突然ですが『北朝鮮アニメ大全』を出版します。著者は大江・留・丈ニさんで以前、2019年に弊社から『韓国いんちきマンガ読本』を出版されています。

副題は『朝鮮民主主義人民共和国漫画映画史』です。2017年に出版された、かに三匹さんによる『韓国アニメ大全』のシリーズ『珍アニメ完全解説』の第二弾です。

「北朝鮮のアニメなんかプロパガンダまみれなんだろ」と思いきや、そう話は単純ではありません。

抗日遊撃隊で動物キャラは不敬!

 

抗日アニメですらご法度に!

 

世界一表現の自由が許されない国で

 

世界最強ポリコレアニメはいかにして作られてきたのか!?

映画マニアで知られる金正日がしゃしゃり出てきて「児童映画理論」を提唱。

「アニメは10才以下の児童のためのジャンル」と現地指導。

童話や寓話を原作とし、擬人化、誇張、対比などの手法を用いて製作されました。

そして「ウリ式児童映画」や「主体的児童映画」と呼ばれ、世界で最も優れたアニメーション映画と喧伝していき、絶対的な原則として定着しました。

一方で数多くのフランスやイタリアのスタジオの下請けを請け負っていきます。

万寿台テレビで放送されていた『トムとジェリー』を、一般市民は東ヨーロッパのテレビアニメだと思いながら視聴していました。

(力は強いが頭の弱い猫は米帝のメタファー、力はないが知恵と勇気で勝利する鼠が北朝鮮のメタファー)

次第に北朝鮮で制作されるアニメーション作品の半数以上は海外からの下請けとなり、貴重な外貨獲得源となっていきます。

その中にはディズニーのテレビアニメ『ライオンキング』や『ポカホンタス』なども含まれます。

YouTubeなどインターネットで見られる北朝鮮アニメも多く、意外とアメリカのアニメに似ている雰囲気の作品が多いのが驚きです。

世界屈指の反米国家なのにYouTubeで見られるという矛盾。それだけでなく、AppleやDell、3D Studio Maxなども駆使。

おどろおどろしそうなのに、思いの外、かわいらしくコミカルな絵柄と動き。近未来感溢れる超高層ビルや空中カーなどのSF的世界観。

北朝鮮のアニメだと言われなければ気が付かなさそうなものも多く、不思議な感覚に陥ります。

時限爆弾 最古反米なのにYouTube視聴可能
私たちの園 ソ連押収ナチスAGFAで製作
勇敢な児童団員 日帝野郎を手榴弾で粉砕した模範児童団員
三人の友 唯一SF北朝鮮版サンダーバード幻想の中の
ガンダーラ 社会主義リアリズムと真逆シュールレアリスム
月世界の望遠鏡 金正日談話で韓国イメージ低下狙う
ポンポンポロロ 南北合作ポンキッキ放送
キャンプの一日 朝鮮画CG 無理融合不気味の谷に突入

本書ではこういった不可思議な北朝鮮アニメ54作品を、朝鮮語名、製作年、監督、脚本家などのスペック表は当然、作品の背景解説、あらすじ説明、そして評論をしています。

更に北朝鮮三大アニメ『少年将軍』『かしこいタヌキ』『リスとハリネズミ』は、まるまる一章を使って人脈相関図を掲げ、個別の話に沿って詳細に解説しています。

また北朝鮮のアニソン・声優・スマホゲーム・スタジオ等を紹介したコラムも充実させました。

巻末には北朝鮮アニメの(ほぼ)全タイトルをリスト化した年表を載せています。

世界初(&おそらく最後)のフルカラー北韓流・共アニ本となります。

四六判並製で256ページ。それでいながら2300円とお手頃価格。

現在、最後の追い込み作業中で無事うまく進行すれば、8月中旬頃には書店に並ぶ予定です。

弊社刊行『中国抗日ドラマ読本』と同じ様に、北朝鮮でも話題となり、ヒットするということはないでしょうが、いずれ体制が崩壊したときには貴重な歴史的資料となることは間違いありません。