『共産テクノ ソ連編 増補改訂版』が完成したので、中身を紹介します。10月10日が正式発売日なので、書店やネット書店でも買えます。
左が2016年3月に出版された『共産テクノ ソ連編』。おかげさまで根強い人気があり、実は発売から数年後に社内在庫が無くなってしまっていました。
市場在庫はその後もしばらくあったと見られますが、徐々に無くなっていき、次第にプレミア価格が付き始め、2万円超えを目にする様にまでになりました。
発売直後には本書に気が付かなかった人が後になってどうしても欲しくなり、弊社に問い合わせてくる事もありました。
通常だったら重版すればいいのですが、初版から時間が経っており、また多くはないにせよ、誤字脱字やミスもあった為、「増補改訂版」として仕切り直すことにしたわけです。
ちなみに『共産テクノ』は東ドイツ、ポーランド、チェコスロヴァキア、ハンガリーも扱った『東欧編』も出ているので、こちらもよろしくお願いします。
『共産テクノ』と関連性が強い『ソ連歌謡』という本も弊社から刊行されています。
増補改訂版にあたって、まえがきも大幅にリニューアル。こちらでも読めます。
ソ連の電子音楽といえば元祖テルミン。
初版の時にも話題になったナナイ族口琴テクノ、コーラ・ベルドィ。
「鉄のカーテン」で遮られていたのをいい事に、勝手に西側の作品を盗作してオリジナルとして出していた事のコラム。
ペレストロイカ末期にエアロビクスなどと合わせて作られた「スポーツテクノ」。
スポーツテクノの制作者ラジオノフとチハミロフに著者の四方さんがインタビュー。
モスクワの共産趣味スポットを訪れるコラム。実は初版の後に私(担当編集者)はモスクワに行ったのですが、そこでたまたま新アルバート通りのOBED BUFETに行っていました。増補改訂版を出すにあたって読み返していたら、なんとこのお店が紹介されていたのに後になって気が付きました。非常におすすめです。と思ったら閉業??
初版『共産テクノ』を出した後に弊社から『ウクライナ・ファンブック』を出した訳ですが、本書のウクライナコーナー。初版出した時とウクライナに対する思い入れが違います。極々僅かですが、ウクライナの立場からしたらあまり宜しいとは言えない微妙な表記があり、そういった部分を修正しています。
エストニアのTornado。
本書の目玉の一つ、古今東西のロシア・アヴァンギャルド風の音楽ジャケットを集めたコラム。実に30ページもあるので、正直最初は多すぎるのではないかと思ったぐらいなのですが、この部分がかなり好評頂いています。増補改訂版でもそのまま。
ここで掲載されているもの以外にも数多くあるでしょうし、制作者がロシア・アヴァンギャルドを意識していなくても、結果的に影響を受けているジャケットは更に無限にあるでしょう。
本書の中でも特に日本でも知名度が高いラトヴィアのZodiac。
ソ連時代、ほぼ全ての音源は国営レコード会社メロディアからリリースされていたのですが、そこからは出せなかった「マグニートアルバム」と呼ばれた自主制作テープ。こういったものがアンダーグラウンド・インディーズ・シーンでやり取りされていました。
さてお待ちかね。ここからが「増補」の部分です。まずは「共産テクノWest支部」。つまり、冷戦期西側諸国で作られていた共産趣味的テクノです。特にゴルバチョフが人気で、彼にちなんだ曲が沢山作られていた様です。
本書著者の四方さんの様に、ソ連出身ではないのに、ソ連のテクノに魅せられた人たちが結構います。アルゼンチンのEl Club de la Computadoraも同様で、実はペロニスタでスラッシュメタルバンドにいたりもするのに、「共産テクノ」を再現している人たちです。彼らにインタビュー。
そして「増補」最大の目玉は「ロシアン・ハードベース」。『共産テクノ』を2016年に出した後になってから、世界的に大ブームになったロシア産電子音楽です。
担当編集者もDJ Blyatman & длб – Kamazにドハマリしたぐらいで、非常に中毒性が高いです。
ソ連時代から続く、ロシアの不良達のアディダス愛が重要なシンボルとなっており、ビデオクリップでもよく共産趣味的なイメージを用いています。
そこで四方さんにこのロシアン・ハードベースを文化人類学的に徹底調査してもらいました。
活字で詳細に述べられるのは本邦初と見られます。この論考だけでも、初版を持っていても買い直す価値があるぐらいです。
длбだけでなくDJ Blyatmanなど面白いアーティストが沢山登場。今現在も進行中で目が離せません。いずれ『ロシアン・ハードベース・ガイドブック』として出版できるぐらいのストックになるでしょうか?
という感じで『共産テクノ ソ連編 増補改訂版』の要所を手短に紹介しました。
長期間、入手困難だった本書ですが、更に魅力を増して復活しています。32ページも増えたのに、元の値段から100円しか変わっていません。オールカラーで256ページもあるのに2300円です。
増補改訂版だし、永久保存版と言っても良い豪華な内容。これ入手困難になる事はないと思いますが、そうならない内にゲット! 数年後に「増補改訂版」の「増補改訂版」も出ないと思いますし……。