世界過激音楽 21
演奏の肉体的限界に挑む超人達
脇田涼平(著/文)
ISBN 978-4-908468-73-5
C0073 A5判 208頁
価格 3,080円 税込 (本体2,800円+税)
書店発売日 2024年5月10日
紹介
デスメタル最凶テクニック
スウィープ、タッピング、スラッピング、ハーモニクス
グラヴィティ・ブラスト・ショットガン・ボーカル等
演奏の肉体的限界に挑む超人達!音楽オリンピックの最前線で戦うミュージカル・アスリート達にフォーカス!
Death 夭折したテクニカル/プログレッシヴ・デスメタルの元祖!
Atheist ジャズ・フュージョンの手法をスラッシュメタルに高次元融合!
Nocturnus キーボード取り入れコズミックでシンフォニックな神秘サウンド!
Brain Drill 超絶技巧タッピングフレーズ動画でデスコアにまで衝撃を与える!
Origin グラヴィティ・ブラスト、スウィープ、タッピングの圧倒的破壊力!
Obscura ネオクラシカル炸裂するキング・オブ・モダン・テクデス!
Gorguts アヴァンギャルド/ディソナント・デスメタルの先駆者!
Archspire 人間離れしたスピードととショットガン・ボーカル!
Necrophagist テクニカル・デスメタルの基礎を築き上げるも行方不明に!
Cryptopsy ドラミングで圧倒させるテクニカル・ブルータル・デスメタルの元勲!
インタビュー Obscura, Hour of Penance, Gorod, Hideous Divinity, Psycroptic, Desecravity等
