田辺寛さんによる『デスメタルチャイナ』が出来上がったので、中身を紹介します。
『世界過激音楽』シリーズもいよいよVol.12、そして各国・各地域特集としては第4弾です。
帯を取り外したところ。
袖には『中国抗日ドラマ読本』が。この本は中国で大変話題になりました。著者の岩田宇伯さんが寄稿しています。
本扉。惜しいですが、今回は408ページもあるので、オールカラーとはいかず。
アルファベットだけでなく、漢字の名前がある場合、簡体字と常用漢字の両方を記載するという親切設計。
中国全土から実に496ものバンドを紹介しています。
中国は完全にストリーミング社会に移行しており、メタルバンドの音源はフィジカルでは入手困難。
そこで中国語ができない人でもxiami、Doubanというストリーミングができるように説明しています。ほぼ全ての音源がインターネットで聴けます。
本書は各章を各地域で別けているのですが、北京だけは1990年代と2000年以降で別けています。
1990年代中国のハードロック、メタルシーンはほぼ全て北京と言ってもいいぐらいに集中しており、取り上げるアーティストがあまりにも多いのです。
Black Panther 黑豹という中国No.1のロックバンド。実はインタビューを申し込んだところ、一度だけ応答があったのですが、その後、途絶えてしまいました。残念。
中国初のデスメタルとされる大ベテランNarakam。
世界的にも著名なTang Dynasty 唐朝。この手の音楽に詳しくない人でも知っている代表格ですね。
コラムで北京のライブハウスやレコードショップ特集。
Wacken中国大会で優勝し、ヨーロッパツアーも敢行したモダンメロデスDie from Sorrow。
右は中国伝統音楽とヘヴィメタルを融合させ、日本にも来日するなど世界的知名度を高めつつあるDream Spirit 梦灵。
ゴシック・メタルから更に進化して不思議なアンビエント・ミニマルウェーヴになりつつあるFall In Sex 秋天的虫子。
中国からもこうしたミステリアスで難解なアーティストが沢山出てきていることを意外に感じる人も多いかもしれません。
デスコアとしてはベテランの粋に達するFour Five 肆伍。世界的にはそれほど知名度はないかもしれませんが、世界レベルの水準。
日本人も西洋のモノマネが得意と言われましたが、その後、中国がパクリ大国と言われて久しく、それどころかオリジナルの技術大国に到達しています。
Jack Dannyというバンドは言われなければカリフォルニア出身と信じてしまうぐらいのアメリカン・ロック。
意外だったのが在中外国人メタルバンドがかなり多いこと。左はアメリカ人やドイツ人メンバーがいたRaging Mob。
そして中国メタル界での美女の多いこと。特にモデル並みのルックスのReady to Die。
中国は日本を遥かに超えるコスプレ大国ですが、化粧や衣装に気合い入りまくったRitual Dayというブラックメタル。
中国にはどうせメタルと言っても時代遅れのスラッシュぐらいしかいないんだろうと思われていそうですが、日本出身と見間違えてしまうほどのモダンなデスコアScarlet Horizon。インタビューもあります。
インドネシアなどに比べるとデスメタルはやや弱いですが、SuffocationならぬSuffocatedという名のベテランデスメタル。
中華人民共和国の北部には内モンゴル自治区がありますが、モンゴリアンフォークメタルが世界的に大人気。その中でもトップクラスのクォリティを誇ったTennger Cavalry。
非常に悲しいですが、リーダーがアメリカで客死。
中国は日本以上のガラパゴスで、世界的に例を見ない独自の進化を遂げた音を繰り出すバンドが多いですが、その中でも突出しているのがVoodoo Kungfu。なんと言っていいか分かりません。
そしてそのバンドにベースで参加していた蒲羽。元々Crackに在籍していて、今は清楚系に転身してソロ活動?
