捨てられた不遇なハッチバック
053 ★コラム ソ連人民の自動車購入方法
054 VAZ-2101 ジグリ イタリアから来た新たなスタンダード
058 VAZ-2103 ジグリ ホワイトカラー向けの高級大衆車
060 VAZ-2106 ジグリ 皆が羨む高級車だったのに晩年は最底辺
062 VAZ-2105 ジグリ 無機質無個性のTHE共産主義車
066 VAZ-2108 スプートニク 現代に続く新世代のFFハッチバック
070 VAZ-2110 110 ずんぐり奇怪なプレミアムコンパクト
073 ★コラム ソ連の自作車両
074 ZAZ-965 ザポロージェツ 初代 VWとフィアットを融合させた鉄の豚
076 ZAZ-966/968 ザポロージェツ 2 代目 オーバーヒートに怯える人民のアシ車
080 ZAZ-1102 タヴリヤ フィエスタに喧嘩を売るも不戦敗
082 SMZ-S-1L 傷痍軍人に支給されたサイクロプス3輪車
084 SMZ-S-3A 喜劇のアイコンとなった自動式車椅子
086 SMZ-S-3D 障害者に移動の自由をもたらしたマイクロカー
088 VAZ-1111 オカ 走る棺桶と呼ばれたソビエト軽自動車
090 ★コラム ソ連の福祉車両

091 第2章 特権階級の乗用車

092 GAZ-A ソ連初の量産乗用車はアメリカ生まれ
095 ★コラム ソ連のモータースポーツ① ~黎明期とフォーミュラカー~
096 GAZ-M1 ライセンスを骨までしゃぶりつくしたセダン
100 GAZ-M20 ポベーダ ソ連初のオリジナル設計の乗用車
104 GAZ-M21 ヴォルガ 初代 ソビエト高級車の新たなビッグネーム
108 GAZ-24 ヴォルガ 2 代目前期型 耐久性は折り紙付きの高級セダン
112 GAZ-3102 ヴォルガ 2 代目後期型 ソ連崩壊で凋落した官僚向けセダン
115 ヴォルガの迷走
116 GAZ-12 ZiM キャデラック風味の官僚向け大型セダン
119 ★コラム ソ連のモータースポーツ② ~国際ラリー~
120 GAZ-13 チャイカ 初代 20年間製造が続いたソ連製高級車の極致
124 GAZ-14 チャイカ 2 代目 豪華すぎてゴルバチョフに潰された高級車
127 ★コラム ソ連のモータースポーツ③ ~速度記録車~
128 ZiS-101 設計者の首を飛ばした欠陥まみれのリムジン
132 ZiS-110 スターリンが愛したソビエト・パッカード
136 ZiL-111 フルシチョフ時代のVIP向けリムジン
139 ★コラム ソ連を走った外国車
140 ZiL-114 ブレジネフ時代のフラッグシップ
143 ★コラム ソ連のロータリーエンジン
144 ZiL-4104 指導者の交代で顔が変わる巨大リムジン

149 第3章 オフロードカー

150 GAZ-61 設計は無茶だが技術獲得の立役者
152 GAZ-64/67 突貫作業で生まれたソビエト・ジープ
153 GAZ/UAZ-69 東側世界の標準装備となった小型オフロード
154 UAZ-469 40年間製造が続いた長寿オフロードカー
155 UAZ-3160 政府に裏切られたソビエト・ランクル
156 UAZ-450/452/3741 « ブハンカ» 半世紀を超えて愛されるオフロードバン
158 LuAZ-969/1302 « ヴォリーニ» 用途が特殊すぎたソ連初の民生オフロード
160 GAZ-M72 乗用車とトラックを融合したキメラSUV
162 MZMA-410 モスクヴィッチ フルシチョフ肝煎りの魔改造SUV
164 VAZ-2121 ニーヴァ 西側に衝撃を与えた大衆SUVの新星
168 民生オフロードカーの試作車たち

169 第4章 トラック

170 AMO-F15 どさくさに紛れてコピーした初の国産自動車
171 AMO-2/3 アメリカから買い付け、勝手に国産化
172 ZiS-5 戦勝に貢献した国民的中型トラック
174 ZiS-150/164 あらゆる場面で活躍した戦後型トラック
176 ZiL-130 ソ連の経済発展を支えた伝説的トラック
178 ZiL-4331 悪くはなかったが、発売が10年遅かった
179 KAZ-606/608 « コルヒーダ» グルジア生まれの鉱山用トレーラー
180 UralZiS-355 疎開先で独自進化を遂げた旧式トラック
181 UralZiS-355M 極寒地域特化の適材適所トラック
182 UralAZ-375 ソ連軍の輸送を支えたオフロードトラック
183 UralAZ-4320 石油危機で誕生したディーゼル仕様車
184 GAZ-AA 赤軍を支えたアメリカ生まれの小型トラック
186 GAZ-51 社会主義建設を支えた東側陣営の象徴的存在
188 GAZ-52/53 国家にも人民にも寄り添った万能トラック
190 GAZ-66 人間工学完全無視のオフロードトラック
191 GAZ-3307 時代遅れながらも、結果的には長寿車種
192 YaGAZ-Ya-3 過負荷に苦しんだ初の国産大型トラック
193 YaAZ-YaG-3 ソ連の工業化を支えた大型トラック
194 YaAZ/MAZ-200 2ストディーゼルが呻る戦後の大型トラック
195 MAZ-500 キャブオーバーを採用した先進設計トラック
196 MAZ-5336 現代に続く欧州基準の民生用トラック
197 KamAZ-5320 軍民問わず幅広く活躍する新世代トラック
198 その他のトラックと特殊車両
200 ★コラム ソ連のモータースポーツ④ ~トラックレース~