「一般人でも衝撃を受けるYouTubeテクニカル・デスメタル演奏動画」等のコラム69カ国306バンド588作品紹介
目次
2 まえがき
6 目次
9 Chapter 1 USA
10 Death 夭折したテクニカル/プログレッシヴ・デスメタルの元祖!
12 Atheist ジャズ・フュージョンの手法をスラッシュメタルに高次元融合!
14 Nocturnus キーボード取り入れコズミックでシンフォニックな神秘サウンド!
16 Deeds of Flesh 変拍子やリズムチェンジで予測不可能な展開を繰り広げる!
19 Nile 古代エジプト文明を取り入れ、疾風怒涛のブラストビートで展開!
22 デスメタルに知的な芸術性を与えたKarl Sandersの功績
25 Origin グラヴィティ・ブラスト、スウィープ、タッピングの圧倒的破壊力!
28 Decrepit Birth ブルータリティ維持しながらメロディック・テクデスを切り開く!
30 Brain Drill 超絶技巧タッピングフレーズ動画でデスコアにまで衝撃を与える!
32 Abnormality / ゲーム業界でも知られるAbnormalityのボーカリストMallika
33 Allegaeon
34 Alterbeast / Anomalous / Arkaik
35 Arkaik
36 Burning Inside / Capharnaum / Cattle Decapitation
38 Cognitive
39 Continuum / Covenance / Crown Magnetar
40 Darkside of Humanity / Demonicon / Destroying the Devoid / Dismal Lapse / Divine Heresy
41 Equipoise / Equipoiseインタビュー
43 Entheos / Eschaton / Flub / Gutsaw / Hate Eternal
45 Hellwitch / Inanimate Existence
47 Inferi
48 Isolation in Infamy / Katholik / Lecherous Nocturne
49 Malignancy / Mordant Rapture
50 Monstrosity
51 Mortem Obscuram / Odious Mortem / Ominous Ruin
52 テクニカル・ドゥームメタル 遅くてテクニカルとはどういうことか
54 Oppressor / Parasitic / Pyrithion
55 Serpent of Gnosis / Severed Savior / Slaughterbox / Sleep Terror
56 Son of Aurelius / Suffocation
58 The Faceless
59 The Kennedy Veil
60 The Odious Construct / The Zenith Passage / The Last of Lucy / Unmerciful
61 Unmerciful / Vale of Pnath / Vampire Squid
62 Viraemia / 追悼 Scott Plummer (Viraemia) / Virulent Depravity
63 テクニカル・デスメタルとプログレッシヴ・デスメタルの違い
65 Chapter 2 Canada & Latin America
66 Gorguts アヴァンギャルド/ディソナント・デスメタルの先駆者!
68 Cryptopsy ドラミングで圧倒させるテクニカル・ブルータル・デスメタルの元勲!
72 テクニカル・デスメタルのカリスマ・ドラマー、Flo Mounier、そのキャリアとプレイ・スタイル
75 テクニカル・デスメタルとブルータル・デスメタルの違い
76 Augury オペラのように荘厳で、クラシックのように雄大!
78 Beyond Creation 本物のオーケストラも使用したネオ・クラシカル・テクデス!
80 Archspire 人間離れしたスピードとショットガン・ボーカル!
82 Akurion / Apogean / Atheretic / Beneath the Massacre
83 Disembarkation / First Fragment
84 Fracturus / Harvest the Infection / Hatred Reigns / Killitorous
85 Martyr / Neuraxis
86 Plaguebringer
87 Quo Vadis / Spasme / Tomb Mold
88 テクニカル・デスコアを代表するバンド達
91 Deconversion / Indepth / Serocs / Symbiotic
92 Visceral Abnormality / Amorphic Pale / Miasis / Inhuman / Internal Suffering
93 Nonsense Premonition
94 Solipsismo / Motorized / Apneuma / Ayin / Bloody Violence
95 Burn the Mankind / Desecrated Sphere / In Torment
96 Strangulation / The Putrefying / Spiritual Kaos / Bleak Flesh / In Asymmetry
97 フレットレス・ベースとテクニカル・デスメタル
99 Chapter 3 Europe
100 Necrophagist テクニカル・デスメタルの基礎を築き上げるも行方不明に!
102 Muhammedは今、どこにいるのか?
103 Obscura ネオクラシカル炸裂するキング・オブ・モダン・テクデス!
105 Obscura インタビュー
110 Algetic / Atrocity / Centaurus-A / Cytotoxin
111 Deadborn / Defeated Sanity
