突然ですが大嶋えり子さんによる『ピエ・ノワール列伝 人物で知るフランス領北アフリカ引揚者たちの歴史』を出版します。

『世界引揚者列伝』の第一弾です。「ピエ・ノワール」とはフランス領北アフリカから引き揚げてきた人たちの事です。

デリダやカミュ、アルチュセールなどの第一級の思想家や文学者、
そしてイヴ・サン=ローランやオランジーナなど、
日本では代表的な「フランス企業」と思われている会社の創業者もピエ・ノワールです。

■カミュ 『ペスト』や『異邦人』を記し、サルトルとも論争した実存主義文学の巨匠
■デリダ 脱構築のポスト構造主義でフランス現代思想をリードしたユダヤ系カリスマ
■イヴ・サン=ローラン クリスチャン・ディオールに認められた超一流デザイナー
■オランジーナ社 フランスではコカ・コーラを越える人気を誇る国民的ジュース
■アルチュセール、ジャック・アタリ等の思想家
■エンリコ・マシアス、パトリック・ブリュエル等の歌手
■ジャン・レノ、クラウディア・カルディナーレ等の俳優
■ドヴィルパン、メランション等の政治家
他にもダニエル・オートゥイユ、ジャン・ベンギギ、
ジャン=クロード・ブリアリ、アラン・バディウ、カステルバジャック等

そもそもド・ゴールが再登板し、第五共和政が始まったのも、
アルジェリアに住むフランス人と密接に関係しており、
フランス現代史を知る上で、「ピエ・ノワール」は重要なテーマであるにも関わらず、
日本で取り上げられることはあまりありませんでした。

専門の本となるとこの『ピエ・ノワール列伝』が初です。

アルジェリア独立戦争後に本土に引き揚げてきたフランス人達
モロッコ、チュニジアを含めると150万人にも登り、
各界で一流の人材を輩出している

「黒い足」を意味する
「ピエ・ノワール」と呼ばれる
111人の足跡
を辿る事で、
知られざるフランス現代史に迫る

実際に人物紹介だけではなく、ピエ・ノワールやフランス、
そしてアルジェリアの状況を各種コラムで詳しく紹介しています。

ド・ゴールを暗殺しようとしたOAS(秘密軍事組織)と「将軍たちの反乱」
フランス軍に処刑された独立派フランス人
フランス軍に協力したアラブ系「ハルキ」
独立後もアルジェリアに残った「緑の足」
極右「国民戦線」支持層

アルジェリアワイン、ピエ・ノワール料理などの充実したコラムも

著者は早稲田大学政治経済学術院で助手を務められている大嶋えり子さんです。

博士論文は『フランスにおけるアルジェリアの記憶の公的承認―1990年代以降の移民統合および国民的結合を促進する政策の観点から』です。

幼少期をフランスとベルギーで過ごされ、フランス語が達者なフランス現代史の専門家です。

ところで私ごとですが、編集者に携わった私(濱崎)も幼少期をチュニジアで過ごしました。

今でも心のふるさとは北アフリカにあり、本で登場するピエ・ノワールと心情が重なる部分が多くありました。

原稿を読んでいて地中海に照りつける日光、そして乾いた大地をよく思い出しました。

その様な背景もあり、個人的にはとても思い入れの深い企画です。

A5判並製288ページ、2300円+税で、大変読み応えのある本です。2月10日頃発売予定です。

フランス専門家、アルジェリア研究者、引揚者、帰還者、移民研究者、植民地研究者など多くのバックグラウンドの方々に手に取ってもらいたいです。