デスメタルコリア

世界過激音楽8
韓国メタル大全

水科哲哉(著/文)
ISBN 978-4-908468-27-8
C0073 A5判 384頁
価格 2,750円 税込 (本体2,500円+税)
書店発売日 2018年8月10日

 

 

紹介

もはやメタル不毛国とは言わせない!!
K-POP・ヒップホップ
だけじゃなかった
コリアンメタル&
大韓ハードロックの魅力に迫る!

80年代からSINAWEや白頭山など良質の正統派HMを生み出し、90年代にはソ・テジやN.EX.Tなど新世代が一世を風靡。
隣国故に日韓メタル交流も盛んでヴィジュアル系・レディースバンドも輩出する一方で反日ブラックメタルも登場。
メタルコアは中進国レベルに発展。

384頁、シリーズ最高60万字超え

●韓国の音楽史上初めてヘヴィメタルを掲げた真のパイオニア SINAWE
●朝鮮民族発祥の聖山の名を冠した韓国HM/HRの第一世代 白頭山(BAEKDOOSAN)
●ポップス界でも成功した「魔王」率いるプログレ・モンスターN.EX.T
●変化を恐れずに四半世紀あまりの歴史を築いた実力派スラッシャー CRASH
●海外公演数150本以上伝統楽器男女混成エクスペリメンタル・メタルJAMBINAI
●K-POPの礎を作ったカリスマは元々HM/HR界の住人 ソ・テジ
●横浜アリーナのステージに上がったメタルコア・モンスター DIABLO

謎の楽器メーカーSamick本邦初独占インタビュー

欧米・日本メタル韓国公演年表、韓国メタル海外公演年表
韓国メタル音源試聴法
韓国語メタル・フレーズ集
韓国メタラーの本音が分かる膨大なインタビュー

目次

002 まえがき
004 目次
009 用語解説
011 韓国の歴代大統領

015 Chapter 1
HR/HM

016 軍事政権期の韓国への「逆輸入」を敢行した在米コリアンバンド 巫堂(MUDANG)
017 国家的行事に後年携わった才人が率いた韓国シーンの草分け 小さい巨人(LITTLE BIGMAN)
018 韓国の音楽史上初めてヘヴィメタルを掲げた真のパイオニア SINAWE
020 SINAWEシン・デチョル メールインタビュー
028 LOUDNESSへの挑戦状が記されたアルバムの裏ジャケで有名 復活(BORN AGAIN)
030 朝鮮民族発祥の聖山の名を冠した韓国HM/HRの第一世代 白頭山(BAEKDOOSAN)
032 日本人ドラマーを擁し、日本勢との交流を身をもって示す重鎮 BLACK SYNDROME
034 BLACK SYNDROME/WICKED SOLUTIONSパク・ヨンチョル メールインタビュー
038 社会派路線を打ち出して息の長い活動を続けるベテラン BLACKHOLE
040 バンド復活劇に密着したドキュメンタリー映画が制作された古豪 ZERO G
041 統一教会の創設者の息子が奏でたクリスチャン(!?)・メタル 文孝進(Moon Hyo Jin)
042 あのJoe Lynn Turnerのツアー帯同要請を断った強者 イ・ヒョンソク(Lee Hyun Suk)
043 「王者」Yngwie に忠実なネオ・クラシカル・メタルの砦 ZIHARD
044 バンド存亡の危機を乗り越えて復活の狼煙を上げたパワーメタル SILENT EYE
045 『毎日新聞』の「ひと」欄に登場した韓国産ハードロックの女王 西門卓(Seo Moon Tak)
046 結成初期から日韓をまたにかけて活動する正統派HMバンド DOWN IN A HOLE
047 韓国の2大HMレーベルの一角を束ねる正統派メタルバンド DOWNHELL
048 寡作だが隠れた秀作を放つ正統派メロディック・パワーメタル EFREET
049 元中日ドラゴンズの中継ぎ左腕がハードロッカーに転身! WHAT!
050 米「SXSW」に3度参加した韓国版STEEL PANTHER 被害意識(VICTIM MENTALITY)
051 コリアンV系シンガーの先駆者率いるバッドボーイズ・メタル THE HY$TERIC$
052 MUSEROS / 紫外線(ULTRAVIOLET RAYS) / LITTLE SKY / チェ・イルミン(Choi Il Min)
053 太白山脈(TAEBAEK MOUNTAINS) / キム・ドギュン(Steve Kim Do Kyun) / H2O / CHARISMA
054 外人部隊(FOREIGN LEGION) / T▲S / CRATIA / ASIANA
055 DIONYSUS / STRANGER / IDEA / 風花(WILD FLOWER)
056 ARMAGEDDON / THE CLUB / DOWNTOWN / MAN TO MAN
057 NEWK / NUCLEAR / 新造音系(SINZO EUMKE) /キム・ギョンホ(Kim Kyung Ho)
058 ZETT / MI:R / MOBY DICK / BARKHOUSE
059 WON / KARMA / 楽神(ROCKSINN) / A-FRICA
060 KASI / JEKYLL / JESUSBAND / BAND MIZY
061 SUNDAY / AUDIO BLOSSOM / HWIMORY / D.O.A.
062 朱雀(ZUJARK) / HWAL BAND / MOON4CHUL / ノ・ギョンファン(Alex Noh Kyung Hwan)
063 STORM / GUILLOTINE / FM DRIVER / LEGEND
064 RABIHEM / PARTY MAKER / IRONBARD / THE UNITED93
065 BASKET NOTE / EREHWON / FLYING DOG / LANDMINE
066 HEMOSU / VENEZ / ヤン・テファン&ヤン・テヒ(Yang Tae Hwan and Yang Tae Hee) / MONSTER LEAGUE
067 ARTIFACT / YOHA / BLACK PEPPERS / AFA
068 CRACKSHOT / MAVERICK / THE JAXX / ÉLAN VITAL
069 COAL TRAIN / BLACK SWAN / THE FREEBIRD / LOODY BENSH
070 韓国HM/HR音源試聴方法

