突然ですが『ミニスターリン列伝 冷戦期東欧の小独裁者達』を出版します! 著者は木村香織さんで弊社で既に『亡命ハンガリー人列伝』を出版されています。
またシリーズ『世界独裁者名鑑』が開始となり、その第一巻目になります。
スターリンの権威を笠に着た機会主義者たちの栄枯盛衰を描く
戦間期東欧は枢軸陣営に属し、アントニー・ポロンスキ『小独裁者たち 両大戦間期の東欧における民主主義体制の崩壊』でも記されている通り、権威主義体制だったことが知られています。
ポスト冷戦から最近に至るまでの中欧諸国の権威主義的傾向もよく話題になります。
ところが冷戦時代となると、各国個別の政治状況の話や本はありますが、各国を比較した通史はあまりお目に掛かりません。
またスターリン本人の伝記や研究書は無数に出ていますが、冷戦期東欧の独裁者たちをまとめて紹介したものはほぼ見聞きしません。
その当時の独裁者達はスターリンのミニチュア版という表現がぴったりな小悪党ぶりから「ミニスターリン」と揶揄され、スターリン全盛期には我が世の春を謳歌し、圧政を敷きますが、スターリン批判以降、失脚していきます。
一方でうまく権力闘争を勝ち抜き、独裁体制を維持し、しぶとく生き延びる独裁者もおり、その生き様は案外多様です。
・ブルガリア ディミトロフ ドイツ国会議事堂放火事件裁判で英雄化、バルカン連邦構想で叱られる
・ブルガリア チェルベンコフ 「チトー主義者」粛清でスターリンのお気に入り、その死と共に失脚
・ハンガリー ラーコシ サラミ戦術で知られ「スターリンの最も優秀な生徒」と呼ばれた男
・チェコスロヴァキア ゴットワルト スターリン葬儀参列直後に急死し、スターリン批判を免れる
・ポーランド ビエルト ソ連のスパイ故、内向的でカリスマ性乏しく個人崇拝うまくいかず
・ルーマニア チャウシェスク ネオスターリニズム推進、妻エレナまで個人崇拝の対象に
・ルーマニア ゲオルギウ=デジ スターリン死後、西側とも関係改善、ソ連軍撤退まで要求
・アルバニア ホッジャ スターリン批判以降も主義堅持、ソ連・ユーゴ・中国とも袂を分かつ
・東ドイツ ウルブリヒト 社会主義陣営の模範国家と自画自賛しブレジネフから疎まれ失脚
・東ドイツ ホーネッカー ゴルバチョフにまで呆れられ、ベルリンの壁崩壊、冷戦終結に寄与
またこのチラシには載っていませんが、トライチョ・コストフ(ブルガリア)、ルドルフ・スーランスキー(チェコスロヴァキア)、アナ・パウケル(ルーマニア)、コチ・ジョゼ(アルバニア)など、粛清された側の人たちの悲惨な人生についても詳細に紹介しています。
それからユーゴスラヴィアのコミンフォルム追放によって反スターリン主義、第三世界・非同盟主義の盟主と見なされているユーゴスラヴィアですが、そのユーゴスラヴィアを率いたチトー自身とスターリン及びスターリン主義との関係性や比較についてもかなり多くのページを割いて詳述しています。
他にもハンガリーやブルガリア、チェコスロヴァキア、ユーゴスラヴィアのグラーグを現地取材写真なども交えて紹介しています。
多様なコラムも随所に挟み込んでおり、「国際レーニン学校」「世界青年学生フェスティバル」「コミンフォルム派ユーゴスラヴィア政治亡命者たちの反チトー・キャンペーン活動」など、あまりにも盛りだくさんの充実した内容。
当時の新聞や雑誌記事からの画像もふんだんに載せています。
その結果、428ページもの分厚さになってしまいましたが、それでも2600円とお買い得な価格。
共産趣味者は当然、全体趣味者、独裁者マニア、冷戦時代愛好家、スターリンファンなどにとって非常に面白い内容になっているはずです。
今現在、制作の最後の追い込み中で無事うまく進めば、11月上旬には書店に並ぶ予定です。
ご期待ください。