絶対に解けない受験世界史3

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大学入試問題問題シリーズ 3
悪問・難問・奇問・出題ミス集

稲田義智(著/文)
ISBN 978-4-908468-51-3
C7022 A5判 560頁
価格 2,750円 税込 (本体2,500円+税)
書店発売日 2021年8月10日

 

 

紹介

数々の出題ミスを暴露してきた本シリーズ
早慶悪問激減・上智世界史ほぼ撤退・センター試験終了
シリーズ継続すら危ぶまれたが杞憂に!
次から次へと出てきて過去最多ページ数に!

×「ビ」が「ピ」になる等、頻発するOCRミス (該当複数)
×大学が発表した公式解答例が文字数オーバー(島根県立大 2020年)
×設問と無関係な事実誤認に基づく反原発運動を押し売り(専修大 2020年)
×ブレグジット直後にイギリスを「EU現加盟国」(早稲田大 2020年)
×正解が前の試験時間の英語の設問に書いてあった(慶應大 2019年)
☆ヒット曲『デスパシート』出題するも歌詞覚えていれば解答可能(慶應大 2019年)
☆解答選択肢で「アンコール=ワットの修復・保存に上智大学は協力している」とPR(上智大 2019年)

……等などヘンな問題を徹底的に調査・検証・解説・糾弾!

「世界史用語の変化」「大学入学共通テストの導入騒動の記録」等のコラムも

目次

■序文 2

2020年度上智 12
2020年度早慶 31
2020年度国公立 73
2020年度私大その他 93
■コラム1 世界史用語の変化 193

2019年度上智 208
2019年度早慶 221
2019年度国公立 257
2019年度私大その他 275
■コラム2 大学入学共通テストの導入騒動の記録 346

2018年度上智 358
2018年度早慶 369
2018年度国公立 398
2018年度市立その他 404
■コラム3 高校世界史で,近世・近代の経済史学上の論点はいかに扱われているか 470

2017年度私大その他 488
■コラム4 大学入学共通テストの試行調査 544

■終章 最後にちょっと,まじめな話を 552

■あとがき 558

前書きなど

『絶対に解けない受験世界史』シリーズも3冊目となった。前巻・前々巻からの読者には感謝申し上げたい。しかし,前巻を出版した頃は早大・上智大などの難関私大を中心に悪問の数が減少していて,社会的なインパクトも大きかったように思われるが,継続して活動しているからこそ「喉元過ぎれば」という状況なのか,近年はまたしても悪問の数が増えてきているように思われる。一方で,大学の側もあのような悪問を生む状況を絶対的に回避したいのか,入試で世界史を課す日程が減少するという現象も起きている。なぜこの2017~2020年に集中したか,大学側が挙げる理由としてはセンター試験が2020年を最後に廃止となり,2021年からは大学入学共通テストに切り替わるからというものであった。特に2020年を最後に上智大がほとんどの日程で,早稲田大が政経学部と国際教養学部で入試科目を大きく変更して世界史を扱わなくなったのは大きなトピックであった。本企画で収録されることは無かったが,国立大でも和歌山大・埼玉大・福井大など伝統的に二次試験で世界史を課してきた大学が次々と廃止している。世界史,というよりも地歴公民はどんどん入試科目として軽視されていく流れかと思われるが,だからこそ残す大学には良質な出題を期待したい。
以下は前著にも書いた内容であるが,繰り返しておきたい。なぜ出題ミスや悪問が許されないかと言えば,端的に言って公正さを欠くからである。より具体的に言えば受験生の努力を無に帰す行為である。作題者の大学研究者からすると単なる厄介な年次行事でも,受験生からすると一生のかかった大事な試験だ。無論,「大学入試が人生の全てではない」のだが,それとこれとは別の命題であり,一生がかかっていることには違いない。問題を解くことに膨大な勉強時間を費やしてきたからこそ,どうがんばっても解けない問題を出すのは出題側の不始末であり,指定した範囲から逸脱するのも,ルール違反だ。範囲に関しては明確なルールが存在しないとはいえ,「高校生として必要な知識・教養を問う」というのが大学と受験生の間の紳士協定であろう。