112 Grand Old Wrath / Ichor / Infecting the Swarm / Irate Architect
113 Orphalis / Pavor / Phobiatic
114 Profanity / Retaliation / Shattered / Sinners Bleed / Spheron
115 Cephalic / Dayum / Spire of Lazarus / Amok / Darkrise
116 Omophagia / Apophys / Expulsion / Polluted Inheritance
117 Prostitute Disfigurement / Severe Torture
118 Spectrum of Delusion / Cause N Effect / Chemical Breath / Emeth
119 The End of All Reason / Triagone / Pestifer / Arkaeon
120 Gorod シネマティックなテクニカル・グルーヴメタルからジャジーに!
122 Gorodインタビュー
125 Amoeba / Catalyst / Cryptic Process / Dungortheb
126 Dysmorphic / Exocrine
127 Kronos
128 Obsidium / Pitbulls in the Nursery / Red Dawn
129 Solar Eruption / Sun Eater / Wrath of the Nebula / Bloodshot Dawn / Imperium
130 Trigger the Bloodshed / Unfathomable Ruination
131 異母兄弟テクニカル・スラッシュメタル
132 Spawn of Possession ショットガン・ボーカルとピッキングハーモニクスが炸裂!
134 Aeon
135 Anata / Carnosus
136 Soreption / Visceral Bleeding
137 Corpus Mortale / Eciton / Celestial Scourge
138 Hideous Deformity / Adramelech / Deepred / Demilich / Revisal
139 Beneath / Ophidian I / テクニカル・パワーメタルの未知なる可能性
140 Fleshgod Apocalypse 白塗り・タキシードで中世ヨーロッパ・スペクタクル!
142 Hideous Divinity 聴覚学専門医を擁し、ブラックメタルのスピードに迫る勢い!
144 Hideous Divinityインタビュー
146 Hour of Penance 雪崩のように襲いかかる重量級ブラストビートの圧倒的迫力!
148 Hour of Penanceインタビュー
152 Algophobia / Blasphemer / Bloodtruth / Carnality / Deceptionist
153 Exhumer / Gory Blister / Hateful
154 Human / Illogicist / Logic of Denial
155 一般人でも衝撃を受けるYouTubeテクニカル・デスメタル演奏動画
156 レスリングからデスメタル画家へ 数奇な人生を生きるイタリアの奇才Paolo Girardi
158 Logic of Denial / Maze of Sothoth / Natron / Septycal Gorge / Unbirth
159 Virial / Absorbed / Human Mincer
160 Scent of Death / Enblood / Trepid Elucidation / George Kollias
161 Mass Infection / Murder Made God / Sarcovore / Shadow in the Darkness / Vehement Animosity
162 Banisher / Condemnation / Decapitated
163 Deivos
164 Devilyn / Dies Irae
165 Hate / Lost Soul
166 Redemptor / Sceptic / Violent Dirge
167 オリンピックに出場したSepticのボーカリスト・Marcin Urbaś
168 Godless Truth / Brute
169 Dissonance / Depths of Depravity / Gutted
170 Dawn of Creation / Mephistophelian / Arhont / Spectral
171 Enthrallment / Beyond the Structure / Arhideus / Back Door to Asylum / Bufihimat
172 Grace Disgraced / Graveside / Humaniac
173 Monumental Torment / Necrocannibal / Rage of Kali / Sentenced to Dissection / Sieged Mind
174 Succubus / Unplexiety / Deathbringer / Eximperituserqethhzebibšiptugakkathšulweliarzaxułum
175 Irreversible Mechanism / Posthumous Blasphemer / Relics of Humanity
176 Vein of Hate / Zarin / Cryogenic Implosion / Hedonistic Exility
177 Schizogen / Abnormyndeffect / Ritual Mortis / Bohema
178 代表的レーベルUnique LeaderとWillowtip179 Chapter 4 Asia, Oceania, Africa, International
