村田恭基さんによる『オールドスクール・デスメタル・ガイドブック 下巻』が完成したので、中身を紹介します。

2019年に出版していた『オールドスクール・デスメタル・ガイドブック』の上巻と中巻の三部作の締めくくりとなるものです。

また『世界過激音楽』シリーズもこれでVol.23です。

左が上巻の『アメリカ・オセアニア・アジア編』で右が中巻の『ヨーロッパ編』です。

今となっては非常に分かりにくかったなと思っているのですが、よく「上下ニ冊」の本だと思われ、「中巻」が存在することに気が付かれない事があります。

帯を取り外した状態。

まえがきと目次。こちらでも見られます。

ニューウェーヴ編なので、そこまで多くなるとは思っていなかったのですが、結果的に上巻・中巻を遥かに上回る272ページに。

円安インフレで印刷製本代が高騰しているので、どうにか著者の村田さんに掲載バンドやレビュー数を削減するように頼んだものの、不可能とのことでした。

結局、701アーティスト、782音源というものすごい数を紹介しています。

三章の構成になっており、まずは震源地であるアメリカ大陸。

コズミック・デス・ムーヴメントを起こし、価値観を塗り替えるBlood Incantation。

OSDMリバイバルにおけるハードコア×デスメタルの先駆けBlack Breath。

途中途中でOSDMにまつわるコラムを設けています。これはレコーディング・エンジニア特集。

新世代OSDMのブレイクスルー、エンジニアとしても名人級Horrendous。

今回は以前にも増して数多くのカリスマ、大御所バンドにインタビューしました。これはHorrendousのインタビュー。

フェス出禁で孤絶したUS 東海岸と北欧の圧倒的ヘヴィ・ミックスDisma。

Dismaのインタビュー。

ハードコアで活躍したDaryl Kahan念願のデスメタルが凄烈Funebrarum。

HCと関係が深い現行テキサス・デスメタルの黎明を駆けた逸足Mammoth Grinder。

プリミティヴ・ブラックからデス・ドゥームの華麗なる方向転換Worm。

日本RPG由来の名を冠した病的サウンドでシーンへ参じて激賞Tomb Mold。

左ページ下にはミニコラムも。

中巻でも対談で登場しており、もはや日本におけるオールドスクール・デスメタルの総元締めと言える、はるまげ堂の関根さんによるコラム『考察 ロッテン・デスメタル』」。

やっと第2章のヨーロッパ。

キャヴァナス派の音作りを一手に引き受けるD.L.の主力Cruciamentum。

ウォー・ベスチャル・ブラックメタル・シーンからの刺客Grave Miasma。彼らにはインタビューもしています。

また弊社からは2016年に『ウォー・ベスチャル・ブラックメタル・ガイドブック』も出しているので、こちらも注目。

「レーベル特集 ニューウェイヴ編」。

現行主要レーベルと共に成長、フェスにも携わる腐爛のカリスマUndergang。

スウェディッシュ・デスの新たなスタイルを創出した異能Morbus Chron。

Morbus Chron – Sweven – Speglas インタビュー。

吸血鬼ゴシックバンドとして喝采を浴びる俊英の狂的過ぎた初期Tribulation。

Tribulationインタビュー。

フードを被ったテンプル騎士団の骸骨をトレードマークに活躍Hooded Menace。

伝説的カルトの妙味を摂取した元ブラックメタル大国の先覚者Obliteration。

Obliterationインタビュー。

たまに「Mid 10’s OSDMをより混沌とさせたカセット・デモの再評価」といった長めのコラムも。

ダークなデスメタルの新たな指標となった最重要名盤を生み出すDead Congregation。

イラストレーター特集 ニューウェイヴ編。

アジア、オセアニアその他の第3章。

世界的なAutopsy崇拝をいち早く形にし、その先に行った巨匠Anatomia。

唯一無二のゴアグラインディング・オールドスクール・デスButcher ABC。

実は『ゴアグラインド・ガイドブック』でもご登場。

ドゥーム・デスをOSDMの裏象徴と意義付け、後年にHCと融合Coffins。

実はCoffinsの内野さんには中巻でインタビューしています。

さていよいよ本書の最後を飾るのは「巻末特集 鼎談『オールドスクール・デスメタル・シーンの動向』」。

話し手は大倉了(RECORD BOY)×三浦慎平(MORTAL INCARNATION)×村田恭基の御三方。

極めてハイレベルな議論が繰り広げられており、全員がデスメタルの博士号を取得しているのではないかと思うほど。

また世代間や出身の差によるOSDMの見え方の違いも、非常に興味深いものとなっております。

この鼎談だけで3万2000字近くの文字数に上っており、下手するとこれだけでちょっとした同人誌を凌駕するほどのボリュームに。この鼎談だけでも、本書を買う価値があります。

オールカラーなのでページがもったいない気もしていますが、数年前から『世界過激音楽』では要望の多かった索引も巻末に入れています。今回はバンド数も多いので、これを作るだけでも一苦労。

と、こんな感じの魅力溢れるコンテンツとなった『オールドスクール・デスメタル・ガイドブック 下巻』。

実はこの一年の間に『世界過激音楽』では、デスメタルサブジャンルが他にも『メロデスガイドブック 北欧編』『メロデスガイドブック 世界編』、そして『テクニカル・デスメタル・ガイドブック』も出ており、リリースラッシュ状態です。

もはやデスメタルファン、デスメタルマニア、デスメタル愛好家、デスメタル研究者にとってはいずれも必読文献。

『オールドスクール・デスメタル・ガイドブック 下巻』はAmazonでは在庫や表示が不安定の状態ですが、それ以外のオンライン書店、大型書店、そして本書でもご協力頂いているはるまげ堂やRecord Boy、ディスクユニオンなどのレコードショップでは販売が開始されているようです。

円安インフレで3520円とかなりの高価格帯になってしまいましたが、入手できる内に確保されることを強くお勧めします。