また,多くの悪問は知的怠惰と傲慢さから生じているものであり,避けがたいケアレスミスではない。ここは非常に重要なところで,前者と後者には天と地ほど開きがある。作題者も人間であるから,どれだけ注意をしていてもミスを起こすことはある。そのためにクロスチェックをするであろうが,複数の人間が見落とすことも稀にある。そういった場合にはミスの存在を発表し,適切な措置をとれば,責任は相当に軽くなる話なのである。少なくとも私はなんら糾弾しないし,私自身しばしば誤字脱字を起こすのでむしろ同情したくなる。
しかし,実際に解いて分析してみると,出題ミスや悪問は,単純な怠惰と傲慢さから生まれたとしか思えないものがほとんどである。課すべき出題範囲を把握しておらず,歴史の問題ではあるが,明らかに高校世界史の範囲を逸脱した出題をする。結果,紳士協定は守られない。また,クロスチェックを通していないとしか思えないほど独りよがりな問題を作り,しかもミスを出したところで発表も訂正もしないで,スルーしようとする大学さえある。はっきりと言ってしまえば教育研究機関としてあるまじき態度であり,知的怠惰と傲慢と言われても仕方がない。その実態は案外と知られていないのではないか。センセーショナルに一部の弩級の悪問だけが騒がれ,それ以外は無視されているのではないか。むしろ問題は,センセーショナルではない程度の悪問が跋扈していることだ。こうした現状は,暴露されなければなるまい。

本書の目的
本書の目的はいくつかある。
1.入試世界史の一部大学に見られる,杜撰な作問を明らかにし,糾弾すること。特に,有名大学・難関大学にあぐらをかいている方々の知的怠惰の暴露を最大の目的とする。
2.真摯に作られた問題でも,出題ミスになることはある。そこで,出題ミスを集めることで,出題ミスの出やすい傾向を分析する材料として世の中に提供する。
3.単純に,バカバカしい入試問題をエンターテイメントとして笑い飛ばし,当時の受験生たちの無念を供養することにする。
4.受験世界史範囲外の超難問を収録することで,受験生および一般の歴史好きに対する挑戦状とする。なお,本書を参考書として用いた結果として落ちても著者は責任を取りません。

本書の目的として注記しておくこととして,現行の大学入試制度の批判は目的としていない。要するに「世界史という科目自体の存在意義」ひいては「知識を問う筆記試験という問題形式自体の存在意義」に関する議論は,本書ではしない。それは私の手に余る議論だ。本書はあくまで,「現行の世界史という試験として,糾弾されるべきもの・笑えるもの・特異なものを記録として収集し,分析する」ことだけに特化している。また,本書は調査範囲を近年に限っているため,遠い過去の伝説的な過去問はほぼ収録してない。この点はご了承いただければ著者として幸いである。

収録の基準と分類
悪問というものを考えるとき,反対に言って良問・標準的な問題とは何だろうか。私は以下のように定義する。そしてここから外れたものを悪問として扱う。

・世界史という科目の都合上,歴史的な事象ないしそれに関連する地名等を問うもの。
・大学入試という形式上,最低限どれかしらの高校生向け検定教科書に記載がある内容を範囲とするもの。これを逸脱するものは完全なルール違反である。
・また,現実的に考えて受験生が販路の限られた教科書の全種類に触れることは不可能であり他科目への圧迫となるため,可能な限り半分以上の教科書に記載がある内容を範囲とするもの。
・歴史的知識及び一般常識から,「明確に」判断を下せるもの。作題者の心情を読み取らせるものは世界史の問題ではなく,現代文の試験としても悪問である。

以上の条件から外れたものは,悪問として扱えるだろう。しかし,この緩い判定では,あまりにも多くの問題が引っかかってしまうのが現状である。よって,さらにここからさらに厳しい条件を課しつつ,以下のように分類してリストアップすることとした。

出題ミス:どこをどうあがいても言い訳できない問題。解答不能,もしくは複数正解が認められるもの。
悪問:厳格に言えば出題ミスとみなしうる,国語的にしか解答が出せない問題。
奇問:出題の意図が見えない,ないし意図は見えるが空回りしている問題。主に,歴史的知識及び一般常識から解答が導き出せないもの。
難問:一応歴史の問題ではあるが,受験世界史の範囲を大きく逸脱し,一般の受験生には根拠ある解答がおおよそ不可能な問題。

