関上武司さんによる『中国共産党聖地巡礼』が完成したので、中身を紹介します。

カバーには毛沢東、鄧小平、習近平、胡錦濤、江沢民の肖像写真が。

帯には「天安門事件」の言葉も。

帯を取り外した状態。

袖には弊社刊行の関連書籍が。載せ過ぎに見えますが、著者の関上さんからの強いリクエストでこうなりました。義理堅い。

まえがきと目次。

左側にはアイコンの意味などを説明した詳細な凡例が。そして右のページからは、中国史に詳しくない読者の為に「用語集」を載せています。

用語集だけでなく、各聖地ではいろんな人物の銅像などが出てくるので「人名解説」も設けました。

更には簡易的な年表も。ここまで懇切丁寧に巻頭付録を読んでいるので、途中でよく分からなくなったら、戻って確認して下さい。またまず一通り読んでから本編に入ることをお勧めします。

さてやっと第1章の「華北地方」。

中国インターネットでは「天安門事件」は禁句のようですが、天安門広場そのものは聖地です。数々の歴史的舞台になった中国を象徴する巨大な広場。

数々のモニュメントや関連施設が。

華国鋒によって建設された毛沢東の遺体が眠る霊廟、毛主席紀念堂。

中国共産党の長期的国家戦略で近代化を図った人民解放軍の中国人民革命軍事博物館。

館内には中国製のH-6(轟炸六型)爆撃機が展示され、天井からは複数の軍用機が吊り下げられています。

鹵獲された兵器、国共内戦でも活躍した兵器など。

各章末にはコラムも設けています。こちらは「中国共産党グッズ」のコラム。

第2章は華北地方。

著者の関上武司さんは『中国遊園地大図鑑』も上梓されており、共産党聖地でも数々のパクリキャラを発見。

爆殺された張作霖と中国共産党から絶賛される張学良の張氏帥府博物館。

西安事件で有名な張学良は、中国共産党から見ても祖国の英雄。数々の遺品が展示されています。

第2章のコラムは「中国共産党的娯楽作品。

第3章は華中地方。

中国共産党の結成と、波乱万丈な運命の創設メンバー、中国共産党第一次全国代表大会会址紀念館。

上海随一のオシャレスポット新天地にあるので、行った事がある人も多いのではないでしょうか?

参加者の大半がその後、悲惨な人生を送っています。また本当はこの時は存在感が薄かったとされる毛沢東のグッズや書籍が販売されています。

地元の共産主義戦士を称賛、大躍進と文化大革命は批判、杭州市革命烈士紀念館。

中国ではいくつかタブーがあるわけですが、この博物館ではかなり大胆に文化大革命を批判。

第4章は華南地方。

中共軍事闘争の始まりと中国人民解放軍の創立記念日、南昌八一起義紀念館。

中華人民共和国は無神論が国是ですが、建国の礎となる場所をいかに「宗教的」に奉っているかが分かります。

政治家も観光客も押し寄せる、再現された毛沢東の生家、韶山風景名勝区。

紅色旅遊でも特に人気が高い毛沢東が生まれた家。

毛沢東像マニアというコラムも。

超巨大な毛沢東の頭部。これはありがたい事なんでしょうか?

第5章は西北地方。

若き日の習近平が下放された僻地に大勢の観光客が訪問、梁家河村。

習近平が生活していた旧居。まだ行きているし、そんなに見に行きたい場所なのかが甚だ疑問。

大生産運動と毛沢東思想確立で、紅色旅遊のマストスポット、楊家嶺革命旧址。

カバーにも載っているスポットで、新四軍のコスプレ試着ができるみたいです。

江青と毛沢東が写った写真も掲示。遠回しの批判でしょうか?

少数政党の存在で共産党統治の正当性アピールする胡散臭さ、中国民主党派歴史陳列館。

中国には共産党が「一党独裁している」と批判を免れる為に、申し訳程度・建て前の「民主党派」という衛星党があります。

まるでアリバイ工作のようにしか思えません。

取って付けたように大げさに称えまくっており、本書の中でも最も胡散臭さが発揮されています。

というわけで、『中国共産党聖地巡礼』の中から適当にピックアップして、ダイジェスト的に紹介してきました。

ここで紹介したのはほんの一部で、本全体では29ものスポットもあります。

中国共産党の聖地をここまで踏破した日本人はいないでしょうし、もしかしたら中国人でもいないかもしれません。

中国共産党が国民に対して、どういうふうに正統性をアピールしているのか、また愛国心を鼓舞しているのかを、聖地の展示物や銅像、解説などを見ることで分かります。

したたかに見えるものもあれば、全てが嘘八百でもなく、確かに説得力があるものもあり、一概に笑い飛ばせる訳ではありません。

相手のことをよく知ることに損はないでしょう。

一方で途中でも述べましたが、関上さんは『中国遊園地大図鑑』シリーズの著者。

真面目なテーマの中にもマヌケな現象を見逃さないその優れた嗅覚、アンテナ力で他に秀でいる人はいません。

抗日博物館や共産党聖地も中国人当局は至って真面目に作っているつもりですが、関上フィルターを通すとやはり脱力感が溢れるマヌケスポットに見えてしまうわけです。

既に大型書店では発売が始まっており、正式発売日からおよそ2週間遅れでAmazonでも在庫がありになりました。

帯には「一周回って日本人には面白い」と書きましたが、もしかしたらに2周かもしれません。

そして中国人にとっても面白いはずです。もし日本に住んでいて、日本語が読める中国人がいましたら、ぜひ読んでほしいです。

関上さんは2021年には左の『中国抗日博物館大図鑑』を出版されており、こちらは抗日博物館をテーマにしたものです。

実はセットで読むとより理解が深まります。