発売から少し時間が経ってしまいましたが、かに三匹さんの『韓国アニメ大全』が完成しました。既にアニメファンや韓国ファンからかなりの反響をTwitterで頂いていて、嬉しい限りです。

まだこのブログでは中身を紹介していませんでした。この様な感じで出来上がっています。

カラフルで思わず手に取ってみたくなる素敵なカバーは、新進気鋭の昭和レトロ・ヒーローアニメ風のイラストレーターとして大人気の、金子大樹さんによるものです。

帯を取った状態。

本扉を飾るのは韓国の国民的ヒーローロボット、テコンV。それ以外にあり得ないでしょう。

224ページにビッシリと、韓国アニメが収録されている為、目次がキツキツ……。

まず第一章は『テコンV』の章です。このアニメが韓国アニメ界でどういう存在なのかを詳述しています。日本ではマジンガーZのパクリと揶揄されていますが、そう一筋縄にもいかない様です。

そしてまずは『ロボット テコンV』の詳細説明。このアニメだけ他よりも長く説明しています。

テコンVのシリーズが色々と続いた後に『スペースガンダムV』。韓国では裁判所が「ガンダム」を一般名詞という判断を下したという説がインターネットでは流布されていますが、果たして真相は?

韓国にはコスト削減の為に、アニメと実写を混ぜ合わせた「ウレメ方式」というアニメが沢山あったみたいですが、実写のアングルや陰影がアニメと一致していないために、何とも不気味なショットの数々が……。

「スーパーバットマン」という、スーパーマンとバットマンを合体させたようなものまで。

こちらはバットマンと黄金バットを合体させたような、日米合作のようなヒーロー。一から考えた方が早いのではと思ったりもしてしまいますが。

韓国のヒーローアニメ物でよく出てくるシム・ヒョンレという人物のコラム。これ以外にも韓国アニメを更に深く考察した幾つかのコラムがあります。

北朝鮮と対峙する韓国では、反共アニメというジャンルもあり、北朝鮮の非道ぶり、そして韓国の愛国心を高めるアニメもあります。

かに三匹さんが今まで受けてきた、韓国アニメに関する質問に対する答えのコラムです。「韓国アニメ=パクリ」とは言い切れない、複雑な事情も解説されています。

とはいえ露骨なパクリも多く、逆に失笑してしまうレベル。これはストリートファイターを勝手にアニメ化したもの。アニメ以外にも実写映画も沢山制作されてしまった様です。

どう考えても『ドラゴンボール』に見える『スーパーチャイルド』というアニメ。

韓国は北朝鮮と対峙しているだけでなく、日本との関係もギクシャクしていますが、これは日本の植民地統治時代に日本の憲兵と戦っていた抗日ゲリラのアニメ。

そして侍が出てきたりと、どこかトンデモ日本。

日本を撃退した李舜臣は韓国では大英雄。その中で出てくる日本の描写や、必要以上に登場する忍者などがオモシロイです。

冷戦期は変なアニメも多かったですが、近年はかなり洗練されてきている様です。少女向けアニメも登場してきています。

考えてみれば、韓国ドラマや韓国映画は日本や世間を席巻しています。良質なコンテンツを輩出してきているのも理解できますね。

ほんの一部しか見ないで、『けいおん』のパクリだとネットで騒がれてしまった『スーパーハムズバンド』。

これは日本人の中で「韓国アニメ=パクリ」という潜在意識があったせいですが、実はそんなに単純な話ではなく、監督側の意図にまんまと引っかかってしまっているというところ。

そういった意味でも今現在は、韓国アニメはパクリを越えて、独自の路線に進化を遂げている様です。

韓国アニメは冷戦期は確かにパクリっぽいですが、よく見ると細部に制作者の工夫が見られたり、韓国の分断国家としてのお国柄が見られたりして、その差異が見どころでした。

またどこかで見たことがある様な、無いようなアインビバレンスが魅力です。『いんちきおもちゃ大図鑑』や『中国遊園地大図鑑』とも共通しています。

そしてあとがきにもある様に、「どこか懐かしい」というのが最大の魅力でしょう。

アニメファンも、韓国ファンも、特にそうでもなく、ニセモノっぽいのが好きなサブカルファンも是非『韓国アニメ大全』を買ってみて下さい。