中国抗日ドラマ読本

中国ドラマ読本1
意図せざる反日・愛国コメディ

岩田宇伯(著/文)
ISBN 978-4-908468-23-0
C0074 A5判 240頁
価格 2,530円 税込 (本体2,300円+税)
書店発売日 2018年4月10日

 

 

紹介

時代背景完全無視!
共産党も大激怒!
反日プロパガンダどころかもはやギャグ!
21作品・678話・総上映時間数30180分

■ツッコミどころをスクショで解説!
■膨大な登場人物を人脈相関図化!
■複雑過ぎる粗筋をチャート化!
■登場人物の名前の発音を総ルビ化!

□抗日奇侠 日本兵を素手で引き裂き抗議殺到のトンデモ抗日ドラマ金字塔!
□孤岛飞鹰 『北斗の拳』『MadMax』風の機関銃搭載バギー魔都上海を行き交う!
□代号九耳犬 赤外線・生体認証・頭山満・北一輝も登場トレンディドラマ!
□武林猛虎 明朝の腐敗した朝廷や倭寇を相手に南少林寺の僧が戦う抗倭ドラマ!
□大漠枪神 満蒙731部隊が敵なのにまるで抗日ラーメン・ウエスタン西部劇!
□枪花 細菌兵器、核弾頭奉納神社などトンデモ要素満載の抗日アメドラ風神劇!

■八路軍・新四軍・東北抗聯・遊撃隊・進歩的日本人・大日本帝国皇軍
・皇協軍・保安隊・76 号・国民党軍・軍統・英仏租界警察
・ソ連・フライングタイガース・匪賊・やくざ・商工会など
複雑に入り乱れる勢力徹底解説!

■「日本で抗日ドラマを視聴する方法」「抗日ドラマで覚える中国語講座」等コラム
■日本人俳優、沙人・三浦研一が一体何を考えているのか分かるインタビュー!!

目次

2 まえがき
3 目次
4 抗日ドラマによく出てくる組織①
6 抗日奇侠 日本兵を素手で引き裂く「トンデモ抗日ドラマ」の金字塔として慄然と輝く超大型娯楽作品
16 抗日ドラマを見よう
18 孤島飛鷹 『北斗の拳』『MadMax』風の機関銃搭載バギーが魔窟都市上海を行き交う痛快アクション
28 『孤島飛鷹』に出演、俳優沙人氏にインタビュー
30 覚醒者(猛獣列車) 美人少佐やちょんまげ将校も出てきて西村京太郎も困惑、「あじあ号」大列車サスペンス
40 利箭縦横 ワイヤーアクション満載の忍者部隊に期待していたら後半から女性に人気のドロドロ宮廷ドラマ
50 終極対決 日中雑技団対決、日本軍の毒ガス戦に挑む大道芸人というメチャクチャな脚本の抗日ドラマ
60 青春烈火(雅典娜女神) プロデューサー私物化、時代考証無視で盛大に叩かれ、撮り直し余儀なくされた究極のトンデモ
71 かつて延安に存在した抗日大学
72 決戦燕子門 民国初期を舞台にした、勝負、師弟愛、友情とまるで熱血少年漫画風の武侠義賊アクション
82 抗日ドラマによく出てくる組織②
84 代号九耳犬 香港台湾スター、赤外線レーザー、生体認証、頭山満、北一輝も登場するトレンディ抗日ドラマ
94 抗日小英雄楊来西 コピペキャラ、残虐に殺される日本兵、共産党を喜びすぎる子供が嫌味に見えてくる手抜きアニメ
101 抗日ドラマで覚える中国語講座
104 巍巍興安嶺 抗戦期、文革期、現代の3時代を内モンゴルの地方自治体が低予算で制作した林業抗日ドラマ
114 不可能完成的任務 抗日ドラマ常連オヤジが嫁をヒロインにし、豪華スタッフ動員した、詰めの甘い初監督作品
124 武林猛虎 明朝後期の腐敗した朝廷や倭寇を相手に南少林寺の僧が戦う、抗日ならぬ抗倭ドラマ
134 阿娜尓罕 政府関係機関や刑務所まで協力し大スターのデビュー作でもある新疆ウイグル国共内戦ドラマ
144 大漠槍神 満蒙731部隊が敵なのにまるでアリゾナの西部劇にしか見えない抗日ラーメン・ウエスタン
154 撮影をささえる群衆演員
156 偏偏喜歓你 実質、腐女子向け乙女ゲーだが放送規制回避の為だけに無理やり日本軍を登場させている
166 鉄血刀鋒 漫才か、オモシロ日本軍将校コンビがギャグ連発、派手なアクションもある抗日コメディドラマ
176 壮士出川 実在した人物も多数登場し四川軍を描いたあまりツッコミどころのない真面目な戦争ドラマ
186 新猛龍過江 魔窟上海で香港スター共演、敵は大物ヤクザと日本軍スパイのカンフーアクションドラマ
196 番外編 地雷戦 紅色経典!建国神話となる古典抗日映画
201 有名俳優ですら配音となることも
202 槍花 核弾頭を神社に奉納、そして謎ダンス、トンデモ満載の中国初一話完結アメドラ方式抗日神劇
213 ネタバレ満載オープニングムービー
214 異鎮 録音部門優秀賞獲得するもゲロゲロスプラッター等残虐過ぎて放送停止処分受けた抗日ドラマ
224 中国で20年にわたる俳優活動、三浦研一氏にインタビュー
239 あとがき

