梶山祐治さんによる『ウクライナ映画完全ガイド』が完成したので、中身を紹介します。

カバーのイメージは冷戦期のウクライナの映画館です。

袖には弊社が2020年に刊行した『ウクライナ・ファンブック』と、ついこないだの6月に出版した『チェコじゃないスロヴァキア』を載せています。

ウクライナを知るにはうってつけの『ウクライナ・ファンブック』と『ウクライナ映画完全ガイド』を一緒に読むと理解が深まります。

またウクライナ映画ではフツル人がよく出てくるのですが、『チェコじゃないスロヴァキア』でもルシン人がよく出てきます。

この本も『ウクライナ映画完全ガイド』と合わせて読むと、更に理解が深まるでしょう。

まえがきと目次。こちらで同じ内容が見られます。

ウクライナ史の年表を用意しています。これで映画で設定されている時代がよく分からなくなっても、見返せば頭の中が整理できます。

ウクライナの地図。これで映画の舞台や撮影地がどこなのかわかります。

ウクライナ映画はまだあまり知られていないので、「ウクライナ映画史への招待」という長いイントロダクションを用意しました。

日本ではウクライナ映画について報じられた事がほとんどないので、「用語解説」で、本を読み進める前に基本的知識を得ることができます。

「人物解説」ではウクライナ映画史で重要な人物を紹介しています。

ここからが本編の第1章「映画の誕生からサイレント映画期」。サイレント映画時代はモノクロ映画が多かったので、この本自体はオールカラーという訳にはいきませんでしたが、この章だけが白黒です。

まず最初に登場するのは、ウクライナ人監督・製作による、ロシア帝国最初の長編劇映画『セヴァストーポリの防衛』。

基本的にはこの様な感じで、映画監督や原語タイトル、制作年、使用されている言語、スタジオ、カメラマン、出演者といったスペック表とともに映画のポスターなどを左ページに載せています。

そして右ページには映画のあらすじや制作背景、批評を載せています。また特に映画の中で重要なシーンも載せています。

これでYouTubeなどのオンラインで英語の字幕などで見ても、あまりよく分からなかったストーリーや見どころもよく把握できるので、副読本といっても良い存在です。

世界のドキュメンタリー映画史上、最重要作品のひとつ『カメラを持った男』。

『ウクライナ映画完全ガイド』のカバーに載っている、ドヴジェンコによる世界の映画史に燦然と輝く、サイレント映画の名作『大地』。

この様な流れでその時代の重要なウクライナ映画を紹介していっています。第1章の章末には「ウクライナ映画を配信で見る」を用意。

そもそもどうやってウクライナ映画を視聴するのかの解説です。

さて第2章は「トーキー映画から戦前」

日本人スパイ「サムライ」も登場する、極東を舞台にした冒険映画『航空都市』。

この章からは基本的にカラーです。

第2章の終わりは「ドヴジェンコ国立センターの100作品リスト」について。

そして第3章は「戦後のウクライナ映画の隆盛」

ソ連雪解け期映画の先駆的作品にして、観客動員数3000万人の大ヒット作『ザレチナヤ通りの春』。

ウクライナでも親しまれている、ソ連コメディ映画の決定版『ガソリンスタンドの女王』。

今でこそウクライナは戦争関係で連日のようにその様子が報道されていますが、ソ連時代はモスクワやレニングラードの映像ばかりで、あまりウクライナの都市の様子を目にすることはありませんでした。

この映画ではキーウのフレシチャーティク通りや現在のマイダン広場がカラーで映し出されており、非常に新鮮に見えます。

映画そのものだけでなく、昔のウクライナの街並みや人々の様子が見られるのも非常に面白いです。

パラジャーノフが山岳民族を色彩豊かに描く、ウクライナ映画オールタイムベスト1『忘れられた祖先の影』。

日本ではヨーロッパ公開タイトルに基づき『火の馬』の題で公開されています。

ウクライナ映画ベスト作品にも挙げられる、詩的映画の代表作『渇いた者たちの井戸』。

国際都市オデッサを舞台に育まれる、多国籍な少年少女の友情『外国の女の子』。

カナダへの集団移住問題を背景にした、貧しい農夫の厳粛なドラマ『石の十字架』。

第3章の章末コラムは「ウクライナのアニメーション」。

そして第4章は『体制の崩壊へ』

キラ・ムラートワがソ連末期の変調を「無気力症」というシンドロームを通して描く『無気力症シンドローム』。

第4章末のコラムは「外国映画が映し出すウクライナの風景」。

第5章は『新生ウクライナ映画』。

ゲームに青春を捧げる青年を描く、センツォフの鮮烈なデビュー作『ゲーマー』。

監督のオレフ・センツォフは2014年のクリミア侵略の際にロシアに身柄を拘束され、2019年にウクライナ軍が捕らえたロシア軍捕虜との人質交換によって、祖国に帰還したことで有名です。

世界中で称賛された、手話のみで描くろう者たちの青春と暴力『ザ・トライブ』。オールタイムベストで4位。

第5章コラムは「ハリウッド映画の中の「危険なウクライナ」」

そして第6章は「マイダン革命以降」。

スロヴァキア人監督がドンバスで分断された市民の声を記録する『平和あれ』。

ドキュメンタリーの名手セルゲイ・ロズニツァが劇映画で描く、ドンバスの「真実」『ドンバス』。

見る者が想像する、祖国を離れて宙を舞うオルガの着地点『オルガの翼』。

監督が自らの命と引き換えに遺した、爆撃下のマリウポリ市民の姿『マリウポリ:7日間の記録』。

ナチス・ドイツの市民虐殺が次々と明かされる裁判の一部始終『キエフ裁判』。

この『キエフ裁判』の最後には「世界市民ロズニツァとナショナリズムをめぐる緊張」特別コラムも。

さてざっと『ウクライナ映画完全ガイド』をダイジェスト的に紹介しました。

発売がお盆休みと重なりましたが、無事多くの書店に搬入され、オンライン書店でも遅れることなく、在庫有りになりました。

また神保町の東京堂書店の階段の壁に『ウクライナ映画完全ガイド』のポスターを掲載しています。

まるでこの『ウクライナ映画完全ガイド』そのものが映画の様に見え、階段が映画館に思えてきます。

そして東京堂書店での8月13日の週で『ウクライナ映画完全ガイド』が売り上げランキング6位に入っているそうです。

https://x.com/books_tokyodo/status/1823285471700730108

ロシアによるウクライナ侵略が始まってから2年以上経過しました。ウクライナに対する関心が高まりましたが、ウクライナ映画を本で紹介したのは『ウクライナ映画完全ガイド』が本邦初です。

ウクライナという知られざる映画大国の実像に迫ります。

是非お買い求め下さい。