栗原久定さんによる『ドイツ植民地研究』が完成しました。480ページのハードカバーの純然たる学術書です。
冒頭にはドイツの植民地だった地域が載っています。
前書きと凡例。この本の凄みが1180枚にも及ぶ画像を掲載していることです。
しかし当時の出版物から転載している画像はどれも縦横比率がバラバラで、解像度もバラバラでした。
章末にまとめて記載するという事も考えられましたが、そうするとその都度ページを捲らなくてはならず、面倒です。
なるべくわかりやすくする為にに本文での言及箇所の近くに掲載しました。その結果、レイアウトがかなり不規則になり、作業も大変な事になりました。
目次ですが、版元ドットコムでも見られます。
http://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784908468247
まずは「ドイツ植民地概観」。
ドイツがプロイセンによって統一される前に領有していた植民地やビスマルクの話。
ハンブルク植民地研究所や「中央アフリカ」計画
ブラジルの入植地ブルメナウやチリの入植地など。
ドイツ植民地協会のアフリカハウスや植民地協会の幹部ら
ベルリンの植民地ハウス
さてここからが「南西アフリカ植民地」です。今のナミビアです。
ウィントフークの教会
レホボスバスターと呼ばれるブール人と現地ナマ人女性との混血の子孫。
ゲーリングの父親が南西アフリカに赴任してます。
ウィントフークやスワコプムントのドイツ人達
第一次大戦中の南西アフリカ。ラクダ部隊がいます。
マリッツ蜂起やトランスヴァール共和国の首都プレトリア、オレンジ自由国の首都ブルームフォンテーン。非常に珍しい画像です。
イギリスのキッチナー将軍や南アフリカの歴史的英雄ヤン・スマッツなど
第一次大戦後の南西アフリカのドイツ系住民たちの話。ナチスとの関係性。
各章末にコラムを入れています。これは「社会主義者と植民地」
さてここまでが第2章の「南西アフリカ」なのですが、このペースで第7章の「膠州湾」まで紹介すると、画像が膨大になってしまうので、後は各章から特に面白いものを紹介します。
ロメのへんてこりんな総督官邸
電信施設
中央アフリカ計画など
カメルーンのコンセッション
ドゥアラの建物
カバーにもなったクッセリ基地の門
ユヒ五世ムシンガやツチ人
ニューギニア会社の職員達
ナウルに駐在するリン鉱石会社の妻達
「日本統治下の太平洋植民地」コラム
パラオの南洋庁本庁やサイパン島ガラパンの繁華街、ヤップ島の郵便局電信所など
膠州湾の総督府など
膠州湾の総督宮殿など
久留米の俘虜収容所のドイツ人捕虜など
27ページに渡る参考文献。しかもほとんどがドイツ語など外国語の文献です。
年表
正確な地図は当時の地図を見たほうがいいですが、日本語での地名や距離感覚を掴むための簡易地図。
詳細な人名索引と事項索引
とにかくひたすら丁寧で凝った作りになっています。ドイツ植民地の包括的な概説書は今までありませんでした。この様な全ての地域のものを俯瞰的に見渡した書籍は本国ドイツでも長らく出ていないそうです。
日本と同様に後から植民地獲得競争に加わった後発帝国主義国ドイツ帝国。そして日本やイタリアよりも先に第一次大戦で全ての植民地を失ったドイツ帝国。
重要なテーマであるにも関わらず、今まであまり語られてこなかったドイツ植民地。是非本書でその概要を知っていただければと思います。
正式な発売日は5月10日で、既に多くの大型書店やネット書店で発売されています。
カバーの袖に載せている弊社刊行『第二帝国』上下二巻もよろしくお願いします。