補足説明として。出題ミスは「完全に解けないこと」が条件。少しでも解けそうならば悪問に分類した。難問・奇問の判定基準であるが,基本的に「山川出版社から刊行されている『世界史(B)用語集』(以下カギカッコ無しに用語集と記載)に記載がないもの」は難問・奇問とした。もう少し説明すると,用語集とは高校世界史Bとして検定を突破した教科書に記載されている歴史用語を網羅的に収録した辞書のようなものである。網羅的に収録しているため,この用語集に収録されていないということはどの教科書を見ても載っていないと言ってもまず問題ない。つまり,範囲外である。このうち,一応ジャンル的には歴史になりそうなものは難問,そもそもジャンルが歴史ではないものは奇問とした。

……という運用で2014年頃までは問題なかったのだが,用語集は2014年10月に新課程の版に改訂された際に,用語の大幅なリストラを行って約20%をカットした(収録用語が約7000語から約5600語になった)。これは検定教科書の冊数が11冊から7冊に減少した影響もあるが,「編者である全国歴史教育研究協議会が不要と判断した用語は教科書に記載されていても収録しない」という新たな方針を採用したという点も大きく影響しており,結果的に用語集の網羅性はかなり下がっている。ゆえに,2014年10月以降の版では「用語集には記載がないが,教科書のうちいずれかに記載がある」という現象がそれなりに見られるようになってしまい,以前より高校世界史範囲内・外の判定が困難になった。一応,用語集に記載がないがいずれかの教科書には記載があるという用語に遭遇した場合,掲載されている教科書のシェアや,常識的に考えて通常の受験勉強で覚える用語かどうか等の観点から総合的に検討して判定した。また,用語集に記載されていても,普通は覚えないもの・覚えようとは考えないものが出題されていた場合は,難問として収録した。そこは実際に解く上での難易度を勘案して柔軟に運用したつもりである。よって,本書には「そりゃ載ってはいるけどさぁ……」という類の超難問がいくつか収録されているので,腕に覚えのある方は範囲外の問題とともにチャレンジしてみてほしい。また,分類:難問については,用語集に載っていないものを完全に機械的に収録したため,いくつか良問も含まれている。この種別については収録即悪質というわけではないことを注記しておく。
もう一つ,用語集の説明として。用語集では,収録された用語の横には丸数字がついており,これが検定教科書に載っていた数を示している。たとえば「シュメール人⑦」であれば,7冊の教科書に「シュメール人」という記載があることを示す。なお,7冊というのは最大数であり,シュメール人は全ての教科書に載っているということがわかる。逆に「フルリ人①」は7冊中1冊にしか記載がない。ここからシュメール人はメジャーな用語,フルリ人はマイナーということがわかる。以後,この丸数字は特に注記がない限り用語集頻度を示す数字として扱う。その他,図版や地図を使った問題については,手持ちの何冊かの資料集を見て掲載があるかないか,また私の判断で知名度を勘案し,範囲内・外を判断した。一般的な認識とずれている可能性が無くはないので,この点もご了承いただきたい。
最後に,入試問題については,現物の入手が可能だったものについては現物を参照した。しかし,実際にはほとんど不可能だったので,ほぼ旺文社の『入試問題正解』といわゆる『赤本』,主要予備校の解答速報を参照した。難問・悪問になってくると各予備校・参考書の解答が割れているものもあって,おもしろい。そこも注目していただければと思う。これらの書誌情報については以下の通り。

著者プロフィール

稲田義智(イナダ ヨシトモ)
受験世界史研究家。東京大学文学部歴史文化学科卒。世界史への入り口はコーエーの『ヨーロッパ戦線』と『チンギスハーン・蒼き狼と白き牝鹿IV』だったが,実は『ファイナルファンタジータクティクス』と『サガフロンティア2』の影響も大きい気がする。一番時間を費やしたゲームは『Victoria(Revolution)』。ゲームしかしてなかった人生だったが,奇縁にてこういう本を出すことになった。楽しい執筆作業だったが,ちょっと当分入試問題は見たくない。

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