085 Chaper2
プログレメタル/シンフォニックメタル/フォークメタル

086 ポップス界でも成功した「魔王」率いるプログレ・モンスター N.EX.T
088 HM/HRの枠を越え、韓国社会の変革を訴えて夭折した「魔王」 シン・ヘチョル(Shin Hae Chul)
089 韓国人ギタリスト初のBOSSとGibsonのエンドーサー! キム・セファン(Kim Se Hwang)
090 N.EX.T/NOVASONIC他 キム・セファン メールインタビュー
100 韓国では希少なクリスチャン・プログレッシヴ・メタルバンド JEREMY
102 韓国の伝統楽器をフィーチュアした男女混成フォークメタル 波霊(GOSTWIND)
103 世界水準のソプラノシンガーを擁したシンフォニック・メタル ISHTAR
104 生命工学研究者の卵から宅録HM/HRミュージシャンに! Jimmy Strain
105 海外公演数150本以上!脅威の男女混成エクスペリメンタル・メタル JAMBINAI
106 JAMBINAI メールインタビュー
112 SAHARA / CRUX / GAIA / PROMINENCE
113 OPHELIA / AU REVOIR MICHELLE / PURGATORIUM / INLAYER
114 日常でもバンド活動でも使える!? 韓国語フレーズ集

125 Chapter3
スラッシュメタル/ドゥームメタル/ストーナーメタル/デスメタル/ブルータル・デスメタル

126 変化を恐れずに四半世紀あまりの歴史を築いた実力派スラッシャー CRASH
128 CRASH メールインタビュー
136 30年に及ぶ風雪に耐え続けた韓国産スラッシャーの矜持 NATY
137 フランスのレーベルでEU盤が発売された地方発スラッシャー MAHATMA
138 日韓混成ラインナップとなった韓国では希少なブルデスバンド SEED
139 日韓共催W杯の前から日本産バンドと交流を重ねるブルデス DOXOLOGY
140 2016年度「韓国大衆音楽賞」最優秀ヘヴィネス・アルバム部門の覇者! METHOD
142 内外で精力的に活動する韓国の新鋭ブルータル・デスメタル FECUNDATION
143 FECUNDATION インタビュー
147 韓国シーンの重鎮が新境地を開くべく始動させた別バンド WICKED SOLUTIONS
148 EDEN / SADHU / ABYSS / MONKEY HEAD
149 TURBO / TOKKAEBI / 闘犬(TUGYON) / 魔鬼(MAGWI)
150 羅睺(NAHU) / 死魂(SAHON) / NO MARK / EL PATRON
151 NECRAMYTH / UNIUS / GOD OF EMPTINESS / BLACK MEDICINE
152 SACRIFICE / 死刑執行団(AXCUTOR) / HAILSTORM / TRASHST
153 CROSSBONES / GLOAMING / SMOKING BARRELS / DOG LAST PAGE
154 BETWEEN THE WALLS / KANARI SODA / キム・ジェハ(Kim Jea Ha) / FORMAL APATHY
155 DOPE Entertainment代表 キム・ユンジョン氏 メールインタビュー
159 DOPE Entertainment公演実績集

