反日アニメUSA

珍アニメ完全解説 Vol.3
戦時下アメリカのプロパガンダ・カートゥーン

髙井ホアン(著/文)
ISBN 978-4-908468-86-5
C0076 四六判 224頁
価格 2,640円 税込 (本体2,400円+税)
書店発売日 2025年7月10日

 

 

紹介

笑いや冒険の中に突如、ジャップが飛び込んでくる!!
プロパガンダと産業を両立!
教育アニメが兵士を助ける!

★A Language All My Own 日米友好を願う、日本のベティ人気に応える一作
★The New Spirit 喜んで所得税を納めたくなる(?)納税推進アニメ
★Japoteurs 日系人をスパイとして描くスーパーマンの反日アニメ
★Six Legged Saboteurs ヒトラーも東条も害虫扱い、農務省による衛生アニメ
★Recognition of the Japanese Zero Fighter レーガンも登場、零戦視認教育映画
★Seein’ Red, White ‘N’ Blue ポパイとブルートがタッグを組む徴兵推進反日アニメ
★Victory Through Air Power ディズニーをあげての超大作、空軍戦略啓発アニメ
★War Dogs 「トムとジェリー」のコンビが描く軍用犬ギャグアニメ
★Commandments For Health 問題児兵士が引き起こすゲリピー大騒動
★Tokyo Woes 謀略放送アナウンサーの東京ローズが大活躍
★「戦時下アニソン」「日本人が「描かれる」まで」等のコラムも!

目次

2 まえがき
4 目次
6 凡例

7 第1章 戦前
8 Japanicky なぜか着席を強要する、フィリックスの初来日アニメ
12 Japanese Lanterns 日米関係悪化のあおりを杜撰に受けた悲劇の作品
16 A Language All My Own
日米友好を願う、日本のベティ人気に応える一作
20 The Mighty Navy 「謎の敵」に日本の影を感じる、開戦直前の一作」
24 How War Came アメリカ市民に覚悟を問うドキュメンタリー調アニメ
26 米軍を支えたスクリーン英雄 ~スナフ、フック、マクギリカディ~

27 第2章 戦争前期
28 The New Spirit 喜んで所得税を納めたくなる(?)納税推進アニメ
34 Blunder Below 水兵ポパイの活躍が、日本軍潜水艦の野望を砕く
38 Fleets of Stren’th 何戦争か定かではないが、とりあえずビクトリー
42 Crazy Cruise 虫、土人、ジャップ……アメリカ目線で世界を笑う一作
46 Out of the Frying Pan into the Firing Line
ミッキーマウスの衝撃的な登場に動揺しかねないアニメ
50 「戦時下アニソン」の世界
52 The Ducktators 枢軸国の数々の悪行を、鳥類の世界で描く一作
58 You’re a Sap, Mr. Jap
始終日本を罵倒する恐怖のメディアミックスアニメ
64 All Out For ‘V’ 戦争協力とは何かをある意味考えさせられる一作
68 Blitz Wolf ヒトラーの野望を「三匹の豚」で例えるギャグ調アニメ
70 Song of Victory 「バンビ」の雰囲気漂う自然豊かな反枢軸アニメ
74 Japoteurs 日系人をスパイとして描くスーパーマンの反日アニメ
78 Scrap the Japs 語呂合わせで戦意高揚、相変わらずの反日アニメ
82 Eleventh Hour 毎晩11時、誰かのせいで横浜が壊滅する……
86 Six Legged Saboteurs
ヒトラーも東条も害虫扱い、農務省による衛生アニメ
90 Der Fuehrer’s Face
ナチス支配下の一日を描いたディズニーの大人気作品
94 The Spirit of ‘43
ドナルドと一緒に、給料の愛国的な使い方を学ぶアニメ
98 Recognition of the Japanese Zero Fighter
あのレーガンも登場する、零戦視認教育映画
100 Bury the Axis 人形アニメの第一人者が送る反枢軸国アニメ
104 Seein’ Red, White ‘N’ Blue
ポパイとブルートがタッグを組む徴兵推進反日アニメ
108 The Fifth-Column Mouse
猫と鼠の世界で「第五列」の恐怖を伝える思想アニメ
112 Tokio Jokio ワーナーの粋を集めた日本徹底嘲笑ギャグアニメ
118 Victory Through Air Power
ディズニーをあげての超大作、空軍戦略啓発アニメ
122 Tin Pan Alley Cats 過去の名作の世界を再利用、しかし後年に規制
124 アメリカ・アニメーションを支えたスタッフたち

