増根正悟さんによる『チェコじゃないスロヴァキア』が完成したので、中身を紹介します。

この書名は実はダジャレではないのですがあまりにも「チェコスロヴァキア」というフレーズが脳にこびりついてしまっている為、否定形にするだけでなんとなくダジャレに思えてしまいます。

なお副題の「中欧の中央」はダジャレです。

チェコは有名ですが、スロヴァキアと言われるとよく分からないというところから、「チェコとどう違うのか?」という切り口にしました。スロヴァキアのことが分かるだけでなく、チェコのことも分かります。

帯を取り外した状態。スロバキアの旗をモチーフにしています。

まえがきと基本情報。まえがきと目次はこの書誌データのページでも見られます。

さてここからが第1章スロヴァキアとチェコの比較。そしてまずは首都の比較。

プラハ城とブラチスラヴァ城などを紹介。

国旗の由来の比較。実はスロバキアの旗はスロベニアの旗と似ているのですが、中に「キ」が入っているのがスロバキアと覚えると良いです。

工業国と思われているチェコに比べて、スロヴァキアは農業国と思われているフシがありますが、実は現在は大差がありません。

それどころかスロヴァキアは人口あたりの自動車生産台数が世界一です。

スロヴァキア製の紹介コーナー。オートバイや小型飛行機でも知られています。

第3章は観光です。スロヴァキアのシンボルであるタトラ山脈など。

スロバキアは人口当たりで世界一城の数が多いようです。

沢山の城があります。

チェコはおとぎ話に出てきそうなかわいらしい街並みで知られていますが、スロヴァキアも劣りません。

チェコスロヴァキア時代は共産主義だったので、このラジオ局の様な共産主義建築も多く残っています。

共産趣味者にとってノスタルジックな建物が沢山建っています。

実はブラチスラヴァはウィーンと目と鼻の先。鉄道では1時間の距離です。

プラハよりもウィーンやブダペストにより近く、まさに「中欧の中央」。スロヴァキアを拠点に中欧周遊旅行した方が効率が良いというコラムです。

第4章は歴史。

スロヴァキア語の基礎を作ったシュトゥールなど。

チェコスロヴァキア建国の礎を築いたチェコスロヴァキア軍団やスロヴァキアの英雄シュチェファーニクなど。

第二次世界大戦時、スロヴァキアは事実上ナチスの「保護国」に置かれました。なおその時、チェコは「保護領」。

日本と同じ枢軸陣営にいたので、大島駐ドイツ大使が当時のスロヴァキアの大統領ティソと面会。

戦後は共産主義陣営に組み入れられてしまいます。プラハの春とその時活躍したドゥプチェク。日本の教科書で唯一登場するスロヴァキア人です。

冷戦体制の崩壊とビロード離婚。

スロバキア時代になってから。そして右ページは、実は今現在のスロバキア領域で活動していた有名なハンガリー貴族の話。

第5章は対外関係です。スロヴァキアと近隣諸国や諸外国との関係性、少数民族などについて。

実は以前、スロヴァキアは「上部ハンガリー」と言われていました。スロヴァキアはチェコだけでなく、ハンガリーとの関係性が非常に重要です。

第一次大戦後にチェコスロヴァキアが建国されたわけですが、その時に領有していたポトカルパツカー・ルス。実は今現在はウクライナのザカルパッチャなのです。

さてこちらが今、ロシアによる侵略で苦しめられているウクライナとスロヴァキアの関係など。

右ページは日本とスロヴァキアの関係について。

スロヴァキアがよく間違えられるスロヴェニア。全く違う国なのですが、無関係というわけではなく、意外と色んな共通点があります。

「スロヴェニアじゃないスロヴァキア」として解説しています。

スロヴァキアは大量の移民を送り出しており、有名なスロヴァキア系アメリカ人が沢山います。

アンディ・ウォーホルは両親がルシン系です。アンジェリーナ・ジョリーもルーツを辿るとスロヴァキア系。

第6章は食文化と酒文化。

おいしそうですね。

チーズや居酒屋のつまみなど。

スロヴァキア発祥のトルジェルニーク。

チェコは世界一のビール大国ですが、さてスロヴァキアのビール事情はというと?

実はスロバキアでも生産されているトカイワイン。ワインは著者の増根さんの専門分野なので非常に詳しい解説。

スロヴァキアで愛される商品。

第7章は文化。

スロバキアの最大の特徴はフォークロアとも言われています。

スロヴァキアポップス。チェコスロヴァキア時代から人気の歌手も。

ロックやパンク、メタルなど若者向けの音楽も紹介。

ヒップホップやジャズ、オペラの分野で活躍するスロヴァキア人。

チェコはアニメで知られていますが、スロバキアのアニメについて。

「なぜかチェコだけが脚光を浴びる」の見出しからも悲痛な叫びが聞こえてくるスロヴァキアのサッカー事情。

著者の増根さんが熱く語られています。当初の原稿が大幅文字数オーバーでだいぶカットせざるを得なくなりましたが……。

有名なテニス選手達。

チェコの影に隠れて、いまいち何が特徴だったのかが分かりにくかったスロヴァキア。

この本をきっかけにチェコファンもスロバキアに目を向けて欲しいですね。

また天邪鬼気質な人や判官贔屓傾向がある人にとっては、むしろスロヴァキアの方が好きになってしまうかもしれません。

「マイナー国」というと北マケドニアとかモルドバ、マルタ騎士団など逆にそのことで有名な国が多いですが、そういう時にでさえあまり名前が上がってくる事がない「盲点国」とも言えるスロヴァキア。

そんな世界史・地理オタクにもオススメできる本に仕上がっています。

またこの『チェコじゃないスロヴァキア』は『ニッチジャーニー』シリーズの第3巻です。

第一巻は『ウクライナ・ファンブック』。ロシアによるウクライナ侵略が始まってから、大変注目されています。

ちなみにこの『ウクライナ・ファンブック』の著者の平野高志さんが、増根正悟さんと旧知の仲で弊社に仲介してくれました。

第2巻はミステリアスな国の『トルクメニスタン・ファンブック』。最近、テレビでもトルクメニスタンが取り上げられたみたいで、注文が増えてきました。

ぜひ同シリーズの他のラインナップもチェックしてみてください。マイナー国をアカデミックに解説したフルカラーのガイドブックとして人気です。