内藤智裕さんによる『メロデスガイドブック 北欧編』が出来上がりました。カバーはティピカルなメロデスのイメージ。

帯を取り外した状態です。

袖には今年4月に出た『デスメタルインディア』が。著者の水科哲哉さんに本書『メロデスガイドブック 北欧編』で編集のご協力を頂きました。

目次です。同じ文章がこちらで読めます。

本書は『北欧編』とある通り、『世界編』と2冊セットです。本当は一冊でまとめたかったのですが、メロデスの規模があまりにも巨大でした。

1冊でまとめると500ページ近くになってしまい、オールカラーを断念するか定価5000円ぐらいしてしまう為、泣く泣く分冊化せざるを得なくなりました。

その結果、まずはメロデス発祥の地、北欧から始めることになったわけです。

なお実はこの『メロデスガイドブック』のレイアウトは、普段『世界過激音楽』では1ページに4枚のレビューを載せているところを、どうにか元々少なかった余白を更に圧縮し、文字を小さくして5枚載せる事に成功しました。

その為、ページ数は208ページに押さえていますが、文字数で見ると26万字以上あり実はむしろコスパに優れています。

本の冒頭には特にメロデス作品をリリースしていたレーベルを紹介しています。

さてここからがメロデス発祥の地、スウェーデンの章。

章の中の節は地域で分割されています。メロデスはヨーテボリサウンドで知られる通り、ヨーテボリでデスメタルから徐々に勃興しました。

特にシーンで重要な役割を果たしたバンドたちをプロフィール付きで紹介。まずはAt the Gates。このバンドは後年、アメリカのメタルコアに多大な影響を及ぼしました。

メロディックブラックメタルとメロデスの境界線上にありるDissection。リーダーのJon Nödtveidtが自殺したこともあり、神格化された存在になっています。

デスメタルに美声ヴォーカルで知られ、今でも大人気のベテランDark Tranquillity。メロデスと言えばDark TranquillityかIn Flamesと言っても過言ではないです。

随所にメロデスと関連するコラムを用意しました。左はDark Tranquillityのロゴの変遷を紹介したものです。

右は弊社が2020年に刊行した『スウェディッシュ・デスメタル』の紹介記事。

メロデスで最も有名と言えるのがこのIn Flamesではないでしょうか。日本でも非常に人気があり、メタル全ジャンルでの知名度も抜群です。

メロデスをよく知っている人たちからはカリスマとして崇め建てられているSacramentum。吹雪のようなブラスト、青い中世の城のアートワークなど、メロディックブラックメタルとメロデスの境界線上の世界観を体現したバンドとしても知られています。

なんとそのSacramentumのインタビューに成功しました。あまり表に出てくるタイプではないので、非常に貴重です。

数々のメロデス名作品に携わったプロデューサーFredrik Nordström。威厳に満ち溢れ、非常におっかなさそうですが、快くインタビューを受けてくれました。

メロデスのサウンドを作り上げた人物の経験談には含蓄が多く含まれます。

大御所バンドを一通り紹介した後は、中堅からマイナーなバンドの音源をレビューで紹介しています。

ここからはスウェーデン南部。一部の有識者からは真のメロデスの発起人として評価されているEucharist。短命で終わり、知名度は高くなくとも、その先見性は確かなものでした。

モダンメロデスとして、その後のメロデスシーンのイメージを近未来風に刷新したSoilwork。インダストリアルやテクノっぽい硬質感が付与され、それまでのメロデスにあったと言える芋臭さが払拭されました。