161 Chapter 4
グランジ/オルタナ/ミクスチャー

162 K-POPの礎を作ったカリスマは元々HM/HR界の住人 ソ・テジ(Seo Tae Ji)
163 韓国シーンにグランジ/オルタナ路線を持ち込んだ先駆者 NOIZEGARDEN
164 デビュー15周年記念ベスト盤が日本発売された釜山発ミクスチャー 彼我(PIA)
166 スター・プレイヤーが揃った韓国産ミクスチャーHMの草分け NOVASONIC
168 シンガー急死という悲劇を乗り越えて復活を遂げたオルタナHR BROKEN VALENTINE
169 韓国産とは思えないアーシーで泥臭いヴィンテージHR HARRY BIG BUTTON
170 日本留学経験のある敏腕ギタリスト率いるオルタナメタル・バンド PURE
171 サマソニに出演した実力派シンガーを擁するオルタナ5人組 ABTB
172 RAINY SUN / キム・パダ(Kim Bada) / DR. CORE911 / ARES
173 UNCHAINED / THE BREEZE / HERZ / R4-19
174 HONEY PEPPER / MONKEY BEATZ / THE CHOPPERS / HASH
175 THE VANE / GATE FLOWERS / NUCLEAR IDIOTS / ALL AGAINST
176 「PARANOID」誌 編集長 ソン・ミョンハ氏 メールインタビュー

183 Chapter5
ブラックメタル/メロデス

184 インターネット発で火が付いた韓国産ブラックメタルの先駆者 MOONSHINE
185 朝鮮民族特有の「恨」(ハン)を押し出した反日メロデス SAD LEGEND
186 遙か古代の高句麗へ思いを馳せる独りペイガン・ブラックメタル 太高句麗(TAEKAURY)
187 APPARITION / TAEKAURY / MALAKH メールインタビュー
194 短命に終わったが後進に多大な影響を与えた叙情派メロデス HOLYMARSH
195 SAD LEGENDの系譜を継ぐシンフォニック・メロデス DARK AMBITION
196 鍵盤とバイオリンを導入した大仰なシンフォニック・ブラック DARK MIRROR OV TRAGEDY
197 DARK MIRROR OV TRAGEDY メールインタビュー
204 ETHEREAL SIN/RAKSHASA / Evoken de Valhall Production Yama Darkblaze インタビュー
212 韓国、イギリス、カナダ(プラス在日コリアン)の混成デスメタル FATALFEAR
213 Nuclear Blastで世界デビュー寸前だったメロデス・バンド THE CRESCENTS
214 日本で知名度を高めつつある韓国産メロデス第二世代 MIDIAN
215 MIDIAN メールインタビュー
222 韓国人女性を娶ったウクライナ人を擁するポスト・ブラックDREAMY EUROPA
223 DREAMY EUROPA メールインタビュー
228 OATHEAN / KALPA / IMONED / APPARITION
229 首脳(SUNOI) / MALAKH / ADOKHSINY / KVELL
230 NIFLHEIM / 廃墟(RUINS) / INFINITE HATRED / WARPEAL
231 INFERNAL CHAOS / WOLVEN HOWL / SKALD / SVEDHOUS
232 TERRORMIGHT / A DOOM / FUNERAL OF AUGUST / 厄鬼(AEKGWI)
233 ANKLE ATTACK / KRYPHOS / MADMANS ESPRIT / NOCTURNAL DAMNATION
234 METHAD / ISAHI / 進撃(ZINKYEOK) / MERIDIES
235 FAY AWAY SAD DREAM / GORMANTATINUS / HUQUEYMSAW / ORIGIN OF PLAGUE
236 SVART SORG / NECROMANCY SLAVE / PORTRAIT DRAWER / DISRUPTION
237 Samick ギター事業部 理事 キム・ソンジュン氏 メールインタビュー

