関上武司さんによる『中国遊園地大図鑑 西部編』がとうとう完成しました!

『中国珍スポ探検隊』の第4弾で「重慶・四川・青海・雲南・甘粛・寧夏・陝西・内モンゴル・貴州」などのディープゾーンです。

今回のメインキャッチコピーは「テーマパークリ」。今までの巻の「きもかわいくない」「君の名は?」「ちーがーうだろー」が非常に評判が良かったので、同じ水準を考えつくのに苦労しました。

最初に思いついていたのは「ちゃうな(Chauna)?」「ちゃいます(Chimas)」だったのですが、どうも分かりにくく、しっくりきていませんでした。

ぎりぎりで「テーマパークリ」を思い付いたのですが、今のところTwitterでも評判です。

帯を取り外したところ。今回の西部編は今まででも最も凶悪なキャラクター達が登場している様に見受けられます。

西部編なのですが、関上さんの取材ルート上、内モンゴルと天津を経由する必要があったとのことでした。

その結果、このエリアで本書の中でもずば抜けてヘンテコリンな施設を複数収録することなり、逆に良かったです。

オルドスの近未来ゴーストタウンにあるウランムルン景観湖。

今回の西部編で特筆すべき点は、すべての写真に必ず補足解説キャプションを設けたことです。

お台場や幕張並の高層ビルが建っているにも関わらず、ニセキャラクター遊具が点在。

内蒙古自治区満州里にあるマトリョーシカ広場。今、何かと話題の中露関係ですが、ロシアをそのままコンセプトにしたテーマパーク。

ロシア風の街を模しただけでなく、巨大マトリョーシカ型のホテルまで。ホテルをマトリョーシカ型にする必要があったのでしょうか?

中ソ対立を経て、立場が逆転。ロシア人がダンサーとして出稼ぎにきているようです。

ミニディズニーランドを目指す。天津水上公園。やはり適当な作りのミッキー、ミニー、ドラえもんなどのキャラクターが。

2022年最大の出来事といえばロシアによるウクライナ侵略。さて天津にはその名も「キエフ」という空母を再利用した、世界最大の軍事テーマパークがあります。言うまでもなく、「キエフ」はウクライナの首都のロシア語読み。今は「キーウ」に変わりました。

ロシアの建物や街を模しており、ロシア人の売り子がロシア製品を売っています。

しかし同時に中露の仮想敵国であるアメリカや日本のキャラクターグッズが売っていたりと、詰めが甘いです。

「勝利のキス」の像やハリウッド映画の様なアトラクション、Coca-Cola販売など、「やっぱりアメリカに憧れているんじゃないか」という矛盾点が随所に。

各章末には特設コラムも。こちらは中国の遊園地で見かけたショッキングなトイレについて。

寧夏回族自治区という割と田舎の銀川市中山公園にある、ウルトラマン大戦。

『紅いコーリャン』のロケ地にもなった鎮北堡西部影城。取材時にも美人女優が撮影中。

文化大革命時代を再現したエリアも。

荒野にオプティマスのヘッドが鎮座する蘭州新区長城西部影視城。

石景山遊楽園ほどチープではないが、差別化する為に、白目の部分を青く塗ったディズニーキャラが暗躍する麒麟湾公園。

武装警察が巡回するウルムチ水上楽園。釣り堀でも釣魚島(尖閣諸島)の領有権を主張。

「変な看板」特集コラム。

既に閉鎖されてしまっているのですが、本書の中でも特段キテレツな重慶の美心洋人街。

かなり気合の入った万里の長城もあります。

中国初の性テーマパークや世界最大のトイレもあったのですが、当局から撤去を命じられてしまいました。

重慶のケーキ屋さんがエロとグロを追求した華生園金色蛋糕夢幻王国の異様な城。

日本でも話題になった黄色いガンダムは撤去されていましたが、他にもR2-D2や何ともいえない表情のキャラクターの数々が残存する国色天郷楽園。

オリジナルキャラの開発にも勤しんでいますが、どことなくミッキーマウスの影響が見え隠れします。

お笑い要素は皆無ですが、四川汶川特大地震漩口中学遺址。

四川大地震で倒壊した中学校をそのまま保存して観光客が殺到。

更に不謹慎なのがこびと(小人)を見世物にした昆明市の世界蝴蝶生態園・小矮人王国。

こびと達が歌って、踊ります。

背中のコブから足が生えていたり、馬のような蹄があったりと、奇形牛を崇拝しています。

ラサにある海抜世界一の徳吉羅布児童楽園には、なぜかドカベンの山田太郎の像が。

中国各地の遊園地にある、偽白雪姫特集。

という訳で、だいぶ端折って『中国遊園地大図鑑 西部編』の見どころを紹介しました。

巻末にはこの本と関係性の深い本を紹介しています。

弊社は日本で一番B級中国本を出版しているのではないかと思います。

こういったダサい中国もZ級中国が持て囃され、キラキラしたインフルエンサーが人気の今となっては過去の遺物になっていくのかもしれません。

一応この西部編で中国のすべてのエリアは制覇しました。

しかし今現在(2022年11月)、中国は未だにゼロコロナ政策を堅持しており、簡単には渡航ができません。

中国が懐かしくてしょうがない方々も、本書で在りし日のイカガワシイ中国を堪能できます。

次に中国に行ける様になる頃は、もうこの様なパクリ遊園地はあまり残っていないかもしれません。

結果的に2010年代までの中国のカオティックな情景を記録した貴重な資料集ともなりそうです。

今回出版される西部編だけでなく、北部編、中部編、南部編も合わせて4冊セットで揃えることをお勧めします。

特に石景山遊楽園が登場する第1弾の北部編に注目が集まりがちですが、偽パリ、偽ロンドン、偽ベルリン、抗日遊園地、そしてサンリオピューロランドが登場する中部編も相当面白いです。

また昨年は関上さんは『中国抗日博物館大図鑑』を出版しています。中国の抗日博物館を潜入取材したものですが、ますます中国の愛国教育の実情を知る必要に迫られてきている昨今、学術資料としても研究価値があります。

習近平政権が強権化され、混迷深まる中国。

不気味で気持ち悪い中国が全面的に結晶化した遊園地の数々をご堪能頂ければ幸いです。