201 第5章 バスとバン

202 ZiS-8 トラックベースの最古参国産バス
203 ZiS-16 景観を意識した流麗な流線形ボディ
204 ZiS-154 ソ連には早すぎたe-Powerバス
205 ZiS-155 退化するも堅実な設計で路線を支えたバス
206 ZiS-127 国際規格不適合で引退を強いられた不遇バス
207 ZiL/LiAZ-158 急遽開発された延命仕様の大型バス
208 LiAZ-677 新技術を多数盛り込んだ大食いバス
209 LiAZ-5256 現代に繋がる新世代の都市型路線バス
210 LAZ-695 ウクライナ生まれの流麗な中型バス
212 LAZ-4202 政府指示の突貫作業で生まれた不良品
213 GAZ-3 1940年代の郊外路線を支えた小型バス
214 GZA/KAvZ/PAZ/RAF-651 ソ連全土で製造された人民のアシ
216 PAZ-652 先進的なモノコックボディの小型バス
217 PAZ-672 耐久性には自信アリ!地方都市人民のアシ
218 PAZ-3205 先進設計のおかげで30年間現役車種
219 KAvZ-685 農村人民に寄り添うボンネットバス
220 KAvZ-3976 設計が古すぎて路線バスとして認められず
221 少数生産バス
224 ★コラム トロリーバス
226 RAF-10 フェスティヴァーリ ラトビア生まれの元祖ソ連ミニバス
228 RAF-977 ラトビア(初代) 路線網の拡充に貢献した公共交通の革命児
230 RAF-2203 ラトビア(2代目) モスクワ五輪を陰で支えた新世代ミニバス
233 ErAZ-762 アルメニア育ちの低耐久性おんぼろバン
234 GAZ-2705/3302/3221 GAZの窮地を救った新時代の看板車種
235 SARB-スタルト ドンバス生まれの挑戦的ミニバス
236 ZiL-118/3207 ユーノスチ 国内外で絶賛された悲運の高級ミニバス

238 あとがき
239 参考文献

前書きなど

自動車は、世相の鏡である。内外装のデザインは時代の流行に大きく左右されるし、装備や性能は人々の安全意識や環境意識によって変化してきた。また、自動車文化というものは、国や地域によっても大きく異なる。経済基盤の強い国では自国内で自動車産業が発達するし、そうでない国では輸入に頼ることになる。後者の中でも、どのような自動車を使うかは、経済状況や国際関係によって千差万別だ。20世紀以降、人類の重要なパートナーとなった自動車には、その国や地域の経済事情、政治状況、時代の流行など、ありとあらゆる社会情勢が反映されているのだ。
これは、ソビエト連邦を始めとする旧東欧共産圏の諸国においても同様である。生産手段の私有が禁止された社会主義国家では、自動車産業は国家による管理下に置かれた。どのような自動車を作り、どのように人民に供給するかは、全て国家によって決定される。これは、共産圏においては、市場の需要と企業の資本力のバランスで成り立つ資本主義諸国とは根本的に異なる自動車文化が形成されることを意味する。国家の経済力や人民の生活水準、政治思想、産業政策などの世相が、国家の意思によって自動車文化に如実に反映されるのだ。ことソ連においては、1930年代以来、国内の自動車需要はほぼ全て自国で賄ってきた。世界のどこにも類を見ない「共産主義車」だけの特異な自動車文化が育まれてきたことは想像に難くない。なんとも面白そうな話ではないか。
ところが、我が国におけるソ連の自動車文化の扱いはあまりにも小さい。東西冷戦下においてソ連車が日本に輸入されることがほぼなく、(軍用車を除いては)重要視されることもなかったし、世界の自動車史における目立った功績がソ連車にあまりないのも大きな要因だろう。ニッチなジャンルとして断片的な情報だけが独り歩きし、「西側の製品をパクったポンコツ車」程度の扱いをされるのが関の山である。残念ながらそれは概ね正しい。しかし同時に、そのような自動車たちが、ソ連の成立から崩壊まで、そして各共和国が独立した現在でも、人民の生活に寄り添い、愛され、彼らの誇りとなったかけがえのない存在であることもまた事実である。掘り下げれば掘り下げるほど、独自の自動車文化に醸成された旨みが出てくるはずだ。
本書は、日本の自動車界隈では日陰者だったソ連の自動車に光を当てる試みである。いかなる状況で開発に至り、その結果どのような特性を持つ自動車が誕生し、そしてどのように人民に扱われたのかという情報を、旧ソ連圏をはじめとする東欧諸国で撮りためた写真と共にお送りする。自動車に詳しくない方でも親しみやすいよう、専門技術的な話は最小限にとどめ、各車種の成り立ちや時代背景、雑学的な話題を多めに盛り込んだ。車種の選定においては、ソ連の自動車産業における世相の反映をテーマとし、民生品としての乗用車を最優先として、次いでトラックやバスに紙面を割いた。愛好家が多いであろう軍用車について多く触れられなかった点はご容赦願いたい。なお、生産開始がソ連崩壊以降となった「ロシア車」や「ウクライナ車」などがいくつか含まれるが、本書で取り上げた車種はいずれもソ連時代に開発が始まったものであり、広義のソ連車として扱うこととした。
それでは、謎に満ちた「共産主義車」の世界を覗いてみよう。

著者プロフィール

松本京太郎(マツモト キョウタロウ)
1996年生まれ。幼少期からの自動車好き。スーパーカー、ヴィンテージカー、族車、ローライダーなど様々な趣向を経るも、生来よりの天邪鬼根性が祟り、辿り着いたのは「共産主義車」だった。ソ連車の魅力に取り憑かれ、自動車を見るためだけにロシアに渡航したところ、旅行にもハマってしまい、東欧圏を中心とした徘徊も趣味に加わった。

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