
突然ですが『鬼畜米英漫画全集』を出版します! 副題は『戦時下の反アメリカ・イギリス的表象』でシリーズ『風刺画で知る世界』の第一巻です。
著者は弊社から『戦前不敬発言大全』と『戦前反戦発言大全』を出されている髙井ホアンさんです。
憧れていたのに急に悪魔化無理と矛盾が発生し、一周回って笑える!
戦前、日本の一般大衆はハリウッド映画やアニメ、音楽などのアメリカ文化に親しんでいました。イギリスとは日英同盟を組むほどの親しい関係にありました。しかし徐々に両国と関係が悪化していき、戦争に突入してしまいました。
そこでアメリカ・イギリスに対する「鬼畜米英」という蔑称が生まれ、角が生えたルーズベルトやぶよぶよと太ったチャーチルなど、彼らを悪魔化したり、馬鹿にした漫画が沢山描かれていきました。
しかし直前まで彼ら「アングロサクソン」に対して「白人崇拝」的な憧れを抱いていた為、どうしてもその描写には無理と矛盾が発生してしまいました。
プロパガンダ 大国日本が 描いた 虚勢 痩せ我慢 負け惜しみ
本当は好きなのに、照れくさくて、それをひた隠しにしているツンデレ感が、鬼畜米英漫画から感じられます。
弊社からは『中国抗日ドラマ読本』や『中国抗日博物館大図鑑』『慰安婦像大図鑑』『北朝鮮アニメ大全』『中国テレビ番組ガイド』などで、実は憧れているけれども「ポリコレ的には敵国である日本」が、「悪者に描かれているけどカッコイイ」様子を紹介してきました。
そういったプロパガンダ的な作品からはシュール感やマヌケ感が感じられて笑えるのですが、実は日本も戦時中には同じようなことをやっていた訳で、全く近隣諸国の事を笑えません。
こうした鬼畜米英漫画を460枚以上集めて、その漫画に書かれた吹き出しやコメントも載せ、当時の日本・米英関係などの背景を交えて解説しました。
本体定価は2900円と少し高く感じられるかもしれませんが、A5判並製で480ページもあり、膨大な量です。
反アメリカ・イギリスの漫画を徹底的に集めた書籍は過去にはなく、漫画史料として貴重だと思われます。
・鬼畜米英漫画掲載誌リスト
・鬼畜米英漫画家人名辞典
・鬼畜米英新聞記事
・鬼畜米英アニメ
・鬼畜米英歌謡
等の『鬼畜米英大全』と言っても良いぐらいの、色んな切り口からの「鬼畜米英」にまつわるコラムも用意しています。
『戦前不敬発言大全』や『戦前反戦発言大全』でも網羅的な歴史アーカイヴで定評のある髙井ホアンさんの解説も秀逸です。
戦時下の一般市民の中でも、冷静に日本が敗北必至であることを見抜いていたり、アメリカやイギリスの民主主義体制の方が優れている事を確信していた人たちが沢山いたことが分かりました。
一方、漫画家達はどうでしたでしょうか? 戦後、「内心では戦争には反対していた」と述べたり、「漫画にもメッセージを込めて抵抗していた」という風に述べていた人たちもいたみたいです。
また本音を押し殺して、戦争協力に加担せざるを得なかった漫画たちもいたでしょう。
しかし時代の雰囲気に流されたり、むしろ率先して「鬼畜米英」という敵愾心を煽った漫画家達も多いように見られます。
またどことなくアメリカンコミック風の筆致の漫画もあり、「やはりアメリカが好きだったのではないか?」とギャップを感じさせてしまう漫画も多いです。
今でこそ日本はアメリカと日米同盟を結ぶほどの関係性ですが、戦争末期はアメリカだけでなく、地球上ほぼ全ての国を敵に回したほど孤立していました。
その時代の矛盾が『鬼畜米英漫画全集』には凝縮されています。
今、日本は世界一の漫画・アニメ大国と言われていますが、80年前にはこの様な奇妙な漫画を沢山作っていたという事も知っておいて損はないと思います。
2月15日頃までには書店に並ぶ予定です。

