村田恭基さんによる『オールドスクール・デスメタル・ガイドブック 中巻』が完成しました。中身を詳しく紹介します。
『オールドスクール・デスメタル・ガイドブック 上巻』の紹介記事はこちら。
今回の画家はまたしてもJuanjo Castellano Rosado。この本の直前には長野のInvictusの『The Catacombs of Fear』のジャケットも発表されました。今、世界的に引っ張りだこの画家です。
そして実はこの上巻と中巻、一つのイラストでできており、繋がっています。
取り外すとよく分かります。元々1冊の企画として進めていたので、内容は密接に関係しており、2冊両方を買うことをおすすめします。
むしろこの中巻で扱っているヨーロッパの方が人気がありそうです。まずはイギリス、ドイツ、フランス、オランダなどの西欧から。
近年、アメリカのAutopsy並に再評価が著しく、特にハードコア方面からも人気のイギリスのBolt Thrower。
90年代のイギリスは世界的なデスメタルシーンとは浮いていた印象ですが、My Dying BrideやParadise Lostなどゴシック・ドゥームの先駆者を輩出していました。これらも登場当初は今みたいにはっきりとそのスタイルを打ち立てる訳ではなく、鈍いデスメタルみたいな感じでした。
一般的なメタル大国のイメージとは裏腹にデスメタル不毛国だったドイツ。その中で個性を放っていたのがMorgoth。そのインタビューも掲載しています。
上巻であったレーベル特集の続き。
浅草デスフェストでの来日の記憶が新しいオランダのPestilence。実はインタビューにも応じてくれていたのですが、ぎりぎりこの中巻が浅草デスフェストに間に合わなかったのが惜しまれます。
比較的マニアックなMourning/Rouwenのインタビュー。
OSDMリバイバルとして、日本が世界に誇るCoffinsの内野さんのインタビュー。Relapse Recordsに所属し、数々の海外フェスに出演してきた当事者ならではの貴重な話が聞けます。
Avulsedを率い、Xtreem Recordsを運営するOSDM界の名士、Dave Rottenのインタビューも。フィンデスを誰よりも早く着目したOSDシーン第一人者。
お次はいよいよ北欧です。特に「OSDM=スウェディッシュデスメタル」と思われているぐらい、聖地化されているスウェーデンが多くのバンドを輩出しています。これはDismember。
Entombedに至ってはOSDMで最も重要なバンドと言っても過言ではない為、詳細なプロフィールを記載。
大御所枠ではなく、アルバム・レビューだけで済ませざるを得なかったバンドもNecrophobicやSeance等、他の国だったら大御所扱いしているかもしれないバンドが多数。
当時より、後になってから再評価が著しい、フィンランドのOSDM。特にDemigodやDemilichが時代に先駆けて革新的な事をやっていたのではないかと、後になって注目されます。フィンランドというとメロデスやRAWプリミティブが着目されますが、OSDMでも一流国。
AdramelechやAmorphis、Convulseなどスウェーデンと比べても一風変わった個性的なバンドを沢山生み出しています。
デンマークはどちらかというと北欧の中では地味ですが、その中で紹介しているのはKonkhra。当時リアルタイムではOSDMという括りではなく、そもそもその様な概念もありませんでしたし、PanteraやMachine Headから少し影響を受けたモダンヘヴィネスの様なイメージでした。
今はUndergangなども登場しており、OSDMでも一大勢力の様です。
Dan SeagraveやNecrolord、Axel Hermann等、初期デスメタルのイメージを創り上げていったイラストレーター特集。
今では北欧を越える勢いのブラックメタルシーンがある東欧ですが、90年代はむしろデスメタルが盛んな場所として話題に。その中でも代表格がポーランドのVader。
世界トップクラスのデスメタルバンドに位置していましたが、ジャンルが複数に分岐した今となってはオーソドックスなスタイルなので、OSDMと言えるのかもしれません。
上巻でインタビューしているMasterのPaul Speckmannも在籍するチェコのKrabathor。共産主義時代から活動する、世界的に見ても長命のデスメタル。
巻末には初期デスメタルのオムニバスの名盤、そしてButcher ABC、はるまげ堂で活躍する関根成年氏のインタビュー。
最初に予定していたのは8ページほどだったのですが、あまりにも話が盛り上がり過ぎてしまい、文字起こしすると4万5000字をオーバー。どの部分も面白いので、結局、カットせず、全部載せる事に。
しかしその為、上巻と比べて8ページオーバーしてしまったので、その部分だけ白黒に。結果、シリーズなのにページ数と体裁を揃えられなかったとは言え、その価値がある内容になっています。
デスメタルの世界を30年近くも見てきて、世界的にも著名な関根氏ならではの体験や知見、知識が披瀝されています。
ざっと『オールドスクール・デスメタル・ガイドブック 中巻』の内容をダイジェストで紹介しました。しかし本書の魅力はここでは十分説明しつくせません。
持っているCDを引っ張り出しながら聴いたり、持っていない場合、ストリーミングで再生して照らし合わせながら聴いたりと、教則本の様に読める本シリーズ。
あの時、話題だったバンド、聴きそびれていた音源、完全に忘れていたバンドなどを復習する様な感じで振り返ることもできます。
既に歴史と成りつつあるデスメタルを体系的に整理し直した『オールドスクール・デスメタル・ガイドブック 上・中巻』、是非両方とも買ってみて下さい。
上巻は発売以降、好評でAmazonでは何度も補充しているにも関わらず、3週間も在庫切れでした。
入手困難になる前に手に入れる事をお勧めします。