内藤智裕さんによる『メロデスガイドブック 世界編』が完成しました。2023年9月に出版した『メロデスガイドブック 北欧編』の続編です。二部作の後半なのでこれで完結です。当初は1冊のつもりで進めていましたが、やはり全世界のメロデスバンドは多く、オールカラーにする為に2冊に分冊化しました。

帯を取り外した状態です。『北欧編』は中世ヨーロッパイメージでしたが、『世界編』は滅亡寸前の近未来都市です。ヨーロッパ以外のメロデスでは、多くのバンドが核戦争後のポストアポカリプス的なイメージを採用しているバンドが多いです。

袖に載せているのは『ゴシックメタル・ガイドブック』です。2024年5月2日にDOMMUNEで『メロデスガイドブック』と『ゴシックメタル・ガイドブック』の合同番組を開催しました。

本扉。

まえがきと目次です。同じ内容がこちらの書誌データでも見られます。

ヨーロッパ、アメリカ大陸、その他の三章の構成になっています。

他の『世界過激音楽』シリーズでは地域解説を章扉の中に数百文字で載せている事が多いですが、この『メロデスガイドブック 世界編』ではそれよりも遥かに多くの文字数を費やして詳述しています。当初は更に長かったのですが、これでも短縮しました。メロデスは地域それぞれの特徴がかなり濃厚に出ています。

グラインドコア、ゴアグラインドの元祖として認識されているCarcassですが、メロデスの元祖とも評価されています。しかしその一方でそれに対する異論も出ており、所謂北欧系の本流のメロデスとは異質とも言われています。

メタル大国ドイツからはNight in Gales。

ブラックメタル以外だとあまりメタルがパッとしないフランスからはAephanemer。インタビューもしています。

クラシックギタリストとしても有名なメンバーを要するStortregn。インタビューもしています。

もちろん随所でメロデスに関するコラムを用意。こちらは「ベルギーのハードコアシーンにも影響を与えたメロデス」というコラムです。

「禁断のトリビュート企画 ジブリmeets メロデス!?」のコラムと「南欧」の解説。

ロシア文化をこよなく愛することが分かったイタリアのDark Lunacy。

マルチプレイヤー率いるモダンメロデスのDisarmonia Mundi。

キーボードを取り入れ、プログレッシヴ・ロックからも影響を受けているSadist。インタビューあり。

独特なデスメタル、ブラックメタルシーンの中でもトップクラスに位置するNightfall。インタビューしています。

来日経験があり、日本でも人気のNightrage。

一見アンダーグラウンドで謎に包まれているロシアや東欧のメロデスシーンですが、非常にレベルが高いバンドが多く潜めいています。日本ではほぼ全く知られていない良質なバンドを沢山紹介しています。

ロシアのモダンメロデスSunless Rise。

ロシアは世界一のペイガンフォークメタル大国ですが、その至近距離に位置するメロデスも非常に層が厚いです。またシンフォニック系、パワーメタル系、ダンスメタル系も数多く活動しています。

同様にウクライナやベラルーシも、世界的にもっと知られても良い格好いいメロデスバンドが数多く存在しています。

あまりビッグネームはいませんが、ポーランドやチェコ、スロヴァキア、バルカン半島もメロデスの宝庫。

お次はアメリカ大陸。特にアメリカはブルータルデスメタルやメタルコアが盛んなイメージが強く、メロデスはあまりパッとしない印象ですが、決してそういう訳ではありませんでした。

残念ながらメタル界有数のギークとして知られるヴォーカルが亡くなってしまいましたが、アメリカのメロデスを代表するThe Black Dahlia Murder。

反ユダヤ主義、白人至上主義という変わり種のNSメロデス、Arghoslent。

ブルータルデスメタル大国アメリカでブルータル・メロデスを実行していたVehemence。インタビューあり。

カナダのケベックはテクデスやブルータルデスメタルが盛んですが、元々デスメタルから紆余曲折を経てメロデスといって良い境地に至ったKataklysm。

OSDMリバイバルが叫ばれて久しいですが、オールドスクール・メロデスのDungeon Serpent。インタビューしています。

まだメロデスという概念が確立される前から北欧勢と同時期にメロディを取り入れていたメキシコのCenotaph。

さて最終章はアジア、オセアニア、中東、アフリカです。ある意味、本書で最も個性的で面白いバンドが多く存在するエリアです。欧米と比較して相対的に僻地、辺境故にそれぞれの国の文化を取り入れたガラパゴス的なバンド、各国のドメスティックなメタルシーンで国民的ヒーローになっているにも関わらず、世界的には無名のバンドが多くいます。