180 Psycroptic タスマニア出身ミュージシャンとして最も世界中をツアーした!
183 Psycropticインタビュー
185 Blade of Horus / DeathFuckingCunt / Infinite Density / Depravity / Ouroboros
186 Revulsed / The Ritual Aura
187 The Schoenberg Automaton / Xenobiotic / Cephalopod / Dawn of Azazel
188 Carnophage / Decimation / Molested Divinity
189 Eternal Gray / Oath to Vanquish / Viieden / Tyrant Throne / Scox
190 Nervecell / Crescent / Vomit the Hate / Harvest Misery / Imperium of Man
191 Imperious Vision / Evil Conscience / Gaijin / Homicide / Nawabs of Destruction
192 Bloodline / Laash / Antithesis / Chaosfury / Deadsquad
193 Djin / Hellhound / Humiliation / Neptunus
194 Symbiotic in Theory / Arbitrary Element / Emperium / Deathpact / Horror of Pestilence
195 Obsoletenova / Karmacipher / Dehumanizing Encephalectomy / Fecundation / Xenotropic Mutation
196 Desecravity アメリカ帰りドラマー率いる日本を代表するテクニカル・デスメタル!
197 Desecravityインタビュー
202 CRY / Glorified Enthronement / Impending Annihilation / Subconscious Terror / Somnium De Lycoris
203 Vortex / 死んだ細胞の塊 / Chiliasm / Neurogenic
204 テクデスYouTuber205 索引
207 あとがき
前書きなど
テクニカル・デスメタルの開祖Death
テクニカル・デスメタルとは一体どのような音楽だろうか。テクニカルであることとは、どういうことだろうか……。デスメタルの歴史が長くなり、多様性のある音楽ジャンルへと成長するにつれ、テクニカル・デスメタルという音楽もそれが元来指し示していたサウンドから大きく変化してきている。
テクニカル・デスメタルの歴史の始まりは、アメリカ・フロリダ州オーランド出身のデスメタル・バンド、Deathが1991年にリリースした4枚目のフルレングス『Human』だった。1991年までのDeathと言えば、スラッシュメタル、デスメタル、そしてハードコアやパンクロックが混ざり合いながら、新しいエクストリーム・メタルが更新され続けるシーンの中でも頭一つ飛び抜けた存在感を見せてきた。
DeathのギタリストでありリーダーであるChuck Schuldinerは、それまでのスラッシュ/デスメタルを基調としたDeathのサウンドに、プログレッシブ・メタル・バンドDream TheaterやWatchtower、カナダのプログレッシヴ・ロック・バンドRushといったバンドなどからの影響に加え、Deathと同じくフロリダで始まり、同世代のプログレッシヴ・メタル/ロック・バンドCynicの存在に感化され、先進的な楽曲制作を行うようになったことがきっかけと言われている。
Deathは『Human』の制作前にメンバーラインナップを一新。Chuckを軸にCynicからギタリストのPaul MasvidalとドラマーSean Reinert、1986年にDeathに在籍していたものの一時バンドを離れていたベーシストSteve DiGiorgioと言う名の知れた技巧派を集め、プロデューサーにScott Burnsを迎えレコーディングを行った。このアルバムはエクストリーム・メタル・シーンで大きな話題となり、後続のデスメタル・バンドへの影響力もすさまじいものがあった。Deathは続く『Individual Thought Patterns』『Symbolic』で初期のスラッシュ/デスメタル・サウンドからテクニカル・プログレッシヴ・デスメタル路線へと完全に傾倒していった。そのサウンドはChuckが影響を受けてきた正統派メタルのハーモニーも随所に差し込まれており、他のデスメタル・バンドと一味違った魅力を放っていた。その後に続くパイオニア達
