日野健志郎さんの『チープコリア ヘル朝鮮の歩き方』が完成しました。

韓国の旅行本といえば、最新カフェ、コスメ、グルメ、K-POP、映えるホテル。あるいは景福宮や済州島などが定番です。

しかし、そういう韓国は、ほかの出版社が既に大量に紹介しています。パブリブがいまさら同じものを出しても仕方がありません。

本書が歩くのは、韓国高度成長の陰に残された街です。

タワーマンションの真下に広がるバラック、斜面にへばりつくタルトンネ、何十人もの高齢者が狭い部屋で暮らすチョッパン村、取り壊しを待つ廃墟、便所の扉が閉まらない激安宿、六千ウォンで腹いっぱいになる食堂、コピー商品が堂々と並ぶ市場。

一人当たりGDPで日本を上回ったと報道される国の、すぐ隣にあるもう一つの風景です。

本書は韓国を貶すための本でも、貧困を物珍しく眺めるだけの本でもありません。急激な成長と再開発の中で、置き去りにされた場所、しぶとく残った場所、妙な進化を遂げた場所を、著者が実際に歩き、泊まり、食べて記録した本です。

韓国へ何度も行き、明洞も弘大も聖水洞も見飽きた人にこそ読んでほしい。次の韓国旅行でわざわざ行く必要があるかはともかく、存在を知ってしまうと無視できなくなる場所ばかりです。

帯を外すと、暗い路地に放置された手押し車が現れます。

観光ガイドらしい爽快感は、最初からほぼありません。

ちょっと不鮮明で申し訳ありませんが、日野さんは『珍コリア』や『慰安婦像大図鑑』などを既に弊社から出版しています。

普通の観光客が宮殿や市場を見ている横で、なぜか再開発地区、銅像、廃墟、スラム、怪しい宿を探して歩いている人です。

今回も「韓国の安い店を集めました」という程度では終わりません。安さの背後にある歴史、都市政策、再開発、格差、強制移住、住民の生活まで掘り下げています。

まえがきと目次。こちらからご覧いただけます。

全四章、本文約一五〇ページ。

写真を眺めているだけでも相当な情報量ですが、単なる珍スポット写真集ではありません。それぞれの場所について、成り立ち、住民構成、再開発の経緯、現在の状況を解説しています。

そして、ほぼすべて著者本人が足を運んで撮影しています。

安全な場所からインターネット検索で作った韓国論ではなく、実際に路地へ入り、宿へ泊まり、食堂で食べ、時には追い出されそうになりながら作った本です。

第1章 スラム・タルトンネ

韓国のスカイラインを象徴する巨大マンション。そのすぐ下には、トタン屋根やブルーシートの家が残っています。

このコントラストが、まず非常に韓国的です。

山の斜面に密集するタルトンネ、政府の強制移住政策によって生まれた集落、消滅寸前の村、住民が消えて心霊スポット化した地区、観光名所へ改造された貧困地区。

一口に「スラム」と言っても、成立の経緯も現在の姿もまるで違います。

再開発されれば景観はきれいになります。しかし、そこで暮らしてきた人が、その新しいマンションへ戻れるとは限りません。

街は高級化した。しかし元住民はどこへ行ったのか。
本書は、その後まで追いかけます。

韓国最高ハイソタウンのすぐ側に韓国最低スラムタウン!!

バラックと後ろのタワーマンションこコントラストが歪。

オンボロぶりが分かる。火災によってブルーシートが。

政府の強制移住によって生まれたソウル最大タルトンネがついに消滅!! 白砂(104)村

日本人の墓を勝手に持ち出して作られた村が観光名所に!! 峨嵋洞碑石文化村

死者続出!! 住人が消え、心霊スポットと化した都心タルトンネ!! 峴底洞タルトンネ

ゴーストタウンになったカンヌ国際映画祭受賞作ロケ地に潜入!! 阿峴洞タルトンネ

高級ホテルやカジノの間近にドブネズミ這い回るビニール集落!! 龍山駅裏テント村

スラム街系YouTuberインタビュー

第2章 ドヤ・激安宿泊施設

酒と小便の臭い漂う「韓国の西成」は、住民のアルコール依存が深刻化!! 永登浦チョッパン村

60の建物に900人詰め込み!! 金持ちが貧乏人を搾取する格差現場 東子洞チョッパン村

大韓民国首都の玄関口では今日も泥酔ホームレスの奇声が響く!! ソウル駅周辺

ここからは宿泊レポートです。

清潔で安いホテルを紹介する企画ではありません。

「清潔さには多少難があるが、安い」から始まり、次第に、

  • 寝られればよい
  • 壁があればよい
  • 扉が閉まればなおよい
  • 便所の扉まで閉まることを期待してはいけない

という領域へ進みます。

旅館、旅人宿、チムジルバン、ドヤ。著者が実際に泊まり、設備、料金、立地、快適性を報告しています。

高級ホテルのレビューは世の中に無数にあります。しかし、一泊一万ウォンの部屋の便所がどのような状態になっているかを、ここまで真面目に記録した本は多分ほとんどありません。

