脇田涼平さんによる『Djentガイドブック』が完成したので、中身を紹介します。カバーはこの様な感じです。

帯を取り外したところ。抽象的で近未来的な雰囲気。ロゴはDjent界隈でよく見かけるようなモチーフ。

Djentはオリジネーターが当初否定的なコメントを残したことから、「ジャンルではなく、演奏法」という意見が多かったですが、ここ数年で結局事実上ジャンルとして定着したと言えるのではないかと思います。

そのことなどについて、まえがきで詳しく述べました。そのまえがきはこちらで全文読めます。

アメリカ、ヨーロッパ、オセアニア・アジアの3章に別れており、まずはヨーロッパ。

本書のトップバッターを飾るのはスウェーデンのMeshuggah。必ずしも本人たちはDjentの創始者となろうとしていた訳でも、Djentというジャンルを作ろうと狙っていた訳でもありません。

しかし彼らに影響を受けたフォロワーの一大集団が結果的にDjentと言われるサウンドを体現。

プロフィール以外にも代表作をそれぞれ0.5ページ使って詳述。

イギリスのFellsilent、Monuments、TesseracTは同じメンバーから枝分かれしていったので、まとめて紹介。

実はミルトンキーンズという郊外の、開発当時としては近未来的なイメージを狙ったニュータウン出身。

無機質でガラス張りだったり、コンクリート打ちっぱなしのフューチャリスティックな建築物が多く、そういった環境で育った故に、Djentのサウンドやジェケットデザインにも反映されたのではないかと推測。

各章末にはよりマイナーなバンドの音源を紹介。

Djentは境界線が曖昧で、左側に載っているのはマスコアとも言われる事が多い、SikTh。大きく取り上げています。

右はミャンマー出身でスコットランドで活動するSithuAye。インタビューで日本のアニメに対する愛情を惜しみなく語ってくれています。

Humanity’s Last Breathにもインタビューし、特にサウンドが重視されるDjentでの機材状況について詳しく答えてもらいました。

SithuAyeだけでなく、沢山のDjentバンドが日本のアニメやゲーム愛好家で、よく日本語の曲やフレーズが登場します。

Djentと日本オタク趣味との親和性についての解説コラム。

Djentの中でも特に代表的なバンドと言われるPeriphery(本人たちは否定したが)。

そのリーダーのMishaの父親はモーリシャスの財務大臣を務めたこともあるそうです。

名家の出身だからこそ、緻密で複雑な曲を作曲・演奏できるだけの頭脳があり、そしてそれを体現する機材を購入する所得があるという事でしょうか。

Peripheryの音源については普段の2倍のスペースを取って解説。

アメリカのDjentバンドは多く、Animals as Leadersも大きく紹介。

VolumesやMonuments、Aviations、Beingなどあまりにもシンプル過ぎるバンド名が多いDjent。これだと非常に検索しづらいですね。そこで他の言葉もヒットしてしまうランキングも用意。

Djentはサウンドが肝。音が悪いDjentなんてこの世に存在してはならないほど。そこでDjent界で著名なプロデューサーを紹介。

Djentは境界線が曖昧で、本書の副題は「プログレッシヴ・メタルコアの究極形態」です。

メタルコアやデスコア、デスメタルなどとも密接に絡んでいます。

左はテクニカルデスメタルとも言えるEntheos、そして右はインダストリアル・デスメタルとも言えるFear Factory。

こういった近隣ジャンルの間に位置しながら、Djentに大きく影響を与えたり、Djent要素が垣間見られるバンドも紹介しています。

Djentはインストゥルメンタルもありで、実際一人で自宅の部屋でDTMを駆使しながら音楽を発表している人たちが大勢います。

またバンドマンでも演奏方法をYouTubeで紹介したりする事が多いです。

Djent YouTuberのコラムも。

Djentは世界的に広がっており、インド出身のSkyharborにもインタビューしました。

中国や台湾、香港、韓国など東アジアからも良質なバンドが沢山登場してきています。

数学が得意、凝り性、高所得、住宅環境が悪く宅録DTMが浸透している、など色んな要素が影響を与えていると見られます。

今回は日本のバンドとの絡みも充実させました。Promptsの松野さんのインタビュー。

Sailing Before the Windのビトクさんのインタビュー。『デスコアガイドブック』出版時のトークイベントにも出てもらいました。

Sailing Before the Windのダイスケさんのインタビュー。

これからの日本のシーンをリードしていくバンドたちの紹介。

ざっと駆け足で『Djentガイドブック』を紹介してきました。脇田さんは既に『世界過激音楽』シリーズで『ブルータルデスメタルガイドブック』と『デスコアガイドブック』を出版されています。

『ブルータルデスメタルガイドブック』はあいにく市場在庫を残すのみとなっていますが、『デスコアガイドブック』はまだ在庫があります。

『デスコアガイドブック』で登場するBorn of OsirisやVeil of Mayaは『Djentガイドブック』でも登場しており、両ジャンルとも密接な関係があることが分かります。

『デスコアガイドブック』も『ブルータルデスメタルガイドブック』みたいに買いにくくなるかもしれませんので、まだ買っていない人は是非これを機に『Djentガイドブック』と一緒に買ってみてください。

そして実は『Djentガイドブック』とほとんど同じタイミングで他社のP-Vineから『PROG MUSIC Disc Guide』が出版されました。

Djentとプログメタルは似たようなもので、Djent自体がプログ音楽から多大な影響を受けています。

実は『PROG MUSIC Disc Guide』の編者のyu-kiさんと、『Djentガイドブック』の執筆者の脇田さん、そして編集者の私(ハマザキカク)が昨日対面を果たしました。

お互いその場で出来上がった本を交換。左が脇田さん、真ん中がハマザキカク、そして右がyu-kiさん。

当初懸念していたよりも被っているバンド・音源はかなり少なく、1割もないぐらいかもしれません。

それどころか、お互いがお互いを補う様な形になっていると思います。

Djentからプログメタルやプログ全体に遡って関心を抱いた方は『PROG MUSIC Disc Guide』で、より広範囲のバンド達を知ることができます。

逆に『PROG MUSIC Disc Guide』の中でも特に激しいメタルコア系のバンドを深く掘り下げて知りたいと思ったら『Djentガイドブック』でより分かります。

奇しくも同じタイミングで出た『PROG MUSIC Disc Guide』と『Djentガイドブック』。

これはこのジャンルがこのタイミングで一気に盛り上がってきているという事を表しているようなものですね。

既に大型書店やオンライン書店で購入できる状態です。

是非、この際、2つ一緒に買ってみてください。