突然ですが『亡命ハンガリー人列伝 脱出者・逃亡犯・難民で知るマジャール人の歴史』を出版します。

著者はロシア科学アカデミー・スラヴ学研究所研究員の木村香織さんです。

主な論文に:
「コミンフォルム派ユーゴスラヴィア人政治亡命者たちのハンガリーにおける活動─ハンガリー政府との関係と反チトー政治キャンペーン 1949年~ 1954年─」(露文)
「1940年から 1950年代におけるハンガリー・ユーゴスラヴィア外交関係」(共著、露文)
「ハンガリー・ユーゴスラヴィア国際関係における少数民族問題」(露文)

1848年革命・二重君主国解体とトリアノン条約による領土割譲
世界で2番目のソヴィエト政権・日独伊三国同盟加盟・1956年革命
に破れ続けてきたハンガリーは、時代の節目ごとに多くの偉大な亡命者を輩出した

61人の著名な亡命ハンガリー人の
軌跡を辿ることで激動の歴史を振り返る

ざっと帯とチラシに載せた有名所を紹介すると以下の通りですが、

■ラーコーツィ・フェレンツ二世 墺に反旗を翻しトランシルヴァニア公名乗るも敗北、オスマン亡命
■コッシュート・ラヨシュ 1848年革命で敗北後、アメリカで人気に。後に「ドナウ連邦構想」まとめる
■クン・ベーラ ロシアに続く世界第二の赤色革命政権ハンガリー・ソヴィエト共和国の指導者
■ホルティ・ミクローシュ 海軍提督からハンガリー王国摂政に就任、ドイツ圧力受けつつ連合国と和平探る
■ロバート・キャパ 国際写真家グループ「マグナム・フォト」結成した世界最高のフォト・ジャーナリスト
■アーサー・ケストラー スターリニズム批判や『真昼の暗黒』で知られ、各地を放浪、最後は自殺
■バルトーク・ベーラ コダーイと共に『ハンガリー民謡集』出版、「音楽人民委員」でもあった民族音楽学の祖
■カール・ポランニー オーストロ・ファシズムから英亡命、『大転換』で社会経済学者として世界的名声
■カール・マンハイム 大衆社会論に影響を与えた『イデオロギーとユートピア』が知識社会学の基盤に
■ラーコシ・マーチャーシュ 政敵ライクを処刑し、ミニスターリン化するもスターリン批判で失脚
■プシュカーシュ・フェレンツ 1956革命時にスペインからの帰国命令を拒否した有名サッカー選手
■ミンツェンティ・ヨージェフ 1956革命時のソ連軍侵攻から15 年間、アメリカ大使館に匿われた枢機卿

他にもボールペンを発明したビーロー・ラースローやビタミンCを発見したセント=ジェルジ・アルベルト等
世界的な業績で知られる有名なハンガリー人を数多く紹介しています。

また必ずしも厳密には「亡命」とは言えなくとも、ハンガリーで生まれ、活動拠点を外国に移して大成した人たち:

■ルカーチ・ジェルジュ 赤色テロルの理論家、赤軍指揮官から『歴史と階級意識』で東欧代表する思想家へ
■ヘルツル・テオドール ユダヤ人独立国家建設目指し、「世界シオニスト協会」設立、死ぬまで議長の座に
■ジョン・フォン・ノイマン 人類史上最高のIQ300 頭脳を持ち、マンハッタン計画にも参加した数・物理学者
■ジョージ・ソロス 稀代の投機家、ポパー提唱「開かれた社会」実践するもオルバーンから睨まれる

等も紹介しています。ハンガリーというと一般的には今では東欧(中欧)の小国、
というイメージが強いかもしれませんが、世界史に多大な影響を及ぼしたと言えるでしょう。
そしてハンガリーが生み出した有名人が、多くの割合で亡命を体験しています。

亡命ハンガリー人それぞれの人生の歩みを辿ることで、壮絶なハンガリー近現代史に迫ります。
周辺国や大国からも大きく影響を受けているので、特にハンガリー史に関心がある方々だけでなく、
世界史、東欧史全般に関心がある方々に興味を持ってもらえる内容です。

ハンガリーを取り巻く国際情勢などを解説したコラムも各種用意しています。
■オスマン帝国のハンガリー人亡命者コミュニティーがあった街
■トリアノン条約によるハンガリーの損失
■トリアノン条約とハンガリー系少数民族たち
■原子爆弾開発に関わったユダヤ系ハンガリー人 亡命学者たち
■第二次大戦におけるスウェーデンの立場とラウル・ワレンバーグの活躍

どうにか352ページに収めたものの、文字数は約35万字と相当な大著です。
A5判2600円で、4月10日頃までには店頭に並ぶ予定です。