Murder Channelの梅ヶ谷雄太さんによる『ハードコア・テクノ・ガイドブック インダストリアル編』が完成したので、中身を紹介します。

少し反射してしまっていますが、ICチップをモチーフにしたものです。『ハードコア・テクノ・ガイドブック オールドスクール編』は赤が差し色でしたが、こちらはインダストリアル編という事で近未来感を出す為に、緑色が差し色です。

帯を取り外したところ。書名が非常に分かりづらいという実験的なデザインです。ただ帯には大きく「インダストリアル・ハードコア・テクノ」と刻印されているので、書店で見逃すことはないでしょう。

本扉。各章の扉も基本的にカバーデザインを踏襲しているという統一的なデザイン。

まえがき。弊社の本書紹介サイトでも同じ文章が読めます。

インダストリアル編のインダストリアル・ハードコアの章扉。

ここからインダストリアル・ハードコア(テクノ)のジャンル解説が始まります。

どういう経緯で始まったのか、誰がパイオニアなのか、今現在はどういう状況なのか、そして将来どういう方向性に向かっていくかなどについて語っています。

その後に続くのが同ジャンルの代表的なアーティスト紹介。トップバッターはOphidian。

実はオールドスクール編が出来上がった後にインタビューに成功したので、インダストリアル編はオールドスクール編よりページ数が多くなってしまいました。しかしその価値があります。

The Outside Agency。彼らも大ベテランとして同ジャンルを代表するアーティストです。

彼らもオールドスクール編が出た後、応答があり急遽インタビューに応じてくれ、沢山の写真を送ってくれました。

同ジャンル最重要レーベルの一つThe Third Movementの看板アーティストN-Vitral。

[KRTM] インタビュー。実はこれを含め幾つかのインタビューは『デプレッシヴ・スイサイダル・ブラックメタル・ガイドブック』を執筆された英語学科卒の長谷部裕介さんにお願いしました。

担当編集者が個人的にかなり好きなTrippedもオールドスクール編の後にインタビューで掴まったアーティストです。Murder Channelがいかに世界のシーンとの強いコネクションがあるかが分かります。

特にDetestとのコラボでは顔面を殴られ続ける様なビンビンした鋼鉄音が刺激的です。

こちらも担当編集者のお気に入りDJIPE。彼はエキストリームメタルにも造詣が深く、好きなバンドにRivers of Nihil、The Mars Volta、Pallbearer、Frontierer等を挙げていました。

これだけでデスメタル界にも相当精通している人物だということが分かりました。特にこの場でFrontiererの名前を目にするとは思いもよりませんでした。

面白いビデオクリップでメインストリームでも人気があるDither。非常にわかりやすくインパクトがあり、このジャンルに馴染みのない人にもおすすめです。

若手で女性という稀有な存在として注目の的のKilbourne。グラインドコアバンドもやっていたりと、彼女もラウド・エクストリーム系との親和性があります。

インダストリアル・ハードコア・テクノだけでなく、クロスブリードなどにも影響を与えている、かなりブルータルなIgneon System。

リトアニア出身でもはやインダストリアル・ハードコア・テクノ希望の星のSomniac One。彼女のインタビューにも成功しましたが、女性という同ジャンルでの希少性を全く意識している様子もなく、非常に自然体な回答でとても好感を抱かせます。

また天然系なのかと思いきや、機材や作曲方法については読者に向けてかなり詳細に説明しており、非常にクレバー。

来日時にも大人気だったとの事です。

ここからはクロスブリード、ハードコア・ドラムンベースの章。特に担当編集者がお気に入りのサブジャンルでもあります。

デスメタルからの影響も汲んでますね。

ハードコア・テクノというジャンルの中でも最も重要なレーベルPRSPCTのボスThrasher。名前がメタルのサブジャンルみたいですが。

彼を抜きにしてこのジャンルは語れません。そして彼のインタビューにも成功しました。

笑ってしまったのが、初めて買ったCDがVanilla Iceの『Ice Ice Baby』でその次がMC Hammerだったいう事です。実は担当編集者と全く同じ。

その後、Bad Religionの『Generator』などに突き進んでいった所も似てて、親近感をいだきました。おまけに歳も同じで、同じ頃にイギリスに居たというのも同じで、驚きました(編集者が自分語りしてすみません)。

この章では重要アーティスト以外にもよりマイナーなアーティストによる重要な音源が沢山出ているので、レビューページを設けています。

おまけのコラムとして「ハードコア・テクノ/Raveミュージックとドラッグ」。このジャンルと切っても切れない関係にあるドラッグについて、外国人アーティスト達が自らの体験談を語ってくれたりと、実は非常に貴重な証言集と言えます。

「エクストリーム・ハードコア・テクノ」の章。正式な名称としては定着している訳ではないですが、スピードコアなど、ハードコア・テクノの中でも更に激しい一派をまとめて紹介しています。

レーベル殺人ヨットスクールを運営しており、ユーモラスなツイートでも人気のDJ C-TYPEさんによる「日本国内におけるガバからスピードコアに至るまでのミッシングリンクの考察」寄稿コラムも。