241 Chapter 6
ハードコア/メタルコア/グラインドコア/デスコア/エレクトロコア

242 横浜アリーナのステージに上がったメタルコア・モンスター DIABLO
244 常に一定水準のアルバム・クオリティを保つ実力派ハードコア VASSLINE
246 保守・反共産主義思想を押し出したニューライト・ハードコア 三清(SAMCHUNG)
247 三清(SAMCHUNG) メールインタビュー
252 ソウルでも釜山でもない地方発ハードコア・バンドの心意気 13STEPS
253 日本のENVY、MONOと比肩する鬱系ポスト・ハードコア HOLLOW JAN
254 日本勢と交流を重ねながら進化を続けるメタルコア・バンド HAMMERING
255 北の将軍様さえ風刺のネタにするアナーキーなグラインドコア BAMSEOM PIRATES
256 「EMERGENZA」世界大会3位に輝いた高偏差値メタルコア NOEAZY
257 2017年度「韓国大衆音楽賞」メタル&ハードコア部門に選出! REMNANTS OF THE FALLEN
258 REMNANTS OF THE FALLEN メールインタビュー
263 韓国シーンの次代を担う男女ツインvoエレクトロコア・バンド MESSGRAM
264 ブラッケンド・ハードコアをいち早く韓国で実践した背徳の5人組 PARIAH
265 邦楽ラウドロックの影響が窺えるイケメン5人組バンド BURSTERS
266 韓豪混成ラインナップで活動したこともある釜山発メタルコア END THESE DAYS
267 日本語でブログを綴る韓国女子を擁するエレクトロコア・バンド SYNSNAKE
268 CROW / SEOUL MOTHERS / THE GEEKS / DESHOCK
269 KNOCKDOWN / 49MORPHINES / DIESEL SNEAKERS / FIRESTORM
270 DESPERADO / NINESIN / UNROOT / THINGS WE SAY
271 TEARDROP / GWAMEGI / SINK TO RISE / VICIOUS GLARE
272 HER EYES BLEED / 奈落(NARCK) / BURN MY BRIDGE / MY LAST ENEMY
273 NO EXCUSE / METAMORPHOSIS / WAY100SEAL.H / COMBATIVE POST
274 MIRROR OF ERISED / DAY OF MOURNING / ALL I HAVE / DESPOT
275 DISFIGURE / HOUND / IGNITER / TO MY LAST BREATH
276 EIGHTEEN APRIL / NOVEMBER THE BRIDGE / DISSEKTIST / ARC
277 IN THE PHOBIA / IN YOUR FACE / SINSTEIN / MANGNANI
278 MANIXIVE / RITUALITY / SATELLIGHTS / CODENAME TITAN
279 GONGURI / THIS IS PARALLEL WORLD / SEVER THE EAR / TRUTH TELLER
280 KKAMGWI / LIBERALIA / TORN SELF / RISE TO BE ALIVE
281 HEAVY GAUGE / NO SHELTER / CUTT DEEP / CHRISTFUCK
282 THE ELITE FIVE / SCARLET FOREST / PAOHOO / PAYDAY
283 韓国の検閲制度の初まりと、その変遷

Chapter 7
その他(ヴィジュアル系、レディース・バンド等)

290 15年ぶりのリユニオンを果たした元祖コリアンV系バンド EVE
291 EVE / THE HY$TERIC$ キム・セホン メールインタビュー
296 キャリア15年に及ぶ正統派の4人組レディース・バンド STORYSELLER
297 メキシコ、ベトナム公演も行ったシンフォニックV系バンド NEMESIS
298 中華圏やドイツでも公演歴のある若きレディース・バンド WALKING AFTER U
299 WALKING AFTER U メールインタビュー
302 実働期間わずか1年の短命に終わった韓国産メタルアイドル PRITZ
303 EVE / MAYDAY / 私の耳に盗聴装置(WIRETAP IN MY EAR) / ISKRA
304 ANGEL HEART / MAD FRET / GUYZ / KITE OPERATIONS
305 KNAVE / MANNEQUEEN / A-FATI / J’ST
306 ROAR / LUGNASAD / LOOKUS / CIZZLE
307 過大鉄板使用禁止(GBSG) / MAGNA FALL / PAKK / VINCIT OMNIA
308 韓国の兵役制度と、その変遷
314 韓国にルーツを持つ各国のメタル系アーティスト

315 Chapter8
コンピレーション盤(オムニバス盤、スプリット盤等)

316 『FRIDAY AFTERNOON』シリーズ ディレクター キム・ジェソン氏 メールインタビュー

324 欧米アーティストの韓国公演歴
338 日本勢の韓国公演歴
356 韓国アーティストの海外公演歴
368 韓国のフェス・イベント情報
375 本書に登場した地域一覧
378 索引
381 参考文献
383 あとがき