『Human』がリリースされた1991年にリリースされたデスメタル・アルバムと言えば、Cannibal Corpseの『Butchered at Birth』やMassacreの『From Beyond』、Entombedの『Clandestine』、Malevolent Creationの『The Ten Commandments』などが挙げられる。その中には、Atheistの『Unquestionable Presence』やPestilenceの『Testimony of the Ancients』、Suffocationの『Effigy of the Forgotten』、Gorgutsの『Considered Dead』といったテクニカルでプログレッシヴなデスメタルも挙げられ、1991年前後にテクニカル・デスメタルの基礎が出来たと言えるだろう。一年先にNocturnusがアルバム『The Key』をリリースしており、今ではテクニカル・デスメタルの歴史の始まりを振り返る上で重要な作品であるが、このジャンルの爆発的なエネルギー、時代の始まりを象徴するアルバムとしてはDeathの『Human』を挙げたいと思う。
フロリダから次いでCynicがアルバム『Focus』を完成させ、1993年にRoadrunner Recordsからリリースした。ジャズやフュージョンを交えたプログレッシヴでテクニカルなスタイルはデスメタル・シーンだけでなく、プログレッシヴ・メタル・シーンから高い評価を得た。
このように、デスメタル由来のテクニカルさがプログレッシヴ・メタルやロックと接続されるようになったことをきっかけに、それまでのデスメタルの系譜とは切り離されたところで、「テクニカル」をキーワードにしたデスメタル・バンドシーンが次第に世界各地で誕生していく。プログレッシヴ・デスメタルは別の機会に
デスメタルはテクニカル・デスメタルにだけ枝分かれしていった訳ではない。同じく高い演奏技術や複雑な楽曲構成を用いたプログレッシヴ・デスメタルやスピードやヘヴィさに傾倒したブルータル・デスメタル、前衛的な表現を全面に押し出したアヴァンギャルド・デスメタルなど、デスメタルの多様化も1990年代以降急激に進んでいった。今、テクニカル・デスメタルが何かを定義することが困難である理由は、このようにデスメタルが細分化され、テクニカルであることが元々備わったデスメタルのサブジャンルが登場したことが原因ではないだろうか。
プログレッシヴ・デスメタルやブルータル・デスメタルといったジャンルが成熟していくと、その中でもテクニカルであることにフォーカスしたサウンドを追求するバンドも出現してくるのは当然だ。本書ではプログレッシヴ・デスメタル、ブルータル・デスメタルといったテクニカルなスタイルを兼ね備えたデスメタルのサブジャンルの中でも、テクニカル成分の強いアーティストもいくつかピックアップしている。彼らはテクニカル・プログレッシヴ・デスメタル、テクニカル・ブルータル・デスメタルというジャンルに分けられることが多く、視点を変えることで、また違った聴き方も出来るようなアーティストである。
明確にテクニカルか否かを線引きすることは、デスメタルが進化し続けている以上、不可能であるが、プログレッシヴ・デスメタルやブルータル・デスメタルとして語られるべきルーツを持つバンドについては本書には掲載せず、プログレッシヴ・デスメタルについては『プログレッシヴ・デスメタルガイドブック』、アヴァンギャルド/エクスペリメンタル・デスメタルとして語られるべきバンドは『アヴァンギャルド/エクスペリメンタル・デスメタルガイドブック』としていつかまとめてみようと思う。中興の祖Necrophagist
テクニカル・デスメタルの歴史のはじまりをDeathの『Human』とした時、次の歴史的ハイライトと言えるのは、ドイツ出身のバンド、Necrophagistの登場だろう。現在のテクニカル・デスメタルと呼ばれるサウンドの礎となるスタイルを1999年のアルバム『Onset of Putrefaction』、そして2004年の『Epitaph』で作り、彼らに続いた同郷のObscuraを始め、ブルータル・デスメタル・シーンでもDeeds of Fleshが、同時期にメロディアスでテクニカルなスタイルへとアップデートしていき、Unique Leader Recordsからもそうしたスタイルのバンドが登場し始めた。NecrophagistやUnique Leader Recordsの所属アーティストのスタイルの変化は、現在のテクニカル・デスメタルと呼ばれる多くのバンド達の原型となっており、更なる発展への出発点として位置付けることが出来る。ブルータル・デスメタルとのシンクロ
プログレッシヴと結びつき発展したここまでの流れとは別に、デスメタルがエクストリームに押し進められていく中で、ブルータル・デスメタルという残忍でおどろおどろしいデスメタル・シーンのバンド達もスピード、そしてテクニックを競うように続々と誕生した。その中でもニューヨークから登場したSuffocationはグラインドコアやスラッシュメタルのスピードとフックの利いたグルーヴ・リフ、そしてガテラルというブルータル・デスメタル特有の歌唱法を生み出したFrankのカリスマ性を持ち合わせ、1991年のデビュー・アルバム『Effigy of the Forgotten』でシーンに衝撃を与えた。以降、ブルータル・デスメタルはそのおどろおどろしさを発展させながら、グルーヴィなDying Fetusやスラミングと呼ばれる遅く重いリフを特徴とするスタイルのバンドが中心となっていった。テクニカル・デスメタル最大勢力カナダ