南半球のオーストラリア出身の、北欧より寒々しいBe’lakor。

ナゴルノ・カラバフ戦争のイメージが強いアゼルバイジャンのモダンメロデスSilence Lies Fear。アルメニア系のSystem of a Downについてどう思っているのか質問したインタビューがあります。

モロッコやリビア、アルメニア、レバノン、バングラデシュ、モルディヴ等、メタルが全く盛んとは言えない国々で活動するメロデスバンドを大量に発掘しています。しかも意外とレベルが高いです。

メロディは日本人以外のアジア人の琴線にも触れるのか、中国、台湾、韓国にも多くのメロデスバンドがいます。

『デスメタルチャイナ』や『デスメタルコリア』でも多くのメロデスバンドを紹介しています。

最後の国は日本。意外かもしれませんし、案の定といえるかもしれませんが、実は日本はメロデス強国。メロデス大国とまでは言い切れないかもしれませんが、アメリカとヨーロッパを除いたら世界でも最もメロデスが盛んです。意識的に増やしたつもりは全くありませんでしたが、結果的に32ページも費やされています。

東日本を代表するブルータルメロデスIntestine Baalism。滅多にインタビューに応じてくれないので有名ですが、本書では奇跡的に掲載しています。

西日本を代表するモダン、フューチャー、トランスメタルBlood Stain Child。インタビューも掲載しています。

『世界過激音楽』シリーズでもここまで日本のバンドが紹介されている本はありません。

日本で独自に進化した「同人メタル」まで誕生するレベル。

ざっとダイジェストで紹介しました。『北欧編」と合わせてメタラー必読文献。

もしかしたら2000年代以降にメタルに目覚めた人の多くが、最初に聴いたのがメロデスかもしれません。

大学のメタルサークルバンドで最もコピーされているのがメロデスと言っても過言ではないでしょう。

メタルへの入口でもあり、通過点でもあり、出口と言って良いメロデス。

ブラックメタルやブルータルデスメタルの様な強固なアンダーグラウンドシーンの結束力みたいなものはあまりなく、またその時代ごとの流行り廃りが激しく、フォークメタルやメタルコア、パワーメタル、メロディックブラックメタルと相互作用が激しく、境界線が曖昧です。全世界でバラバラで発展してきているので、その全体像は実は極めて把握しにくかったのではないかと言えます。

そんなある意味掴みどころのないメロデスがこの2冊で深く理解できます。

なお2024年5月に出たばかりの新刊『テクニカル・デスメタル・ガイドブック』では、例えばアメリカだとInferiやAllgeaonなどメロデスと至近距離いるどころかクロスオーバーしているバンドも複数おり、合わせて読むと多角的な見地から実像を理解できます。

冒頭で紹介した『ゴシックメタル・ガイドブック』で出てくるゴシックメタルバンドでも元はと言えばメロデスだったSentencedやAmorphisなどがゴシックメタルの視点から紹介されています。メロデスをより深く、正確に理解する為にはこれらの4冊は必読と言えます。

ここでは紹介していませんが、『ヴァイキングメタル・ガイドブック』や『Djentガイドブック』『スウェディッシュ・デスメタル』『オールドスクール・デスメタル・ガイドブック』などもメロデスが好きなら読んでおいて損はないです。『世界過激音楽』シリーズを全部抑えれば、デスメタル博士になれます。

『メロデスガイドブック 世界編』は既に多くの大型書店やネット書店で販売が開始されています。著者の内藤さんのサイトから買うと特製ステッカーも付いてきます。サイン入りでも購入できます。

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