前書きなど

韓国のハードロック/ヘヴィメタルと言えば、最初に誰を思い浮かべるだろうか。筆者(1972年生)と同年代または多少上の年代ならば、日本盤が1990~1995年にリリースされたSINAWEやBLACK SYNDROME、あるいはCRASHを連想するかもしれない。彼らよりやや遅れて日本盤が出たSAHARAとJEREMYを思い浮かべる人々もいるだろうし、2001年8月の「SUMMER SONIC」と「BEAST FEAST」で相次いで来日したソ・テジ(彼は元々SINAWEのベーシストだった)とDIABLOを連想する人々もいるだろう。
もちろん彼らのようなキャリア20~30年の大御所以外でも、韓国産メタル/ハードコア系アーティストが日本でCDをリリースしたり、規模の大小を問わず日本のライヴイベントに参加した事例は豊富にある。しかし、こうした事象を断続的な点ではなく、時系列に並べて一本筋の通ったディスクガイド本としてアーカイヴ化すれば、日本に最も近い隣国のハードロック/ヘヴィメタル史を浮き彫りに出来るのではないか。まさにこれが、前代未聞のコリアンメタルに特化した本書を執筆した動機である。
本稿執筆時で、世界各地のヘヴィメタル・バンドを網羅的に集めた「Encyclopaedia Metallum」の国別リストで「Korea, South」を選ぶと、237アーティストの情報を閲覧出来る。ところが本書は、その3割増に及ぶ312組・384枚のディスクレビューを下記のカテゴリー別に掲載しているのだ。

●CHAPTER1 HR/HM(91組・111枚)
冒頭に挙げたSINAWE、BLACK SYNDROME等に代表される正統派アーティストの一群。日本でも相応に知られる復活(BORN AGAIN)や白頭山(BAEKDOOSAN)はもちろん、西門卓ことイ・スジンのようなソロアーティスト、様式美メタル、グラムメタル、パワーメタル、メロスピ等のサブジャンルに属するバンドも本章に登場する。

●CHAPTER2 プログレメタル/シンフォニックメタル/フォークメタル(16組・24枚)
同じく冒頭に挙げたSAHARA、JEREMYに加え、韓国シーンに多大な影響を及ぼしたプログレメタル・バンドN.EX.Tに代表される一群。女性シンガーを据えたフォーキッシュな浪霊(GOSTWIND)とGAIA、2018年2月の平昌(ピョンチャン)冬季五輪の閉会式に登場して世界の注目を浴びたJAMBINAI等も本章に含めた。

●CHAPTER3 スラッシュメタル/ドゥームメタル/ストーナーメタル/デスメタル/ブルータル・デスメタル(36組・40枚)
これまた冒頭に挙げたCRASHを初めとする韓国産スラッシャーおよび、デスメタル、ブルータル・デスメタルをプレイする一群。近年に入って内外で積極的に活動しているFECUNDATIONのみならず、少数派ながら存在するドゥーム/ストーナー/スラッジ路線のアーティストも本章に含めた。

●CHAPTER4 グランジ/オルタナ/ミクスチャー(24組・32枚)
KORNに深く傾倒していた頃のソ・テジや、韓国でいち早くグランジ/オルタナを導入したNOIZEGARDEN、前出のN.EX.Tの楽器隊が始動させたミクスチャーメタル・バンドNOVASONIC等に代表される一群。複数回の来日経験があり、2017年秋にデビュー15周年記念のベスト盤が日本でも流通された彼我(PIA)等も本章に含まれる。

●CHAPTER5 ブラックメタル/メロデス(46組・46枚)
韓国産ブラックメタルの始祖と呼ばれるKARPAやMOONSHINE、同じく韓国産メロデスの第一世代であるHOLYMARSH、SAD LEGEND、DARK AMBITION等に代表される一群。やはり複数回の来日経験のあるDARK MIRROR OV TRADEGY、日本でも知名度を高めつつあるMIDIAN等も本章で登場する。

●CHAPTER6 ハードコア/メタルコア/グラインドコア/デスコア/エレクトロコア(74組・82枚)
正統派HR/HMに次ぐ分量を占めたのは、ハードコアとその派生ジャンルに属する一群である。冒頭に挙げたDIABLOに加え、VASSLINE、三清(SAMCHUNG)、13STEPS、HOLLOW JANといった面々のアルバムは2000年以降に日本でも流通されたので、パンク/ハードコア嗜好のリスナーは聴いたことがあるかも知れない。

