吉村剛史さんによる『ソウル25区=東京23区』が完成したので、中身を紹介します。
カバーはこの通り、太極旗のカラーである赤青白黒を基調としたもの。
ソウル市には25区あり、東京都には23区あり、その数は似ています。
それだけならまだしもソウル市には995万人住んでおり、605キロ平方メートルの面積がある一方で
東京23区には966万人住んでおり、627キロ平方メートルあります。
ここまで数値が似ているのは驚き以外の何物でもありません。この事が世間では知られていないのが意外です。
区数や人口、面積がほとんど同じと言えるソウルと東京。
そこでこの本のコンセプトである、それぞれの区がお互いで置き換えたらどの区になると言えるかのコンセプトを説明。
まずは「ソウル25区=東京23区対称地図」。
基本的には「1区対1区」で擬えたのですが、元々数が2区違うのと、元々1区だったのが複数に分割された事もあり、複数にまたがる事も。
384ページと、もうすぐで400ページに達する割と分厚い本なのですが、最初の80ページはカラーでソウルと東京の町並みを紹介。
仁寺洞と神保町のまるで瓜二つな街並みショット
見た目が似ているソウル駅と東京駅。
日本銀行と韓国銀行、新世界百貨店と日本橋三越なども似ています。
ソウルの中心部は日本統治時代に開発されたところも多く、設計者が同じだったりします。
南大門市場は猥雑としたアジアの市場といった感じでしたが、上野アメ横もそんな感じ。
延世大学は「韓国の慶応」と言われますが、校舎は立教大学に瓜二つ。
本編でも再び出てきますが、ソウル近郊の都市を東京近郊の都市に擬えたコラムや、ソウルにある郷土料理の写真。
ソウルと東京を比較する統計データ。
韓流が世界を席巻していたり、サムスンなどがグローバルに展開しているので、ソウル在住の外国人の方が多いのかと思いきや、東京の各区の在住外国人の方が遥かに多い事が分かりました。
一方でスターバックスの店舗数ではソウルが東京の1.7倍もありました。
冒頭に色々と前置きが多いのですが、ここからが「都心圏」の第1章です。
各章の初めには本文で登場するスポットをなるべく記載した地図が掲載されています。
Google Mapでいちいち調べなくても、だいたいどこだかすぐ分かります。
まずは「鍾路区=千代田区」。一国の首都の中の更に中枢。色んな共通点があります。
なるべく1対1でやっていきたいところですが、2番目に紹介する「中区」はどうしても例外パターンの「中央区+新宿区」。
あの明洞がある区です。
ソウルの街を東京で擬える事は一般的にもよくありますが、特にその例として言われやすいのが「梨泰院=六本木」。それ以外のソウルの外国人街なども紹介。
本編は基本的にこの様に、それぞれの共通点を指摘していきます。
各章の終わりには、ソウルの共通点及び差異について、多角的に検証したコラムを用意。
例えば街だけでなく、大学とか建物、施設などもよく例えられます。これはそのコラム。
隣国なのでお互いいがみあっていても、相互交流は盛ん。「ソウルのなかの日本・東京のなかの韓国」というコラム。
ソウルや東京の区だけでなく、それぞれの周辺にある都市を擬えたコラム。議政府=横須賀市説など。
さて本書では一般的にはソウルのガイドブックでは紹介される事もない、中心地から離れていたり、一般市民しかいなさそうな住宅地がメインの区・街も紹介しています。
これは「恩平区=板橋区」説。
こういったマイナーな区はガイドブックなどではあまり紹介されませんが、韓国映画や韓国ドラマでは舞台設定で出てくることがよくあります。
しかしその土地柄がどういう雰囲気で、どういう意味が込められているのか、よく分かりません。
そこで「東京でいうと板橋区に近い」と説明するとぐっと分かりやすくなります。
田舎でもなく、郊外でもなく、江南側だけど江南区でもない、瑞草区は東京で擬えたらどこかというと、杉並区とのこと。
説明を読むとなるほど、そうかもしれないね、と納得。そんな感じでソウルの各区の立ち位置や特徴がよく分かります。
もちろん全てが完璧に一致しているわけでもなく、複数の要素が混ざっていたりする事も多いです。
そもそもソウルでは比較的近年まで新しい区が既存の区から分離独立したりしています。
永登浦区、九老区、衿川区は元々全て永登浦区でした。
その3つが東京に置き換えると大田区なのではないかという説。
元々は大田区も大森区と蒲田区の合併。
という訳で、『ソウル25区=東京23区』の見どころをダイジェストで紹介しました。
ページ数がかなり多いので、ここでは十分紹介しきれていません。
是非、実際に買ってみて読んでみて下さい。
外国の地理本やガイドブックというと「首都」や「都市」、あるいは地方自治体の場合、「州」「省」などといった行政単位で紹介される事が多いです。
しかしながらこの『ソウル25区=東京23区』は、「ソウル特別市」の「行政区」に焦点を当てた面でも、珍しいのではないかと思われます。
本書が扱っているマイナーな区だと、日本の書籍で詳しく紹介説明される事自体が初めてという事もあり得るかもしれません。
なお弊社からは韓国関係の本が沢山出ています。
『ヒップホップコリア』
『超高層ビビル5 韓国編』
『デスメタルコリア』
『韓国いんちきマンガ読本』
『韓国アニメ大全』
です。韓国の音楽や漫画、アニメでは当然、ソウルの街並みが出てくることがよくあります。
今までそれがどういう街なのか、よく分からない事も多かったと思われますが、『ソウル25区=東京23区』を読めば分かる様になります。
またソウルの街の発展ぶりに驚いている方々も多いでしょう。最近の若い方はそうでもないかもしれませんが、80年代、90年代に韓国に渡航した事がある方は、高層ビルの乱立ぶりに驚かれたと思います。
『超高層ビビル5 韓国編』ではそういった韓国の超高層ビルや都市景観を見ることができるので、『ソウル25区=東京23区』と合わせて読むと、街並みの雰囲気がよりいっそう分かるはずです。