田上智之さんによる『ゴアグラインド・ガイドブック』が完成したので、中身を紹介します。

この本の正式発売日は1月20日でした。著者が運営するHappy Despatch Productionsやはるまげ堂、S.A. Musicなどでは先行販売していました。

発売日以降は楽天ブックスやhontoなどネット書店は当然、ディスクユニオンなどのレコードショップ、また大型書店では軒並み一斉に販売開始されました。

しかしAmazonでは一向に販売されないどころかずっと「予約受付中」のままの状態が続いてしまいました。中身がかなり過激で不謹慎なので、いよいよこれは不健全図書として、取り扱い停止になってしまっているのか!?という疑惑が芽生えました。

しばらくすると予約が殺到してしまい、初回搬入分が足りなくて捌ききれず、「予約受付中」の表示が続いていた事が判明。その後、複数回にわたって大量数を搬入、そして2月10日今日現在、やっと「在庫あり」の表示に切り替わりました。

この在庫切れの期間、マルジナリア書店のよはく舎がAmazonマーケットプレイスで送料無料で、本書を販売してくれていました。

さて前置きが長くなりましたが、これがカバー。大腸をイメージしています。

目次。これが厄介なことに、普段の他の本と同じページ数を用意していたら、なんとゴアグラインドは文字数が多いバンドが多く、収まりきらなくなりかけました。結局、級数行間を狭めてなんとか載せました(汗)

レーベル紹介。かなりマニアックなレーベルが多いです。

基本構成としてはヨーロッパ、アメリカ、それ以外の三章で成り立っています。まずはヨーロッパ。

まずは何と言ってもCarcass。ゴアグラインドの帝王、リバプールの残虐王。ゴアグラインドはこのバンドから始まったと言っても過言ではありません。

後にメロデス化していき、リスナー層がくっきり真っ二つに別れる毀誉褒貶激しいバンドでもあります。

Carcassのフォロワーを自任するスウェーデンのGeneral Surgery。

彼らのインタビューも実現。

Carcassはゴアグラインドの創始者として有名ですが、このLast Days of Humanityはゴアグラインドそのものを代表するバンドと言ってもいいでしょう。

鳴りっぱなしの工事現場ドラムにピッチシフターヴォーカルと、その後のゴアグラインドのスタイルを確立。よく分からない人にはまるで踏切やブザーにも聴こえる極端さ。

そんなLast Days of Humanityにも在籍していたことがあり、S.M.E.S.やKOTSなど伝説のバンドも率いるErwinのインタビューも。

右はグルーヴ感重視したRompepropですが、左は「ゴアグラインド界における略称一覧」です。この世界では文字数が多いバンド、音源名が多いのですが、身内では略称が横行しています。その結果、部外者からしたら何のことだかさっぱり分からない言葉が多く行き交っているので、基本的に本書では全て正式名称を記載しました。特に略称の方が有名なものに関して、一覧表で載せました。

Gutというポルノゴアの創始者で、Libido Airbag、Nunwhore Commando666など名だたるバンドを牽引するOlliのインタビュー。

音源のディスクはそのまま掲載しています。一部相当過激で不謹慎なものもありますが、後世に残すべき資料として何の修正も施さず掲載しています。

ゴアグラインド界ではなぜこの様なエログロジャケットを用いられる様になったかの考察コラム。

スペインの紅一点パンキッシュ・ゴアグラインドHeamorrhageのインタビュー。

ゴアグラインドはお下劣でヘンテコリンなビデオクリップが多いので、その紹介。

アクセスが難しい僻地に単身乗り込んだ著者によるゴアグラインド界最大のフェスObscene Extremeのレポート。

ゴアグラインド界でもトップクラスの知名度を誇るポーランドのDead Infection。ストーリー仕立ての歌詞で「ゴアグラインド界のモンティ・パイソン」と呼ばれるほど。

ゴアグラインドは卑猥なジャケットや歌詞が多いですが、そんなジャンルで活躍する女性ゴアグラインダーを紹介したコラムも。

ゴアグラインドはルーツを辿るとグラインドコア、ハードコアの要素の方が濃厚ですが、メタルとも密接な関係に。「ゴアメタル」と呼ばれるExhumedも紹介。

人によってはゴアグラインドでもNo.1として認定しているメキシコのDisgorge。ジャケットのグロさだけでなく、ハイパーブルータルなブラストビートなど、過激さでは他を寄せ付けないレベルです。

ところがそのMexican Disgorgeに対峙する、American Disgorgeの方もブルータルデスメタル界の大御所として君臨。

ゴアグラインドとブルータルデスメタル、似ているようで似ていないジャンルの為、どちらのDisgorgeが好きかでよく揉めます。それについてのコラム。

右はメキシコのOxidised Razor。日本人メンバーがいたことも。

ロゴも過激さを追求し続けた結果、毛虫とか嘔吐物、陰毛みたいになっていて全く読めないものが横行。

ゴアグラインドは一部、医療をコンセプトにしている為、医学用語がよく使われています。その用語集。

日本ではニコ生動画がゴアグラインドがブレークする切っ掛けの一つでした。今も日本は世界有数のゴアグラインド大国です。かなり独特な進化を遂げています。そのコラム。

Butcher ABCのNarutoshi Sekineさんのインタビュー。C.S.S.O.やObliteration Records、はるまげ堂でも知られる、日本のデスメタルの重鎮。

『オールドスクール・デスメタル・ガイドブック』や『ウォー・ベスチャル・ブラックメタル・ガイドブック』でもインタビューに応じてもらっています。

一番の本領域はゴアグラインド。たっぷり語ってもらいました。

超謎めいていて、世界的カリスマのCatasexual Urge Motivation。90年代中期からDTMやインターネットを駆使した先駆的なバンドとして、世界的に評価されていました。

本当に表に出てくる情報がないので神秘性に満ちあふれていましたが、幸いな事にインタビューに応じてくれました。しかもかなりの長文の回答。非常に貴重です。

2000年代に関西ゴアグラインドシーンは相当な盛り上がりを見せていましたが、その中心勢力だったMaggutのインタビュー。ノリの良いゴアグラインド。

大分出身で世界的にも超有名なViscera Infest。世界最速ドラマーの一人ではないかと絶大な評価をされているドラマーも在籍。またゴキブリモッシュでも有名です。インタビューも収録。

愛知県岡崎市のVulgaroyal Bloodhill。スペイン語で歌い、見事なヒスパニックイメージを醸し出し、グルービーで時にはスラッシーなゴアグラインドを体現。インタビューも掲載。

ゴアグラインドの情報をメインに扱うインフルエンサー達も紹介。

と、大急ぎでだいぶ要点を絞って紹介してきました。発売後、Amazonに注文が一極集中して、供給バランスが崩れかけました。

著者のHappy Despatch Productionsやはるまげ堂にも事前の予想を上回る注文で、何度も補充しています。

中身も相当不健全・不謹慎ですし、この後どうなるか分かりません。

入手できるうちにお買い求めになることをお勧めします。

なおHappy Despatch Productionsから直接買うと、特製ステッカーが付いてきます。

オンラインだけでなく、ライヴ時などでも販売している様です。