前書きなど

中国の抗日ドラマ関連のニュースが流れた際、2chやツイッターなどのSNSでは「ちょっと見てみたい」「逆におもしろそう」といったコメントが見受けられるが、本書ではそういった方々の手助けとなるよう、一視聴者として筆者が興味を持って最終回まで完走できた作品を、ユルくカルく紹介している。日本で全く放映されることのない抗日ドラマの世界を少しでもしきい値を下げ、興味を持った方々が気楽に視聴してもらえれば幸いである。そういう意味でいろいろな種類の抗日ドラマの簡単なストーリー紹介と、オモシロシーン解説を中心に執筆した。話の粗筋が荒唐無稽で登場人物が多く、おまけに超長期間に渡って放送される為、中国語を理解していたとしても、そのストーリーに付いていくのは至難の業。その為、本書ではこうした中国ドラマの話の展開を人間関係図やチャートを使って説明し、粗筋のポイントを要約した。また、コラムでは抗日ドラマの視聴方法など、ちょっとした小ネタを紹介しているので参考にして頂きたい。なお俳優や登場人物はより実際の作品の雰囲気に近づける為、そして映像上で表示される字幕と統一させる為に、簡体字で記載している。
なにかと日中両国で話題(多くは悪い意味で)となる抗日ドラマであるが、所詮テレビドラマ。『西部警察』で大門刑事が空中のヘリコプターからショットガンで犯人を狙撃するシーンに怒っても仕方ないように、そこはフィクションなのでおおらかな気持ちで鑑賞すればよろしいかと思う。そもそもどこの国でもテレビとはくだらない低俗なものなのだ。近年コンプライアンスだ何だと制作側が及び腰になるにつけ、本来テレビが持っていたくだらなさの種類が「くだらなくて面白い」から「くだらない上につまらない」に変化した結果、「若者のテレビ離れ」となっているような気がする。筆者はテレビ全盛時代の70から80年代に子供時代を過ごしたため、前述した『西部警察』のような予算をかけたくだらないドラマの制作は、わが国ではもう無理ではないだろうかと少し寂しい気持ちになる。
一方で急激に経済発展し、多数の人口を抱える中国では政府の表現規制はあるが、そこは金儲けにあざとい中国人、「上に政策あれば下に対策あり」の諺どうり、手を変え品を変えのいたちごっこをしながらスポンサーを獲得し、視聴率を稼ぐ様子はかつての日本のテレビ界のような活況である。中国では爆発的なスマホの普及が知られるように、テレビも一気に衛星放送の時代に突入、全国向け衛星チャンネルはCCTVを含めると50を超す数の放送局が生まれ、しのぎを削り合っている。そのほかに各省の地方放送局とインターネットのストリーミング放送もあり、この点では日本をはるかに凌駕しており、多数の番組を楽しむことができる。そして日本ではほぼ絶滅したアクションドラマのポジションとして抗日ドラマが放映されている。
日本でも人気のある宮廷ドラマと違い、ネットメディアの記事も抗日ドラマに関しては政治的アプローチのものが多く、また映画史からアプローチした劉文兵氏の『中国抗日映画・ドラマの世界』以外は抗日ドラマを題材とした一般書籍を筆者は知らず、おそらくガイドブック風の取り組みは本邦初と見られる。以前「同志たちよ!8年間に及ぶ抗日戦争がいよいよ始まった!」という抗日ドラマの間違いセリフがニュースにもなったが、原典がこの程度のガバガバさなので、そのあたりはご容赦願いたい。細かくツッコむと異論が出るのは承知であるが、定義としては日本が敵役になっているものを抗日ドラマとした。また、まんべんなく抗日ドラマを紹介するため、ページ数の都合上掲載できなかった『亮剣』や『箭弦在上』のような有名作品もあるが、今後またこうした出版の機会があれば紹介したいと思う。
それでは素晴らしい抗日ドラマの世界へようこそ、存分に楽しんでいってほしいと願う。また更なる興味を持った方は、他のジャンルの中国ドラマやドキュメンタリー番組にも挑戦していただけたらと思う。

著者プロフィール

岩田宇伯 (イワタ タカノリ)
愛知県在住のフツーの勤め人、職種は情報システムを中心とした何でも屋。偶然出張で行った上海で抗日ドラマに出会う。またこのとき上海の路上で何度も詐欺に遭いかけ、これはマズいと思い中国語学習を決意。職場の駐在組から勉強にTVを勧められ中国ドラマを見始めるも、メチャクチャな抗日ドラマの魅力にハマり、以来抗日ドラマを中国語学習の教材にする。駐在組にはかなわないが、出張組よりは中国語ができるようになったのが職場でのささやかな自慢。
我流の中国語学習ではあるが、名古屋市内の日本語が通じない大陸系中華の店に出没し中国人と顔なじみになったり、毎年中国大陸へバックパッカーもどきの貧乏旅行に行くほどになるなど、抗日ドラマをきっかけに中国そのものの魅力を堪能中。

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