ギュルソユ慈さんによる『トルクメニスタン・ファンブック』が完成したので、中身を紹介します。

帯を取り外した状態です。トルクメニスタンの旗をモチーフしています。

目次です。背景はヤンギカラ渓谷。

第1章は首都のアシガバット。未来都市と錯覚するほどの白亜の首都。

近未来的な建築物が建っています。また市内の地図も掲載。

豊富な天然資源によって、一風変わったデザインの建物や、豪華なモニュメントが沢山立ち並びます。

中立の塔や憲法の碑、そしてど派手な室内観覧車アレムなど、個性的な建築物の数々。

アシガバットのレストランも紹介。ガイドブックの類は一切出版されていないので、非常に貴重な情報です。

ここからはトルクメニスタンの各地域の見どころ。同国で最も有名なスポットと言っても過言ではない「地獄の門」。

「トルクメニスタンのラスト・サムライ」とも言うべきギョクデペの戦い。

リゾート開発が進むカスピ海沿いのアワザ地区。右は絶景で知られるヤンギカラ渓谷。

ここからは第3章の「民族」。テケ族やヨムット族など主要民族の解説。

トルクメン語についての簡易的な解説。

第4章の「伝統・芸術」。マルコポーロも称賛した民族のアイデンティティ、トルクメン絨毯。

いろいろな民族衣装の紹介。

女性や子供の伝統衣装。

世界中にコレクターがいることでも知られるトルクメン・ジュエリー。

円形天幕の移動式住居、ガラオイ。

トルクメン語による文学として最も代表的なマグトゥムグリ。

世界最古の「黄金の馬」、アハルテケ。

第5 章「生活・文化・社会」。右下はよく見ると、羊の頭です。また右上はウクライナのボルシチ、スラヴ系民族の料理も定着している様です。

ラップ、ヒップホップから国家賛美系まで、ポップス音楽を紹介。YouTubeなどで見られます。

「世界最速の馬の10m の後ろ足立ち歩き」「世界で最も大理石で覆われた建物が高密度に存在」「世界最多の人数が参加した自転車レッスン」など、ナンバーワンというよりオンリーワン的なことで、ギネスブックに沢山記録されているトルクメニスタン。

さて『ニッチジャーニー』シリーズでも一般的なガイドブックと異なる特徴として、評価が高い歴史の解説。特にトルクメニスタンの通史は、今まで日本の文献でまとめられた事がないと見られ、貴重です。

「オグズ登場〜ヒヴァ・ハン国成立まで」「17 世紀〜ロシア帝国まで」の部分。

第二次世界大戦やアシハバード大地震。

歴史の章末に基本的歴史事項をまとめた年表。そして第7章は「政治・経済」。まずは埋蔵量世界4 位、国家歳入の3 分の2 を占める天然ガス。ロシアに対する制裁で、今後、トルクメニスタンの天然ガスに対するニーズが急拡大しそうです。

今は過去のものとされている様ですが、トルクメニスタンといえばニヤゾフ元大統領が書いた「ルフナーマ」が、一部の趣味者からは有名でした。

「第二のペルシア湾」と評され、石油・天然ガス埋蔵されるカスピ海。

積極的中立政策を維持し、バランス外交を展開。

一般的にはあまり馴染みのないトルクメニスタンですが、実は色々と関係がありました。

第8章では丸々一章使って「対日関係」。トルクメニスタンに初めて足を踏み入れた日本人、福島安正についてなど。

旧クラスノヴォドスクで強制労働を強いられた日本人抑留者について。

なんと日本はODA 援助国3位、自家用車8割トヨタだそうです。

日本で育つトルクメニスタンのメロン、チャルジョウ農場の紹介。

なかなか行きにくいトルクメニスタンですが、第9章は「渡航情報」。

トルクメニスタンのおみやげの紹介。

ホテル、そしてトルクメン語会話帳。

トルクメニスタンはこの日本では最も情報が限られた国の一つです。そのトルクメニスタンに関連する邦文の参考文献を、学術論文も含めて、膨大に載せました。トルクメニスタンに興味を持った方々は、更にこれらの資料にあたって頂ければと思います。

さてここまでざっとダイジェスト的に紹介してきました。240ページもあるので、ここでは本書の魅力を十分に紹介し尽くせません。

図書館で借りても、借り出し期限内に読み切れる文量を超えていると思うので、是非ご購入を。トルクメニスタンは非常に情報が限られており、実際に世界でも最も、訪れる観光客が少ない国の一つの様です。

情報収集や執筆、撮影の難易度が極めて高く、この様な本が出るという事自体が奇跡と言えます。是非買い支えて頂ければと思います。

またこの『トルクメニスタン・ファンブック』は『ニッチジャーニー』シリーズの第二弾。

第一弾は『ウクライナ・ファンブック』。ロシアによるウクライナ侵略が始まってから、既に5刷りにまで達している話題の本です。

だいぶ高く評価を頂いており、この本を楽しんでもらえた方々には、国は違えど、『トルクメニスタン・ファンブック』も楽しんでもらえるかもしれません。

別のシリーズなのですが、『連邦制マニアックス』の『タタールスタンファンブック』も、実はほとんど同じシリーズと言っても過言ではありません。同じ様なスタイルで編集されています。なお、著者の櫻間瑛さんと櫻間瑞希さんに、『トルクメニスタン・ファンブック』の中身をチェックしてもらいました。

また『絶対に解けない受験世界史』の稲田義智さんにも、歴史面でチェックにご協力頂きました。

そして『地方都市マニア』の『重慶マニア』もお薦めです。エリアはだいぶ違いますが、編集スタイルや演出方法が共通しています。

実は今年2022年は日本トルクメニスタン国交樹立30周年です。また先日は新大統領セルダル・ベルディムハメドフが選出されました。ロシアに対する制裁で、今後トルクメニスタン産の天然ガスの輸出が更に増大すると見られます。今年はトルクメニスタンにとって節目の年となるかもしれません。

本当は本書の大部分はかなり前に出来上がっていたのですが、コロナによりだいぶ延期が続いてしまっていました。まだ一般の方々が同国を訪れる事はできませんが、今から本書を読むことで旅情に浸ってもいいかもしれません。