スピードコアのクラシック。Disciples of Annihilation。

Hong Kong Violenceのオーナーでもあり、UKハードコアからテラーコア、スピードコアまで幅広く手掛けるAkira。

他と違って、激しさの中にもグルーヴ感を強調しており、お気に入り。

実は両親が香港からオランダへの移民で、彼はその二世。変わった境遇でそのインタビューも面白いですね。

エクストリーム・ハードコアの名盤レビュー。

この本でも特に注目度の高い「日本ハードコア・テクノ史」。梅ヶ谷さんの人脈網をフル動員して、重要人物たちに聞き取り調査しました。

デスメタルやブラックメタルでは事実上不可能な事をやってのけた訳で、その連帯感を見せつけられた感じもします。

非常に貴重な証言が沢山あり、この部分だけでも本書を買う価値があるのではないでしょうか?

札幌のRoughSketchさんには「日本とオランダのハードコア・シーン」の違いのコラムを寄稿してもらいました。

Murder Channelが主催した「アシッド対談」の文字起こし。見逃した人にはありがたいですね。

その時の様子。部外者から見ても、非常に有意義でインテレクチュアルな議論が繰り広げられていたのが分かりました。

デスメタル界でも大変有名で人気があるOzigiriさんのインタビュー。「デジタルグラインド」と言われるだけあり、DTMでどういう機材を用い、どうやって作曲し、どうやって録音したらこの様な音楽が出来上がるのかをかなり詳しく説明してもらいました。

自分でも同じ様な事をやりたいと思っている人には、かなり参考になるインタビューなのではないでしょうか?

Hardgateを主催し、沢山のハイクォリティ作品を発表しているDJ Myosukeとテラーコアをメインにエクストリームなサウンドを生み出し続けているRedOgreの対談。

これもそれぞれがこのジャンルのトップクラスの有識者なだけあり、非常に示唆に富む内容が含まれています。

お二人の曲も、キャッチーなものもあり、個人的にもファン。

Masayoshi Iimori氏、Hiro “BINGO” Watanabe氏、GraphersRock氏、鶴岡龍(LUVRAW)氏、など、ハードコア・テクノ界と関わりのある有名な業界人たちに、特にお気に入りのハードコア・テクノの音源ベスト3をリストアップしてもらいました。

この章の最後は日本のハードコア・テクノの中でも特に重要な音源を紹介しています。

最終章は「エクスペリメンタル・ハードコアテクノ」

兄弟ユニットSomatic Responsesにはインタビューも成功。

一筋縄にはいかない音源が多く、ハードコア・テクノの中でもどのカテゴリーにも当てはまらないアヴァンギャルドな作品を厳選してレビュー。

やっとあとがきです。オールカラーで304ページもやってしまったというのは、弊社初。こんなマニアックな音楽サブ・サブジャンルの概説書としては無謀としか言いようがありません。

なにしろ「ハードコア・テクノ」自体が「テクノ」のサブジャンルですから、そのサブジャンルの更に下のサブジャンルに「クロスブリード」などが位置するわけで、とんでもなくマニアックな本です。「東京都杉並区高円寺北1丁目」とか中華人民共和国の重慶の渝中区だけのガイドブックをオールカラーで出している様なものでしょうか(笑)

ここだけの話、かなり採算度外視の冒険企画。この様なカルチャーをサポートするべきだと思う心優しい文化系の方々は、ぜひサポートして、本書を買って下さい。

Murder Channelの梅ヶ谷さんもonline storeで沢山売ってくれています。

Murder Channel Online Shop『ハードコア・テクノ・ガイドブック インダストリアル編』

実はここから買えば、noteの限定公開記事も読めるリンクが特典としてついてくるようです。

Amazonでの発売が一週間ほど遅れ、Murder Channel online storeから直接買わざるを得なくなったけど、逆に良かったという声も寄せられています。

今ではAmazonだけでなく、ディスクユニオンや各種オンラインショップ、大型書店でも購入可能です。

そしてなんと明日11月23日夜、19時からDOMMUNEで『ハードコア・テクノ・ガイドブック』をやります!

オールドスクール編が出た頃はコロナで日本中大騒ぎだったので、どうしてもイベントができませんでした。

今回は人数が限定されていますが、スタジオ観覧もできます。もちろん自宅からもネットで見られます。

祝日で次の日は平日なので、家にいる人が多いと思うので絶好の放送日ですね。

2021/11/23 TUE 19:00-24:00 Murder Channel Presents「ハードコア・テクノ・ガイドブック」

この『ハードコア・テクノ・ガイドブック インダストリアル編』及び『ハードコア・テクノ・ガイドブック オールドスクール編』を副読本として用意しながら、番組を見る事をオススメします。

そしてハードコア・テクノの歴史を書き残した資料としても、このジャンルのファンの皆様は、この2冊は買える内に是非買っておいた方がいいと思います。

あと今手元にないので、撮影できませんでしたが、既に弊社から出版されている『ブレイクコア・ガイドブック』シリーズもまだお持ちでない方はぜひよろしくお願いします。