「安い韓国旅行」を極めたい人には実用書。普通のホテルに泊まりたい人には、読み物としてお楽しみください。

快適さ度外視!! とにかく寝られれば良い安さに特化した最低選択肢!! 旅人宿編

韓流ドラマでお馴染み! 風呂サウナ入り放題、激安雑魚寝空間!! チムジルバン編

壁薄、激狭、便所の扉は閉まらず!! 1泊10000W極限宿の驚愕実態!! ドヤ編

第3章 廃墟

経済成長の速度が速ければ、捨てられる建物の速度も速くなります。

閉鎖された精神病院、営業を終えた遊園地、取り残された学校、ホテル、工場、宗教施設。

廃墟は何も語りませんが、そこに残された家具、看板、カルテ、遊具、生活用品は、施設が突然時間を止めたことを物語っています。

特に有名な昆池岩精神病院は、映画や都市伝説によって世界的な心霊スポットになりました。しかし、本書が扱うのは有名物件だけではありません。

検索しても日本語情報がほとんど出てこない、なぜ残っているのかすらよく分からない物件まで収録しています。

廃墟マニアにはもちろん、韓国の近現代史を建物から眺めたい人にも、かなり濃い章です。

アメリカCNNが選んだ世界鳥肌スポットで、患者が描いた絵に戦慄!! コンジアム精神病院

郊外のB級廃アミューズメントパークがK-POP の聖地に!! 龍馬ランド

韓国屈指の色街の断末魔は、立ち退きを巡って罵り合い!! 清凉里集娼村跡

将軍様が残した近代文化遺産は見掛け倒しのハリボテだった!! 朝鮮労働党舎

コラム 貧困の果ての凶行 56人殺しの現場を歩く

第4章 激安グルメ・ショッピング・外国人街

暗い話が続きましたが、最後は食べます。しかも安く。

大学食堂、警察職員食堂、六千ウォンの食べ放題、昔ながらの市場、屋台、外国人街、偽ブランド品市場。

物価高が続く韓国にも、探せばまだ異常に安い場所が残っています。

ただし本書は、「安くておいしい! コスパ最高!」だけでは終わりません。

なぜその値段で提供できるのか。誰が利用しているのか。なぜ外国人街がそこに形成されたのか。観光客向け市場と地元住民向け市場はどう違うのか。

安さを入口にすると、都市の階層構造や移民社会まで見えてきます。

そして最後には、コピー商品の迷宮として名高い東大門・南大門周辺へ。

ハイブランドの宝庫。ただし偽物には十分注意してください。というか、主に偽物を見に行っています。

メニューの大半が4000W以下!! 大学街の激安大衆食堂!! 激安大衆食堂

6000Wで腹一杯!! 郵便局の局員食堂はランチの穴場 激安職員食堂

ボッタクリ皆無の大人の屋台。ローカル市場名物餃子で静かに一杯!! 激安在来市場

メニューはお婆ちゃんの気分次第!! 地元老人男性の憩いの場 激安大衆酒場

創業60年の名物クッパ!! 老人の聖地で味わう3000Wの幸せ!! タプコル公園裏激安食堂ストリート

ハイブランドの宝庫も偽物注意!! ソウル最大級古着専門市場!! 広蔵市場旧製商店街

中国朝鮮族の凶悪イメージからデンジャラスエリアに認定!? 大林洞チャイナタウン

以上、かなり大急ぎで見所を紹介しました。

写真だけ見ると、スラム、便所、廃墟、激安食堂、偽物市場が連続する、だいぶ変な本に見えます。

実際、だいぶ変な本です。

しかし読み進めると、これは単なる「韓国のヤバい場所集」ではないことが分かります。

華やかなK-カルチャーと世界的企業、高層マンションと再開発。そのすぐ横に残る貧困、老朽住宅、極端に安い宿、移民街、捨てられた建物。本書に収録された場所は、どれも韓国社会の例外ではなく、急速な発展が生んだもう一つの結果です。

普通の韓国ガイドに少し飽きた人。
観光地ではない街を歩くのが好きな人。
団地、スラム、廃墟、激安宿、市場、外国人街という単語に反応する人。
そして、韓国が好きだからこそ、そのきれいではない部分まで見てみたい人。

そういう方には、かなり楽しんでいただけると思います。

既に大型書店で販売開始しています。

韓国へ持って行けば旅行ガイドとして使えますし、持って行かなくても、自宅でかなり嫌な韓国旅行ができます。ぜひ買ってみてください。