衣笠太朗さんによる『旧ドイツ領全史』が完成しました。本日、8月10日がオフィシャル発売日ですが、無事に大型書店、そしてオンライン書店で販売が開始されている様です。
帯を取り外したところがドイツ時代のケーニヒスベルクです。
袖にはこの『旧ドイツ領全史』と極めて関連性の高い、栗原久定さんの『ドイツ植民地研究』を紹介。
本の主旨説明。版元ドットコムでも同文が見られます。
本書は現在はドイツではない土地を扱っている為、現統治国による地名の表記の説明などを詳しく解説。
カラーページを54ページも設けており、各地域の旗や紋章をカラーで紹介。
カラーページでは他に各地域の観光スポットをカラー写真で紹介しています。実はこの『旧ドイツ領全史』は企画勃発当初は『旧ドイツ領ガイドブック』という主旨で始まりました。
ポーゼンの観光スポット。
まずドイツ史自体を理解してもらわないと話が進まないので、その解説。
戦間期のドイツ、そしてその中のプロイセン州。
第二次大戦後にドイツが失った領土。これらの地図は全て著者の衣笠さんが自ら描きました(最終的には編集者が清書)という。
さてここからが本題の各地域解説。一番最初はもちろんオストプロイセン。
主要言語、各時代の人口、年表などのスペック表が。
そして州内の主要都市の現統治国名とドイツ名の対照表。その後に「ドイツ領となるまで」
古代~中世の頃から遡って解説。
ケーニヒスベルグ城やフリードリヒ二世。
オストプロイセン時代の言語分布図。
オストプロイセンを訪れるヒトラー。
オストプロイセンから避難しようとして撃沈され、大勢の犠牲者を出したヴィルヘルム・グストロフ号。
戦後、カリーニングラードになってからの話。
オストプロイセンが全部カリーニングラードになったと思われていそうですが、そうではなく南側はポーランドのオルシュティン県に。
「ゲルマンとスラヴ」等と言った各章に関連するコラムを必ず章末で複数用意。
旧ドイツ領各地から、ドイツ統治時代だけでなく、今に至るまでその領域の出身の著名人を紹介。カリーニングラードはプーチンの元妻が出身。
お次はヴェストプロイセン。
第三章は衣笠さんが専門に研究されているシュレージエン。右には石井菊次郎が。
ポーランド初代首相パデレフスキ。ピアニストとしても有名。
ルール・ポーランド人のコラム。
ちょうど最近伊藤定良『改訂新版 異郷と故郷: 近代ドイツとルール・ポーランド人』有志舎も出ました。
ヒンターポンメルンの章。スウェーデンが長い間、統治。
スウェーデン領ポンメルンはあまり話題になることがないので、コラムも。
意外と本書のハイライトの一つだと編集者としては思っている北シュレースヴィヒ。実はここから紆余曲折を経て、ドイツ帝国成立まで繋がっていきます。
この章は特に地図をよく見ないと話が付いていけなくなるので、要注意。
旧ドイツ領としてはオストプロイセンと同じぐらい話題に上るエルザス=ロートリンゲン。
第二次大戦とアルザス・ロレーヌ。
仏独係争地から欧州連合の中心に。
本書でも一番マニアックなベルギー領になったオイペン・マルメディ。邦文献でここまでこの地域を扱った本はないと見られます。
フェン鉄道の飛び地やビートダウンハードコアバンドNastyなど地理マニアなどにとっては、一番面白いとも言える場所。
巻末には参考文献。
索引。
本書と合わせて冒頭で述べた『ドイツ植民地研究』、そして『第二帝国』上下巻を合わせて読むと、より理解が深まります。
『旧ドイツ領全史』の告知以降、予想を上回る反響があり、このテーマを渇望していた潜在需要、読者層がかなり大きかったみたいです。
もしかしたら初版が少な過ぎたかなとも思っています。また「安過ぎる」という声も多数寄せられ、値付けも間違えたかもしれません。
是非、早めにご購入する事をオススメします。