125 第3章 戦争後期
126 Take Heed Mr. Tojo 朝鮮戦争も冷戦もない未来よりお送りします
130 Spies お口チャックに乳アンテナ、防諜テーマのスナフ第一作
134 Scrap Happy Daffy 詐病かそれとも真病か、深刻さが見え隠れする一作
136 The Goldbrick 詐病?真病?考えさせられる教育アニメ
140 War Dogs 「トムとジェリー」のコンビが描く軍用犬ギャグアニメ
142 Room and Bored 普通のギャグアニメでも、戦争からは逃れられない
144 Home Defense 民間防衛を乱す甥っ子たちとドナルドの苦労アニメ
148 Camouflage ディズニーの技術が光る、興味深い擬装教育アニメ
152 How to Be a Sailor
おとぼけキャラも海軍に関われば特攻魚雷になるのみ
156 Going Home 秘密兵器が似ている……本末転倒な未公開防諜アニメ
160 Bugs Bunny Nips the Nips
ウサギ一匹で守備隊が全滅、恐怖の南洋アニメ
164 アメリカ・アニメーションの黎明期
168 Commando Duck 日本兵に囲まれたドナルド・ダックの孤立奮闘
172 Hell-Bent for Election
今も昔も変わらない、大統領選キャンペーンアニメ
176 Censored 誰もが嫌がる検閲の重要性を示す防諜教育アニメ
180 Outpost 些細な兆候も逃さない、監視任務の重要性を伝える一作
184 Commandments For Health: Use Your Head
問題児兵士が引き起こすゲリピー大騒動
188 Tokyo Woes 謀略放送アナウンサーの東京ローズが大活躍
192 In the Aleutians – Isles of Enchantment
アッツ、キスカ、極寒の島々を伝える教育アニメ
196 Cap’n Cub 熊の子キャプテンがイエローモンキーと大空戦
200 A Few Quick Facts: Japan
リミテッドアニメで描かれた日本早わかりアニメ
204 日本人が「描かれる」まで

205 第4章 戦後
206 No Buddy Atoll 小さな島に日米の兵士が二人ぼっち……衝撃的アニメ
210 Operation Snafu ゲイシャへの羨望が秘められたドタバタアニメ
214 Private Snafu Presents Seaman Tarfu in the Navy
スナフ・シリーズの最後を飾る海軍勤務の弟タルフ
218 アメリカ・アニメーション概史