●CHAPTER7 その他(ヴィジュアル系、レディース・バンド等)(25組・25枚)
賛否両論あるかも知れないが、日韓両国の近似性が垣間見える好例として、ヴィジュアル系、レディース・バンド等を扱う章も設けた。2017年より再始動した元祖コリアンV系バンドEVE、複数回の来日経験のあるレディース・バンドWALKING AFTER U等だ。日韓混成バンド、多国籍バンド、前衛的なノイズロック志向のバンドも本章で登場する。

●CHAPTER8 コンピレーション盤(オムニバス盤、スプリット盤等)(24枚)
韓国シーンに造詣の深い読者ならお馴染みのオムニバス盤シリーズ『FRIDAY AFTERNOON』3部作を初めとする、各種コンピレーション盤の章も設けた。日本を含む海外勢が参加したものや、日本でもリリースされたものも若干含まれる。

前掲のジャンル別に登場するアーティストの掲載順は、原則的に活動を始めた年(各バンドの概要では「活動年」と記載)に沿っており、「Encyclopaedia Metallum」のみならず、日本の媒体(主に『BURRN!』『YOUNG GUITAR』両誌)、韓国人向けの韓国語によるメタル情報サイト&コミュニティー「Metal Kingdom」と「maniadb.com」での掲載の有無(後者は惜しくも閉鎖されてしまったが)、そしてフィジカル/デジタルを問わず、日本国内で音源を入手あるいは視聴出来るかどうかを掲載時の尺度として用いた。筆者が一体どうやって韓国メタルの音源を入手または視聴したのかは、本書コラム『韓国HM/HR音源試聴方法』で詳述したので、ぜひご高覧願いたい。
単にディスクレビューを時系列に書き連ねて紙面を埋めるのではなく、韓国シーンの当事者の証言も拾い集めた。本書には、前述の各ジャンルを代表するアーティスト14組と、重要人物4人による証言を収録したが、いずれも本邦初公開と思われるエピソードが満載だ。しかも、1万字超えのロングインタビューを6本も含んでいる。日本人アーティスト/プロモーター視点から見た韓国シーンを考察すべく、日本産ブラックメタル・バンドETHEREAL SIN/RAKSHASA/Evoken de Valhall Productionを率いるYama Darkblaze氏にも登場願った。
韓国シーンの歴史的、社会的、政治的背景を理解する一助として、巻頭には用語解説を設け、本文に出てくる各種固有名詞には随所に語句注釈を挟んだ。ハードロック/ヘヴィメタルを切り口にした韓国語フレーズ集と単語リストに加え、韓国のフェス・イベント情報、各種年表も独自調査して書き下ろし、朝鮮半島や韓国社会への知見を深める各種コラムも執筆した。
最後に断っておくが、本書の対象読者は日本のヘヴィメタルファンである。よって、コリアンメタルが萌芽する以前の1950~1960年代の韓国アーティストは取り上げておらず、たとえ知名度が高くても非メタル系の韓国産バンドまで掘り下げていない。反対に、諸般の事情でやむなく掲載を見送らざるを得なかったケースもあるが、本書のようにコリアンメタルに徹底してこだわったディスクガイド本は唯一無二ではないか、と自負している。

著者プロフィール

水科哲哉(ミズシナ テツヤ)
1972年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒。チャイニーズロックの始祖である崔健(ツイ・ジェン)をきっかけに同大在学中よりアジアのロックにハマリ、同大卒業後は韓国語学習と並行して韓国のHM/HRを集中的に聴き漁る。1998年に初訪韓して以来、訪韓回数はおよそ10回。現在は日・英・韓の3ヶ国を解するライター/編集者/翻訳者として、累計60点近くの単行本・雑誌、ムックの制作に携わる。担当書籍は、『イングヴェイ・マルムスティーン自伝~Yng-WAY-俺のやり方』(シンコーミュージック)のようなメタル関連本から、韓国の近現代史を俯瞰する『韓国大統領実録』(キネマ旬報社)、北朝鮮による日本人拉致問題を扱った『「招待所」という名の収容所』(柏書房)に至るまで多岐にわたる。英語の共訳書に『アンプ大名鑑[Marshall編]』(スペースシャワーネットワーク)がある。本書は初の書き下ろし本。合資会社アンフィニジャパン・プロジェクト代表社員

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