現在テクニカル・デスメタルの中心地と呼ばれるのは、カナダである。
テクニカル・デスメタルと呼ばれるサウンドの最もスタンダードと言えるバンドがひしめくカナダは、プログレッシヴなテクニカル・スタイルとブルータルなテクニカル・スタイルを兼ね備えている。スラッシュメタル・ムーヴメントの最中でありながら、当時から特別な存在感を放っていたケベックのVoivodをルーツに様々なバンドが誕生した80年代から90年代のカナダでは、Cryptopsyの前身バンドであるNecrosisが1988年に結成、Gorgutsが1989年に活動をスタートさせている。
1994年にはCryptopsyがデビュー・アルバム『Blasphemy Made Flesh』をリリースし、テクニカル・デスメタルの可能性を拡大。特に1992年からバンドに参加したドラマーFlo Mounierのプレイは圧巻であり、テクニカル・デスメタルの中でもトップの腕前と知名度を誇っている。Gorgutsは3枚目のアルバム『Obscura』でテクニカル・デスメタルにアヴァンギャルドなエッセンスを注入し、テクニカル、プログレッシヴともまた違った魅力で存在感を発揮。現在のWillowtip Recordsを始めとするプログレッシヴ・デスメタル、アヴァンギャルド・デスメタル、ポスト・メタル、ディソナント・デスメタルにも大きな影響を与えた。近隣ジャンル、デスコア等にも波及
90年代のはじめに産声をあげ、プログレッシヴ・メタルやロック、ブルータル・デスメタル、アヴァンギャルドなどとクロスオーバーしてきたテクニカル・デスメタルがNecrophagistの登場によって、「テクニカル・デスメタル」という音楽ジャンルとして認知され更なる発展の出発地を作った後も、様々なジャンルとクロスオーバーしながら世界各国で枝分かれしながら興味深いサウンド・スタイルを鳴らすバンドが登場していく。OriginやBrain Drillといった超絶技巧を追求していくものや、シンフォニック・メタルとクロスオーバーしたイタリアのFleshgod Apocalypse、デスコアとクロスオーバーし、テクニカル・デスコアと呼ばれたBeneath the Massacre、プログレッシヴさを極めたFallujahやThe Facelessなどが力をつけている。彼らはもはやテクニカル・デスメタルという音楽ジャンルの枠に当てはめることは出来ないが、テクニカル・デスメタルの歴史を語る上で欠かせない重要バンドである。
今も発展を続けるテクニカル・デスメタル。一言では言い表せない多様性を持ちながらも「テクニカル」であることにフォーカスしているデスメタルを本書ではテクニカル・デスメタルと定義し、アルバムレビューやバイオグラフィー、インタビューやコラムを通じて紹介している。
一般的にテクニカル・デスメタルに分類されがちな以下のバンドは本書『テクニカル・デスメタル・ガイドブック』ではなく『プログレッシヴ・デスメタル・ガイドブック』で扱う予定である。Cynic
Opeth
Gojira
Pestilence
Edge of Sanity
Between the Buried and Me
Rivers of Nihil
Sadist
Black Crown Initiate
Dark Millennium
Meshuggah
Amorphis
Alchemist
Creepmime
Disillusion
Phlebotomized
Becoming the Archetype
Devin Townsend Project
Persefone
Wilderun
Nocturnus AD
!T.O.O.H.!
Negativa
Gigan
Ulcerate
Extol
In-Quest
Hannes Grossmann
…… and more
著者プロフィール
脇田 涼平(ワキタ リョウヘイ)
1991年岐阜県中津川市生まれ。大学入学を機に上京、在学中にHi-STANDARDやNAMBA69のマーチャンダイズ製作やツアー運営に関わる仕事をしながら、海外アーティストの招聘活動を行うプロジェクト・チームRNR TOURSを設立。2016年に書籍『ブルータルデスメタルガイドブック』を出版すると、音楽情報サイトRIFF CULTを設立しライターとしての活動を開始。2017年に『デスコアガイドブック』、2021年に『Djentガイドブック』を出版。BURRN!別冊「BASTARDS!」や「METAL HAMMER JAPAN」といった音楽雑誌や、『現代メタルガイドブック』『デスメタルインドネシア』への寄稿も行っている。現在は音楽情報サイトPUNKLOIDの制作も担当。