美女だらけの中国メタル界でも特に美人で、その見た目はアイドル・女優級。彼女のYouTubeチャンネルもあるので、顔を拝んでみましょう。
中国のメタルは2000年代から急激に発展したので、地域にバラツキがあります。その統計。
最も大成したメタルバンドと言っても過言ではない内モンゴリアン・フォークメタルコアEgo Fall。カバーの真ん中の人がヴォーカルです。インタビューもしています。
編集者個人的にはイチオシのNine Treasuresという内モンゴルのフォークメタル。メタルというよりまるでドリフターズみたいな軽快なメロディ。
中国語における音楽用語やバンドの漢字表記の辞典。これで中国のメタラーとも意思疎通できます。
中国と日本は不幸な時期がありましたが、その時代をコンセプトにしたバンドもいます。Black Kirinというメロデスは京劇を取り入れ、南京大虐殺をテーマに。
モダンでインダストリアルなミドルテンポ・フォーク、オルタナティヴとしか言いようのないThe Samans。メロディが素晴らしい。
Ready to Dieや蒲羽でも述べましたが、とにかく美人が多い中国メタル界。その数は数え切れないほど。その特集。
中国というとインチキ臭くて、不潔で、いい加減でみたいなイメージがまだ日本ではあると思いますが、そこから掛け離れたオシャレ・耽美的なDeep Mountainsというもはやメタル色ゼロのポストロックみたいなバンド。
世界的に見るとDSBM大国の中国。「鬱・自殺ブラックメタル」という意味ですが、中国に対してちょっとガサツで粗野なイメージしかないと意外に思えるかもしれません。
弊社刊行『デプレッシヴ・スイサイダル・ブラックメタル・ガイドブック』でもかなりの中国のバンドを紹介しています。
来日経験もあり、世界的にもトップクラスの人気を誇るZuriaake。
国際都市・魔都と言われながらも北京に比べて後塵を拝してきた上海のライヴバーやレコードショップ特集。また雑誌『重型音楽』に関するコラム。
左はZuriaakeと並ぶDSBM大御所Be Persecuted。
そして日本でも絶大な支持を得るザクザクスラッシュ、Explosicum。ひたすら速く、ルックスや雰囲気も本場そのもの。
この『デスメタルチャイナ』もいよいよ制作の佳境を迎えていた矢先に武漢で新型コロナウィルスが発生しました。
右はそんな武漢でHellfireという名前で活動するスラッシュメタル。コロナ発生前ですが、インタビューもしています。
中国がロックを容認し始めたのはそんなに昔ではありません。何しろ70年代末期まで文化大革命でそろどころではありませんでしたからね。
その後も、某大事件あり。
したがって海外のバンドが中国で公演するのも限られていました。
今となっては日本をスルーして中国のマイナーな都市まで訪れるツアーを組む欧米バンドが沢山。
今年になってからはコロナで軒並み中止になってしまいましたが。
そんな海外メタルバンド中国公演の年表。
北京や上海だけでなく、内陸にもメタルが波及。これは重慶出身の世界的なレベルに達するパワーメタルBarque of Dante。インタビューもしています。
ちなみに弊社刊行『重慶マニア』も合わせて御覧ください。重慶を訪れた時、メタラーっぽい人は一切見かけませんでしたが……。
重慶どころか、雲南省の少数民族によるClose to Abyssというゴシックメタル。
冒頭でも述べましたが『中国抗日ドラマ読本』の岩田宇伯さんによる武漢コロナウィルスと中国ロックに関するコラム。
日々、中国のテレビを見続けている岩田さんならではなの、プロパガンダ分析などが秀逸です。
中国メタルに関心がある人で知らない人はいない『Chinese Rock Database』。この本の著者をこのサイトの運営者だと誤解する人も出てくるほど。
その運営者である香取さんと、本書著者の田辺さんがミャンマーで直接会って、インタビュー。
さて本書もいよいよ巻末。オムニバスやプロジェクトアルバム、スプリット作品を紹介。
『デスメタルアフリカ』『デスメタルインドネシア』『デスメタルコリア』と来て、いよいよ『デスメタルチャイナ』。
ある意味、一番興味深い謎現象が多く、色んなジャンルに満遍なくハイクォリティーのメタルバンドが割拠しているにも関わらず、世界的に全く無名のシーン。
中国人でさえ知らない事ばかりが沢山載っているはずです。
本書の中国語を弊社刊行『中国遊園地大図鑑』の関上武司さんが徹底的にチェックしてくれました。
メタルには関心がないのに、全神経集中して校正してもらい、かなり大変だったと思われます。
さてページ数が多く、全てのコンテンツを紹介しきれませんでした。
ゲラを読み通すのにも一週間以上掛かるほどの膨大な情報量。
何度も何度もレファレンスとして引っ張り出してくる必要があるアーカイヴ。
永久保存版なので、立ち読みとか借りるとかは無理。
このボリュームで2500円と出血大サーヴィス状態なので、ぜひ買ってみてください。