藤澤正樹さんと近藤知孝さんによる『メロディック・ブラックメタル・ガイドブック』が完成したので、中身を紹介します。

メロディック・ブラックメタルの典型的な共通する世界観をイメージしたカバー。

本扉はカバーを引いた構図。

まえがき。メロディック・ブラックメタルは、境界線が曖昧で様々なスタイルがあります。「黒くなったメロディック・デスメタル、黒くなったヨーロピアンスタイルのデスメタル」「シンフォニックなメロディック・ブラックメタル、またはメロディック・ブラッケンド・デスメタル」「メディーヴァル・ブラックメタル」「アトモスフェリック要素のあるメロディック・ブラックメタル」「メロディアスなブラックメタル」などの説明。

同じ文章がこちらでも見られます。

目次。こちらでも見られます。

ここからが第一章の北欧。メロディックブラックメタルはメロデスと同様に、主にスウェーデンから始まったスタイルです。

大御所枠として最初に登場するのは、「自ら命を絶ったメロディック・ブラックメタルの原典にして頂点」Dissection。

「Jon Nödtveidtが目指した「Metal of Death」を考察」。そしてなんと右ページはDan Swanöインタビュー。

「荒涼リフとブラストビートでスウェディッシュ・スタイルを確立」Dark Funeral

ところどころにミニコラムを入れています。これは「青ジャケのブラックメタルに外れなし」。

「研究を重ね、独自のニッチを見出したメロブラの夜明け」Dawn。

メロブラ四天王にも挙げられるDawnですが、なんとそのインタビューに成功しました。

「薄闇の雪原、闇夜の北欧の深い森を表現する王道のブラックメタル」Grafvitnir。

「北方の国から叙情と暴虐を携えやってくる激情ほとばしる死者の船」Naglfar。

「サタニックイメージ活かしたキング・オブ・ブラッケンド・デスメタル」Necrophobic。

この界隈でもトップクラスの知名度と人気を誇るNecrophobicですが、彼らのインタビューにも成功しました。

「もはやブラックメタルを越えたメロディック・エクストリーム・メタル」Keep of Kalessin。

このバンド名で「キープを彼氏」と脳内で唱えてしまうのは私だけでしょうか?

「メロデスとメロブラの夜明け」というコラムを隣接する『メロデスガイドブック』の内藤智裕さんに寄稿してもらいました。

「狼ジャケで知られ、シンセをミックスしたキラキラ系ブラックメタル」Catamenia。

「Catamenia」と聞いて「硬めにあ」と脳内で唱えてしまうのは私だけでしょうか?

どうもメロディック・ブラックメタルはダジャレになってしまうバンドが多いように感じます。

そんなトップクラスのバンドCatameniaのインタビュー。

第2章はヨーロッパ。

「ドイツが生み出した暗黒プログレッシヴ・ドゥーム・ブラックメタル」Dark Fortress。

残念ながらインタビューした後に解散してしまいました。

「黒い森でプログレッシヴロックやクラシックロックをブレンド」Thron。

彼らにもインタビュー。何気に今回の本では有名バンドのインタビュー数が多いです。

「メロディック・ブラックメタル復権に最も貢献したDissectionフォロワー」Thulcandra。

「「悪が世界を支配する」という思想Malismのロシア人信奉者」Malist。

第3章はアメリカ大陸。

「氷の魔法使いをコンセプトにしたコールド・プリミティヴ・メタル」Sorcier Des Glaces。

インタビューも。

「魔術で培った言霊をブラックメタルに乗せる南米からの使者」Darker Mysteria。

「伝説の名門レーベル、No Fashion Recordsの光と闇」という長めのコラム。そして最終章は「Border Bands」。

ここでは何を紹介しているかというと、メロディック・ブラックメタルとの境界線に位置するバンドたちです。

シンフォニック、メロデス、ヴァイキングメタル、アトモスフェリック、プリミティヴ、NSBMなどでメロディック・ブラックメタルと至近距離あるいは重なり合ったサウンドを奏でるバンドが数多くいます。

しかし主軸となるサウンドがメロディック・ブラックメタルではない場合は、メインで取り上げることはせず、このリストに記載しました。

実は当初この企画はオールカラーではなく、オールモノクロの予定でした。

『世界過激音楽』シリーズは初期や中期までは『東欧ブラックメタルガイドブック』や『プリミティヴ・ブラックメタル・ガイドブック』『デプレッシヴ・スイサイダル・ブラックメタル・ガイドブック』では、オールモノクロでした。

近年になってからオールカラーにシフトしてきています。

やはりカバージャケットをカラーで載せることによる情報量の差は歴然としています。

メロディック・ブラックメタルの要素が部分的には存在するバンドを集めていくうちに、際限なく青天井に増えていってしまいました。

結局、いつまで経っても終わらなくなり、途中で行き詰まってしまいました。

そこでメロディック・ブラックメタルの隣接ジャンルといえる『ポストブラックメタル・ガイドブック』の近藤さんに支援を仰ぎ、思いっきり整理してもらうことにしました。

208ページに収めたのは、定価を2800円にしたかったからです。これ以上ページ数が増えると、税抜き価格でも3000円を超えてしまいます。

ページを増やせばもっと掲載バンドは増やせたかもしれません。しかしそこまで高くなると、買える人は限られてきてしまいます。

なので208ページの中でどうにか厳選したという感じです。

中には「◯◯が載っていない」という指摘もあろうと思いますが、メロディックブラックメタルの要素はあれど、他の隣接サブジャンルがメインだと判断したとご理解頂ければ幸いです。

また近藤知孝さんの『ポストブラックメタル・ガイドブック』、そして隣接する内藤智裕『メロデスガイドブック 北欧編』『メロデスガイドブック 世界編』もよろしくお願いします。

関係ないですが、メイン著者の藤澤さんから、今回この本に参加した人たちの全員に「藤」が入っているという指摘がありました(笑)