脇田涼平さんによる『テクニカル・デスメタル・ガイドブック』が完成したので、ブログで紹介します。
帯に載っている副題は「演奏の肉体的限界に挑む超人達」です。
まえがきです。同様の文章がこちらでも読めます。
目次。こちらで読めます。
当初、プログレッシヴ・デスメタル、アヴァンギャルド・デスメタルも含めて執筆・制作していたのですが、バンドや音源の数があまりにも膨大に膨れ上がってしまった為、分冊化することにしました。
テクニカル・デスメタルと思われていても本書で載っていないバンドは、『プログレッシヴ・デスメタル・ガイドブック』で登場すると思って頂ければ幸いです。
またテクニカル・デスメタルの一部は「テクニカル・ブルータル・デスメタル」と呼ばれるぐらいで、ブルータル・デスメタルと重なっています。
特に重要なバンドに関しては『ブルータルデスメタルガイドブック』で既に紹介していても、切り口をテクニカル・デスメタルに変えて紹介しています。
同様に一部のテクニカル・デスメタルはテクニカル・デスコアと重なっており、『デスコアガイドブック』で紹介していたとしても、重要なバンドに関しては再度テクニカル・デスメタルの側面に沿って紹介しています。
非常に線引が難しく、選別は困難を極めましたが、どうかご理解頂ければと思います。
まず最初に紹介するのはDeath。もはやジャンル名となってしまったバンドですが、活動している時はことさら「テクニカル・デスメタル」と呼ばれていた訳ではなく、デスメタルそのものと認識されていました。
後世になってから振り返って、テクニカル・デスメタルの元となるサウンドが萌芽されていたことが再評価されています。
ジャズやフュージョンの手法をスラッシュメタルに取り入れ、テクデスの元祖の一つと見られているAtheist。
キーボードを取り入れたり、宇宙をコンセプトにしたりと、独特なスタイルで知られるNocturnus。
初期はブルータルデスメタルと目され、同ジャンルの総本山的レーベルUnique Leaderを主催していたDeeds of Flesh。中期にかけてテクニカル・デスメタルに徐々にシフト。同レーベルも今はテクニカル・デスメタルの専門レーベルとみなされています。
ヨーロッパとは異なる、乾いたメロディを主体としたテクニカル・ブルータル・デスメタルと言えるDecrepit Birth。メンバーの一人がホームレス。
日本ではリスペクトをもって「ピロデス」とも呼ばれたBrain Drill。タッピングやスウィープなどテクデスのど真ん中のサウンドを体現しています。
各章の前半は地域の大御所バンドを紹介し、後半はそれ以外の音源作品をレビューしています。
ネオクラシカルでスペーシーなサウンドが独特のEquipoiseのインタビュー。
「テクニカル・ドゥームメタル 遅くてテクニカルとはどういうことか」というテーマのコラム。
10弦ベースを駆使し、198万回も再生された、テクニカル・デスメタルの中でも特に人々の印象に残っているViraemiaのミニコラム。
また右のページは「テクニカル・デスメタルとプログレッシヴ・デスメタルの違い」のコラム。
こういったテクニカル・デスメタルにまつわるコラムが随所に掲載されています。
活動していた時よりも今の方が神格化されているとも言える、ディソナント系デスメタルの元祖Gorguts。
テクニカル・ブルータル・デスメタルとして王座に君臨しているCryptopsy。
「テクニカル・デスコアを代表するバンド達」コラム。テクニカル・デスメタルと隣接しているどころか、融合しつつあるテクニカル・デスコアのバンドたちを紹介。
「フレットレス・ベースとテクニカル・デスメタル」のコラム。
テクニカル・デスメタルを最も代表するバンドと言えばNecrophagist。一世を風靡した後、消息不明に。
NecrophagistのリーダーMuhammedはテクニカル・デスメタル界の最大の功労者の一人ですが、突然シーンから消えてしまいました。
右はドイツのネオクラシカルが炸裂するモダン・テクデスObsucra。このバンドにはインタビューもしています。
フランスのGorod。同国からはオリジナリティ溢れるバンドたちが続出しており、このバンドにもインタビューしています。
Annihilatorを皮切りにArsisやRevocationなどを紹介した「異母兄弟テクニカル・スラッシュメタル」コラム。
ショットガンボーカルと呼ばれる早口ラップをデス声で歌うようなテクニックの元祖Spawn of Possession。
タキシードに白塗りという妙な出で立ちで知られるFleshgod Apocalypse。日本でも非常に人気があります。
ブラックメタル以上の爆速ブラストビートをかますHideous Divinity。インタビュー掲載。
超重量級のブラストビートが炸裂するHour of Penance。このバンドにもインタビューしています。
Fleshgod Apocalypse、Hideous Divinity、そしてこのHour of Penanceを始め、イタリアは世界トップクラスのテクニカル・デスメタルを輩出しています。
肉体の限界に挑戦したテクニカル・デスメタル。あまりこの手の音楽に興味がなくても、その演奏動画を見ただけで衝撃を受けてしまうことは間違いないでしょう。
そんな超絶演奏動画を紹介したコラム。是非YouTubeで検索して見てみて下さい。
世界的レベルで有名なバンドはあまりいませんが、実はロシア、ベラルーシ、ウクライナはテクニカル・デスメタルの宝庫。一見、ペイガンフォークメタルばかりと思われていそうですが、かなり良質なバンドが多く潜めいています。
タスマニアという辺境から世界的に大ブレークしたPyscroptic。インタビューあり。
本の最終パートは日本。そして日本を代表するテクニカル・デスメタルDesecravityのページ。同バンド率いる工藤さんにインタビューしています。
造語でワンフレーズにしたバンド名の秘訣や、海外レーベルとのやり取りなど、世界で活躍する為の実践的なノウハウも載っており、後続のバンドマンたちにも参考になる情報が満載です。
最後は「テクデスYouTuber」チャンネルを紹介。そして索引という締めくくりです。
『テクニカル・デスメタル・ガイドブック』の著者の脇田涼平さんは『Djentガイドブック』や『デスコアガイドブック』『ブルータルデスメタルガイドブック』を出版されています。
『ブルータルデスメタルガイドブック』は現在完全に在庫切れで、私の手元にもありません。プレミア価格もついているみたいです。
なので入手困難になる前に『テクニカル・デスメタル・ガイドブック』も手に入れておくことをお勧めします。
細分化が著しいデスメタルの中でも演奏力という点で、日々バウンダリーを拡張し続けるテクニカル・デスメタルを包括的に紹介した『テクニカル・デスメタル・ガイドブック』。
発売日直後にはネット書店での在庫切れが多発したみたいですが、今では補充されています。
大型書店やレコードショップでも置いてあるので、是非、お買い求め下さい。