突然ですが『デスメタルインディア』を出版します。副題は「スリランカ・ネパール・パキスタン・バングラデシュ・ブータン・モルディヴ」でインドだけでなく、南アジア一帯のメタルバンドを収録しています。

著者は『デスメタルコリア』を書かれた水科哲哉さんです。実は韓国だけでなく、やたらと非英語圏・辺境・マイナー国メタルに詳しく、インドやネパールにも訪れた事があり、ネパール人をホームステイで自宅に滞在させたこともある様です。なお『世界過激音楽』もこれでVol.18です。

さてインドのメタルといえばYouTubeで世界的にブレークし、Fuji Rockにも出演したラップ・フォークメタルBloodywoodが話題となりました。

他にもYouTubeで『Headbanger’s Kitchen』を主催しているDemonic Resurrectionもインド発のシンフォニック・ブラックメタルとして世界的名声を勝ち得ています。

『Djentガイドブック』でも登場しましたが、アメリカ人ヴォーカルを擁するDjentプログ系Skyharborも有名です。

いよいよ人口世界1位・GDP世界5位
中間層激増・年齢中央値27.9歳で
数学民族DJENT躍進!!

インドの成長率は6.7%と主要国で最も高く、近い将来日本を抜き去り、世界3位のGDP大国になると予想されています。ゼロを発明したことで知られる通り民族的に数学の才能に秀でており、シタールなどの多弦楽器に慣れ親しんでいて、変拍子や複雑な曲構成の伝統音楽の下地がある為、Djentやプログメタルにおける潜在能力が高く、続々と秀逸なバンドが登場しています。

その一方で聖典ヴェーダに依拠した「ヴェーディックメタル」や、反宗教を掲げるウォーブラックメタルなど邪悪で神秘的なアンダーグラウンドメタルも多く、既に世界のシーンで確固たる地位を占めています。

またインド訛りの英語が全く感じられず、言われなければまるで「Top40にランクしたアメリカ出身のメインストリーム系ロック」と言っても疑われない様なクォリティなのに、世界では無名のバンドも爆誕しまくっています。

Bloodywood
ボリウッド風ラップ・フォークメタル

Demonic Resurrection

料理番組シンフォ・ブラックメタル

Skyharbor
米印混成Djentプログメタル

Rudra
元祖シンガポール出身ヴェーディックメタル

Kapala
水牛頭蓋骨持ち上げウォーブラック

Undying Inc.
硬質プログメタルコア

Dusk
パキスタン准教授ドゥーム

Arogya
シッキム出身ヴィジュアル系

Gutslit
ターバン姿シク教徒デスメタル

Dhishti
DSBMがヒップホップ參加で解雇

なお書名の便宜上、『デスメタルインディア』としましたが、インド以外の南アジア各国のシーンも徹底調査しました。ネパールは世界最貧国の一つであるにも関わらず、テクニカルなバンドが多く、パキスタンではドゥームが盛んで、スリランカでは世界的に知名度の高いウォーブラックがひしめいていたりと、それぞれの国ごとに特徴があります。

バングラデシュはまだこれと言った世界的なバンドは登場しておらず、同国を特徴づけるサウンドといったものまでは形成するには至っていませんが、強固なアンダーグラウンドシーンが存在していることが分かりました。人口が少ないため規模も小さいですが、モルディヴやブータンなどの小国のメタルシーンも必要以上に調査してしまい、それなりのバンド群を検出しました。

そしてインド圏でも特に知名度、人気を誇るメタルバンドや、メタル関係者のインタビューに成功しています。

2012年にバングラデシュとインドでライヴを敢行した、日本が誇るブラック/スラッシュメタルAbigailのJeroさんの貴重な体験記もインタビューという形で掲載しています。

インタビュー:Bloodywood, Skyharbor, Demonic Resurrection, Gutslit, Undying Inc., Kapala, Arogya, Kryptos, Stigmata, Dusk, Underside, Warfaze, North H, Transcending Obscurity Records, Bangalore Open Air etc, Abigail(Jero)…etc

またインド圏のメタルを知る上で沢山の切り口のコラムを用意しています。

・面白ビデオクリップ
・エリート高学歴メタラー
・世界の印僑系メタラー等

シーンを調査していくにつれて、メタルバンドマンの多くが実は普段の職業は企業幹部や弁護士、大学教員などで、高学歴エリートたちがかなり多いということが分かりました。中間層激増とは言っても、メタルはまだ生活に余裕がある人の趣味娯楽なのかもしれません。どういうエリートがいるのか調査したコラムを設けました。

シンガポールのRudraなど、在外インド人メタルやインド系メタラーも集めました。またまるでボリウッドかの様なヘンテコリンなビデオクリップも多く作成されているので、それらも随所で紹介しています。

さて思っていた以上にバンド数や音源数が多く、著者も編集者も気が付かない間に膨大な数に膨れ上がっていました。いざ流し込んだら500ページ近くに達する量にまでなってしまっていました。本当はオールカラーで200ページぐらいで手軽に紹介できれば良かったのですが、泣く泣く大幅に圧縮し、やっとのことで360ページにまで抑え込みました。それでも辞書みたいなボリュームになってしまいましたが……結局、超盛り沢山の657バンド、737作品収録しています。インド人もびっくり!

今までの『世界過激音楽』の中でもサブジャンルではなく、各国エリアシリーズを楽しみにして頂いている辺境メタルファン必読の本となることは確実です。

『デスメタルアフリカ』はギャグ天然・無自覚系、『デスメタルインドネシア』はブルータルデスメタル、『デスメタルコリア』は日韓二国間メタル関係、『デスメタルチャイナ』はDSBMや独自進化系が見どころでしたが、『デスメタルインディア』はDjent/プログ系、アメリカ顔負けハイクォリティ・メインストリーム系、ウォーベスチャルなどアンダーグラウンド系、ヴェーディックメタル等ヘンテコ奇天烈・異文化系など、一筋縄ではいかない混沌とした、多様なシーンを形成しているのが見どころです。

4月中旬に発売予定です。