重慶研究家、近堂彰一さんによる『重慶マニア』が完成したので、詳しく中身を紹介します。12月10日が正式な発売日ですが、既に販売開始されています。

帯に「中国国内旅行No.1」とある通り、中国では近年大人気。ほとんど中国人しか行きませんが。

帯を取り外したところ。重慶といえば日本人的には蒋介石の臨時首都。また重慶爆撃。

それ以外に薄熙来や洪崖洞、ロープウェーなど重慶を代表するものを羅列。

実は「重慶の企画をやっている」と身内や知り合いに言っても「ジューケー?」とポカーンした反応が多かったです。

特に中国と関わりのない人や、人文関係と疎遠な人にとっては「重慶」と言われても何のことかよく分からなかったようです。

しかし中国と関係のある人、日中戦争や現代史に関心がある人は皆一様に「重慶!」とその企画の意義を分かってくれます。

袖に載っているのは『中国抗日ドラマ読本』と『中国遊園地大図鑑』の広告。『中国抗日ドラマ読本』は日本よりも中国本土で話題になった本。

『中国遊園地大図鑑』は実は著者の関上さんが『重慶マニア』の近堂さんとTwitterでやり取りをしているのを見かけて、仲介をお願いしたキッカケとなる本。

目次と郊外の地図です。テーマを全て「なんちゃらマニア」で揃えたというマニアックぶり。実にマニア受けする都市です。

中心となる渝中区の地図。実は編集者の私が全て描きました。自分が描くことによってある程度の土地勘や距離感、方向感覚を培った上で現地に行ったのですが、地図上では隣に見えて、実は崖になっていて行けないというスポットが余りにも多すぎました。

例えば鵝嶺公園のすぐ北に李子壩があるので簡単に行けるかと思いきや断崖絶壁。

また中国ではGoogle Mapは精度が低いので、バイドゥマップなどと併用することをオススメします。

ところでこの本に載っている地図は細かくて見にくい部分があるのと、自分が今どこにいるかGPSで把握できないと分かりづらいので「Google My Map」で読者の皆さんと見られる様に設定しています。

本書にアドレスが記載されているので、是非それを見てみて下さい。

ようやくここから本編です。まずは「階段マニア」。断崖絶壁の上に建てられた街なので、階段だらけです。ちなみにこの「山城火鍋王」の看板娘にこの『重慶マニア』を持っていくと、喜ばれるかもしれません。

長江ロープウェーと完成したばかりのRaffles City。

ヘアピンカーブマニア。

ジャンクションマニア

特に近年話題の「マンションに突っ込むモノレール」。重慶随一の観光スポットになっています。

重慶爆撃の際に防空壕が造られたのですが、それが今ではレノベーションされ、レストランやワイン蔵などになっています。

重慶は敷地の狭い渝中を中心に発展してきた為、超高層ビルが密集しています。摩天楼景観を見ると、上海や香港と引けを取らない程。マンハッタンと勘違いされるのも納得。

重慶といえば最も有名なのが「重慶火鍋」。重慶人のアイデンティにもなっています。

中国語ができなくても、写真でオーダーできる様に指先会話帳風のページも。

重慶火鍋と共に人気の「重慶小面」。特にオススメのお店を著者の近堂さんが紹介。

かなりローカル色の強い店や汚そうな店が多く、実際には入り辛い為、その外観も載せており、事前に実際に行くかどうか判断できるようにしているという親切設計。

実際に近くまで行ってみて「ちょっとここは……」と抵抗を覚える、公衆便所みたいな店もありますからね(笑)。

重慶料理の紹介。四川料理とは似て非なるもの。

重慶で最も有名な観光地、洪崖洞。『千と千尋と神隠し』に似てます。

重慶の代表的なエリア紹介。これは渝中区。

重慶名物土産。

重慶にはモノレール(軌道交通)や鉄道を見るだけの為に訪れている鉄道オタクがかなり多いようです。

まるで宇宙基地のような重慶北駅。

派手好きな国民性もあってかラブホテルが発展しています。モノレールに対して丸見えの露出狂向けの部屋も。

絶叫アトラクション。

国民政府時代の民国街を再現したスポット。

顔の形をしたホテルで有名な地獄スポット。

三国志と関係があるスポット。流石に三国志に関しては成都には劣るようです。

この本の見どころの一つは国民政府の数々の跡地の紹介です。

日中戦争時代は臨時首都になっていたのですが、例えば左下の今は重慶飯店になっている建物は経済部。

多くの建物が廃墟になっているか、別の用途の施設に転用されているようです。碑石が目立たない様にはめこまれているだけの事が多いようです。

日本軍に見つからない様に洞窟の中で飛行機を作っていました。右は蒋介石の家。一国の主の館とは思えない程の質素さ。

上海や南京などから首都機能や企業が移転してきました。

各国の在外公館も重慶に一緒に移転。右にある見すぼらしい寺みたいな家屋は実はドイツ大使館。上海事変ではドイツが中国をバックアップしてる程の親密さ。

その後、汪精衛政権を承認した事で断交。重慶に勢揃いした連合国陣営の大使館・公使館・領事館を見るだけで当時の世界情勢が分かります。

ギクシャクした関係が続くソ連大使館。時にはスティルウェル将軍と激しく対立しながらも味方になったアメリカ大使館。

80年後に一帯一路で中国の属国になりかけているロシア、経済対立で争っているアメリカ……。当時、中国がここまで発展すると誰が思ったでしょうか。

重慶には「大韓民国臨時政府」も拠点を置いていました。豪華な建物に見えますが、再建されたもの。

右は薄熙来。重慶共産党トップの一大スキャンダル。

日本軍による重慶爆撃に関する解説。

重慶に唯一認められた租界が「日本租界」だった事や、有名な共産党の日本兵捕虜ではなく、重慶国民党の日本兵捕虜など、日本と重慶の特別な関係を紹介したコーナー。

中共中央南方局や新華日報など、中国共産党革命聖地の紹介。重慶というと国民党というイメージですが、共産党がかなり活発に活動してます。

重慶談判で双十協定が結ばれたのもこの地。毛沢東が宿泊した建物なども紹介。

中国では独自のアプリを活用しないとうまく旅ができないので、その解説。

香港SIMなど、重慶を旅行するに当たって知っておくべきことなど。

ざっと『重慶マニア』の見どころを駆け足で紹介しましたが、もちろんここに載っているのが全てではありません。

全部で224ページあります。オールカラーです。このサイズではかなり詰め込みすぎの18万字超えで、写真は600枚近く掲載されています。

マニア受けする要素が大量に潜んでいる重慶の魅力を是非味わってみて下さい。

この本を持って重慶に行けばより一層、その魅力が分かるはずです。

2020年には重慶ブームが日本にも到来する予感がします。