突然ですが『ソ連ファンク 共産グルーヴ・ディスクガイド』を出版します。著者はRed Funk提唱者でディスクユニオン所属の山中明さんです。

2019年3月1日に阿佐ヶ谷ロフトで開催された『ソ連歌謡ナイト』に出演して頂いた事がきっかけで、この企画に繋がりました。

元々は山中さんへの出演依頼を、本郷の雑貨屋さんミッテの渡辺さんに仲介してもらいました。

ジャズ・ロック・ポップス・ソウル・サイケ・プログレ・ディスコ等

国営レーベルMelodiyaがリリースした

ソ連版レアグルーヴをRED FUNKとして再評価!

1970〜80年代には鉄のカーテンの向こう側でも、西側諸国と同様にロック、サイケ、プログレ、ジャズ、ソウル、ディスコ、電子音楽等々、多種多様な音楽が生み出されていました。

また世界最大の国土を誇ったソ連の音楽シーンは、英米の地域差とは比較にならないほどバラエティーに富んだ音楽性を持っていました。

99%の録音物が国営スタジオで制作され、国営レーベルのMelodiya(及び前身レーベル)からリリースされていました。そしてそれら録音物には国家による検閲が行われ、全てが強固な監視の下に置かれていました。

またミュージシャンたちはほぼ例外なくアカデミックな教育を受けた、いわゆる音楽的サラブレッドでした。そんなアカデミックな音楽家が大勢集まり、サイケやプログレをプレイする、それだけで英米とは基本的なサウンドの骨組みが違うことがお分かりいただけるでしょう。

この特殊事情は実にワイド・レンジな音楽性に(期せずして)統一感を持たせ、Red Funkという一つのジャンルに括るに相応しい、独自の音楽シーンを創り上げることとなりました。

(※「Red Funk」という英語2単語では、ネット上での検索性が著しく下がり、商品名としての書名の機能性が十分発揮できなくなる為、『ソ連ファンク』になりました)

Melodiya 国営レーベルと同じ名を授かった伝説のジャズ・アンサンブル

VIA-75 グルジア伝承音楽を再解釈する孤高のジャズ・ファンク・グルーヴ

Vagif Mustafazadeh アゼルバイジャン伝統ムガムとジャズを融合した早世のピアニスト

Orizont ソ連でいち早くEW&Fを体現したモルダヴィアの先駆的ファンキーVIA

Nerija ソ連式必殺の盗作隠しや民謡改変爆発のリトアニア・ファンク

Raimonds Pauls VIA的サイケサウンドを体得しラトヴィアから世界的コンポーザーへ

Alexander Gradsky 西側カバー脱却、ロシア語ロック追求したソヴィエト・ロックの父

Yuri Morozov 当局に監視され自宅で実験音楽を録音し続けた赤きシド・バレット

Gunesh リズム・グルが先導するトルクメン・プログレッシヴ・モンスター

Oktava 劇物ファズを過剰摂取したリトアニアン・サイケデリア集団

Samotsvety, Pesnyary, Murad Kazhlaev, David Tukhmanov, Gaya, Iveria, Ariel, Modo等

また肋骨レコード、ソノシート付月刊誌クルガゾール、映画『ソヴィエト・ヒッピー』等のコラムも充実しています。

そして旧ソ連音楽やロシア音楽が好きな人でも結構ロシア文字を読むのが苦手な人が多いので、アーティスト名・音源名をロシア文字だけでなくローマ字を併記し、適宜、そのバンド名などの意味も付した親切設計です。

冒頭には分かりにくい音盤ラベルの見方を徹底的に解説し、ディスクレビューではフォーマットだけでなく、規格番号も載せました。

レコードコレクター、バイヤー、ヒップホップのサンプリングネタを探しているDJなどありとあらゆる人達が参照できる、ディスクガイドになっていると思います。

もちろんオンラインでRed Funkを聴けるサイトを多数紹介したり、ソ連音楽を理解する上で知る必要のある概念を解説した社会主義用語集なども用意。

更には弊社から先日出版された『共産テクノ ソ連編 増補改訂版』の四方宏明さん、『ソ連歌謡』の蒲生昌明さん、そして東京外国語大学でソ連/アゼルバイジャンジャズを研究されている佐藤大雅さん、また弊社の『ヴァイキングメタル・ガイドブック』などでも多数の言語をチェックしてくれた秋山知之さんの強力な支援を得て、記述内容だけでなく、言語面でも念入りにチェックを施しました。

そしてこの『ソ連ファンク』は『共産趣味インターナショナル』の第8巻目。担当編集者の共産趣味的センスの目も光らせています。

新世界レコードがあったぐらいで、日本にはソ連音楽ファンは多いのですが、意外と当時のレコードを体系的に知る事ができるディスクガイドは存在しませんでした。

ぜひこれを機に『ソ連ファンク』ファンになってみて下さい。

今回もオールカラーで208ページ、A5判と割と大きなサイズでありながら2300円と、世界的にインフレ傾向が見られるにも関わらず、様々な企業努力を発揮して、低価格を維持しました。

1月20日頃までには書店に並ぶ予定です。