222 参考文献
223 あとがき

前書きなど

2025年の現代、我々の周りには、様々なイラスト、漫画、そしてアニメーションといった、ヒトのイマジネーションを介した表現がとりまいている。現代において、アニメーションは「アニメ」「ANIME」などとも表記され、日本やアメリカのアニメやそのキャラクターは世界中において親しまれている。こうしたイマジネーションの世界を一言で言い表すことは難しいが、それらはモニターやスクリーンの前のある個人の人生を楽しく美しく彩ることもあれば、国家により公に持ち上げられ観光資源や文化大使などとしてみなされることもある。そして、ある時は、「武器」となったこともある。
第二次世界大戦下、連合国・枢軸国を問わず、全ての参戦国は総力戦体制下におかれた。兵力や武器の性能だけではなく、兵站能力は無論、日常見るあらゆる光景が、戦争と勝利に向けた過程を構成する一つの部品となる。その様な状況において、娯楽、更には漫画、アニメーションも、武器となった。そして、アメリカは、その規模は無論、「娯楽」としてのアニメーションと、「武器」即ちプロパガンダや軍事教育としてのアニメーションを産業的に両立させた稀有な国であった。戦時下日本のアニメーション業界が、『桃太郎 海の神兵』他いくつかのプロパガンダ的作品を国の後援のもとに苦心しつつ制作していた頃、アメリカでは平然と毎週のようにアニメーションが公開され、現代でも知られるキャラクターが暴れ回り、戦地においてもコメディを取り入れた教育アニメが兵士を助けていた。現実の工業能力や物量のその活用だけでなく、イマジネーションの世界と活用においても、間違いなくアメリカは「勝者」であったといえるだろう。だが、その時、スクリーンには何が投影され、敵である日本をどう描いていたのだろうか。
ミッキーマウス、ドナルド・ダック、ポパイ、バッグス・バニー……。現代においても、アメリカのアニメーション(カートゥーン)・キャラクターは広く知られている。彼らの多くは、1920年代から30年代にかけてのアメリカのアニメーション業界の中で生まれ、数十年に渡るアメリカのアニメーションにおける「黄金時代」を過ごしつつ今に至ってきた。そしてその風景の中に、太平洋戦争・第二次世界大戦も組み込まれている。そこにあるのは、見るからに説教臭いプロパガンダ的な作品だけではない。いつもの笑いや冒険の中に、突如(しかし計算高く)、戯画化された「日本」が飛び込んでくる。それは単なる、サムライ、スシ、ゲイシャといったステレオタイプのみに留まるものではなかった。そして、そう描写され放映されるまでにも、コンテンツ産業と政府の様々な駆け引きや社会情勢の反映があった。また、それ以前にも蔓延していた黒人やアメリカインディアンを始めとするマイノリティへのステレオタイプ的描写との連続でもあった。太平洋の向こうの敵である「日本」だけでなく、アメリカ国内において正当な権利を持っていた日系人に対しての「スパイ・第五列」視といった差別や偏見、憎悪も煽られていた。西海岸のハリウッドは、太平洋側の日本軍の脅威に対しても、そして西海岸に多く居住する日系人に対しても、「前線」であった。
前作にあたる拙著『鬼畜米英漫画全集』では、戦時下日本において描かれた様々な反米英的・反アングロサクソン的漫画作品を紹介し、また漫画家たちの背景、当時の日本の宣伝政策などについても扱った。それは言い換えれば、戦時下日本の強烈な統制下にあって漫画がどのように利用され、「憎悪の光景」が産み出されたのかという例であった。そして太平洋戦争において相対する立場となったアメリカは、自由民主主義にして資本主義国家の盟主であった。日本に比べ明確に様々な「表現の自由」があり、また日本以上に映画・アニメーション産業が発展していたアメリカにおいてどのような光景が産み出されたか、「ジャップ」はどのように描かれたのか、こちらも知っておく必要があるだろう。「憎悪」を要請され、あるいは「憎悪によって生活」できてしまう社会は、いつ、どこにおいても生じうる。
本書『反日アニメUSA』では、主に太平洋戦争下(1941~1945)のアメリカ合衆国及び一部イギリスで公開された、数多くの「反日的」な要素を含むアニメーション及びその周辺の環境について紹介・解説する。また、日本がどのように描写されたかの過程を追うために開戦以前の作品も紹介している。気になった作品を視聴できるように、視聴可能アドレスなども付している。是非前作『鬼畜米英漫画全集』も合わせてお読みいただきたい。
当時のアニメーションは、制作者達がそう願っていたように、今から見てもユーモアにあふれ、爆笑できるものも大いに存在する。同時に率直に言えば偏見の動く歴史でもあり、あるいは単に悪趣味と指さすこともできるだろう。筆者も、面白い部分は面白く伝えたい気持ちで内容やキャプションを書いてきた。本書に登場するアニメーションをどう読み取るのも、読者の自由ではある。ただ、今日我々に夢や希望や笑いを与えているコンテンツが、明日にはまさにその「夢・希望・笑い」の力をまとったまま武器に仕立て上げられ現実に「攻め込まされ」、憎悪を巧妙に描いた時代があったということだけは忘れないようにしよう。現実の我々だけでなく、アニメのキャラクターも、二度と現実の誰かに対して武器を向ける未来が来ないように願いつつ。

髙井ホアン

著者プロフィール

髙井ホアン(タカイ ホアン)
1994 年生まれ。作家・ライター。日本人とパラグアイ人の混血(ハーフ)。埼玉学園大学卒(カリブ史を研究)。高校時代より反権力・反表現規制活動を行う中、その過程で戦前の庶民の不敬・反戦言動について知り、そのパワフルさと奥深さに痺れて収集と情報発信を開始。2013 年よりTwitter 上で「戦前の不敬・反戦発言Bot」「神軍平等兵 奥崎謙三Bot」などを運営中。2019 年5 月に『戦前不敬発言大全』『戦前反戦発言大全』(パブリブ)を出版。『現代ビジネス』『情況』など各種メディアで執筆活動を行うほか、各地でイベントやライブなどにも出演しており、反社会的アーカイバーも名乗る。趣味は読書と無計画な旅行。今後も、「戦前」と「戦後」の狭間、そして現代を繋ぐ地点を探っていきたい。

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