そんなモダンメロデスの始祖Soilworkのインタビューも実現。

やっと首都ストックホルムの節です。この通り、メロデスはスウェーデンの地方都市で発展していったことが分かります。

メロデスというよりは、ヴァイキングメタルとして知られているAmon Amarth。そしてむしろメロデス不毛国、アメリカで大人気なのも特徴的です。

メロデスというよりは、スウェディッシュ・デスメタルの重鎮、そしてプロデューサーDan Swanöとして有名なEdge of Sanity。

切ないメロディが脳裏にこびりつくほどで、他ジャンルからのファンも多いので有名です。

長年のキャリアやモダン風のサウンド、そしてプロデューサーとしても有名な超大物Peter Tägtgrenを要するHypocrisyのインタビュー。

北部は大御所といえるほどのバンドは輩出しませんでしたが、Gates of IshtarやNaglfarといった良質なバンドが登場しています。

やっとここでフィンランド。スウェーデンに続くメロデスNo.2の大国です。そしてスウェーデンとは異なるのが、個性的で際立った特出を持つバンドが多いこと。

ヨーテボリサウンドの様な統一的な音像はあまりないですが、それでもメランコリックでセンチメンタルなバンドやプログ、アヴァンギャルド要素を取り入れた一風変わったバンドなどが多く、人によってはスウェーデンよりも評価している事もあります。

先日9月12~14日に来日したAmorphis。実はどうしてもその来日までに間に合わせたいということで、不眠不休で作業に当たりました。

交通渋滞で著者の内藤さんのメンバーに対する手渡しと記念撮影はできなかったみたいですが、日本滞在中にメンバーに本は渡ったみたいです。

カレワラ民謡を取り入れ、プログ化し、この世界でも孤高のオーラを放っています。

そんなAmorphisのTomi Koivusaariにインタビュー。

メロデスというよりはフィンランド出身のメタル界でも特に有名な人の貴重なインタビューです。

フィンランドを含め、どの国よりもこの日本で特に人気が高かったChildren of Bodom。ネオクラシカルを取り入れたことで、ギター奏者からリスペクトされています。

2020年の年末にリーダーのAlexi Laihoの訃報が流れた時は、世界のメロデスファンの間で悲しみに包まれました。

ドラマティックで切ないメロディが人気のフィンランドの大御所Insomnium。そのインタビューも掲載。

モダン、プログレッシヴ、AORなど新しい要素を取り入れ、新境地を切り開いたOmnium Gatherum。

この通り、フィンランドも次から次へと大御所のインタビューが。ここまでインタビュー返信率が高いのは、メロデスの日本市場の重要さの表れなのかもしれません。

デンマークはスウェーデン、フィンランド、そしてブラックメタル大国ノルウェーと比べて、メタル界ではやや存在感が希薄ですが、実は非常に重要な役割を果たしています。

大御所枠で紹介したモダンスタイルのMercenary。実はデンマークは、プロダクション面でのメロデスに対する貢献が著しいのです。

最後はノルウェーやアイスランド、フェロー諸島。ノルウェーは言うまでもなく、ブラックメタルに凌駕され、あまりメロデスは盛んではありませんでしたが、ちらほらとバンドが登場しています。

アイスランドやフェロー諸島は人口規模からして、メタルバンドが少ないのは仕方がありませんが、無視するわけにもいかないので、なるべくピックアップしました。

ざっと駆け足で『メロデスガイドブック 北欧編』の中身を紹介しました。

メロデスはメタルサブジャンルでも特に人気が高く、下手するとナンバーワンで、リスナー人口もトップを争うほどかもしれません。

またメタルサウンドの中心に位置するため、いろんなサブジャンルと隣接し、相互に影響を与えたり、人脈を共有しています。

弊社から既に出版されている『世界過激音楽』シリーズの他のジャンルとも、密接に関係しているので、それらを紹介。

メロデスの元となるデスメタルそのものは『オールドスクール・デスメタル・ガイドブック』でチェック。

メロデスは近年ではメタルコアやプログレッシヴハードコア、Djentといったモダンサウンドのルーツでもあり、その影響力は甚大。

エクストリームメタルの中心に位置すると言っても過言ではない『メロデスガイドブック 北欧編』。

発売後、かなり人気がありAmazonでの在庫切れがしばらく続いていたみたいですが、今では復活しています。

また多くの大型書店やオンライン書店、レコードショップでも購入可能です。

実は著者の内藤さんのサイトからも直接買えます。希望すれば内藤さんご自身のサイン付きなので、ぜひこちらから買ってみてください。

そう遠くない将来に『メロデスガイドブック 世界編』も出版する予定で、今現在制作中なので、こちらもご期待ください。