ウクライナ・ファンブック

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ニッチジャーニー Vol.1
東スラヴの源泉・中東欧の穴場国

平野高志(著/文)
ISBN 978-4-908468-41-4
C0026 A5判 224頁
価格 2,530円 税込 (本体2,300円+税)
書店発売日 2020年2月10日

 

 

紹介

旧ソ連・共産主義体制
チェルノブイリ・クリミア占領
う、暗いな…

▼▼▼

素敵カフェ・お洒落レストラン
カラフルな街並み・美男美女
明るいな!

写真家としても活躍するウクライナ国営通信の日本人編集者がその魅力を余すこと無く伝えるフルカラー教養ガイドブック!!

一人あたりGDPがブータンやイラク、フィリピンよりも低い一方、
外国人旅行客数はチェコやベルギーを超えて世界26位の人気渡航先に!

カラフルに塗り替えられたソ連式アパートの壁画やSNSで話題になった「愛のトンネル」、宮崎駿監督『ナウシカ』と繋がりのある腐海、そして一面のひまわり畑など想像以上に明るく、綺羅びやかな国ウクライナ。かねてから「欧州のパンかご」と呼ばれ、ボルシチ発祥の地であり、ウクライナ産ラーメンが登場するほどの美酒美肴なグルメ大国。子音・母音の連続を避ける音重視の響きが美しい言語。バンドゥーラやトレンビータで知られ、記録民謡数世界最大級の音楽大国。PayPalやWhatsAppの創始者を輩出するIT立国で、世界最大の輸送機ムリーヤを製造したアントノウ社の拠点。「自由の人」と呼ばれたコサックの末裔達はマイダン革命を成し遂げ、新大統領ゼレンシキーを選出後、いよいよ成長軌道に乗った!

直行便がないのが最大の欠点の、VISAなしで行ける格安天国!

目次

2……はじめに
4……目次

6……基本情報・旅行情報
8……ウクライナ地図
10……ウクライナへ行くには
12……ビザ・宿泊施設の探し方
13……空港からキーウ市中心部への移動
15……市内の移動
16……都市間の移動手段

18……キーウ(キエフ) 東スラヴの文化・宗教・歴史のはじまりの町
50……リヴィウ 諸民族が作った西ウクライナの中心地
60……オデーサ 黒海が香り、歴史建築が並び立つ国際都市
68……ハルキウ 産業と学術が盛んな北東部に位置する第二の都市
72……チェルニウツィー ルーマニアに近く、文化・言語の入り混じる街
76……チェルニヒウ ルーシ時代の建築物が残るウクライナ第二の古都
78……ルーツィク 城がシンボルの西ウクライナ最古の都市
80……リウネ州・愛のトンネル 愛とビールとお城の地方
82……ドニプロ ロケット・産業・アートのある川辺の大都市
86……ザポリッジャ 中洲の拠点で今も鍛えるコサック達
88……マリウポリ アゾフ海に面する宇露戦前線に近い港町
90……ヘルソン州 クリミアと隣接したスイカ名産の自然の宝庫
92……腐海・アラバト砂州・ピンクの湖 『風の谷のナウシカ』とクリミアの思わぬ繋がり
94……チョルノービリ(チェルノブイリ) 再注目されるダークツーリズム
98……村の生活
100……ウクライナ料理 肥沃な黒土を持つ農業大国の本領発揮
106……オデーサ料理 諸民族影響と黒海の恵みの魚介料理
108……クリミア・タタール料理 伝統と追放の中で維持・発展した味
110……ボルシチ 実はウクライナが発祥の代表的民族料理
112……ウクライナ・ビール 歴史と多様性を抱く東欧のビール天国
114……お土産 チョコやマグネットから陶器や民族衣装まで

116……音楽 バンドゥーラやトレンビータで知られ、記録民謡数世界最大級
118……ヴィシヴァンカ 現代も愛される華やかな刺繍の入った伝統服
120……ピサンカ(イースターエッグ) 卵に描かれる古来の色紋様
122……インタビュー ウクライナの現代芸術 イゾリャーツィヤ
126……インタビュー クリミア・タタール文化 クリミアの家

128……ウクライナ語 子音・母音の連続を避ける音重視の言語
130……観光会話帳 ウクライナ語・ロシア語・クリミア・タタール語
132……ウクライナ語とロシア語 並存する2つの異なる言語

136……スポーツ ビロディド、ブブカ、大鵬と多彩な顔ぶれ
138……ウクライナ人とは誰か 「自由の人」と呼ばれたコサックの末裔
141……民族マイノリティー 独自文化・歴史を持つ地域の隠れた主役達
146……クリミア・タタール語 クリミア・ハン国で発展した悠久の言葉
147……タタールと呼ばれる人々 ヴォルガ・タタールとクリミア・タタール
……特別寄稿『タタールスタンファンブック』櫻間瑞希

148……宗教 ウクライナ正教会、ギリシャ・カトリック、多神教の名残も
152……ウクライナ正教会の独立 キーウ・ルーシからの連続性の確認
156……ウクライナ史 様々な大国の間を生きた独自の歴史
156……・コサック時代
165……・ウクライナの民族意識
177……・ウクライナ化とスターリンによる大粛清
186……ロクソラーナ スルタン妃になった「スラヴの人」を意味する奴隷
188……ウクライナ史とロシア史 異なる視点が生む齟齬・対立
190……クリミア史 クリミア・ハン国、ロシアの南下、追放と移管

204……政治 権力者を嫌う、コサック由来の参加型・合議制との親和性
209……経済 一人辺りGDP地域最低水準だがとうとう成長の兆し
211……アントノウ社 現存1機の世界最大の輸送機ムリーヤを製造
212……IT大国 PayPalやWhatsApp、3D-Coatの創始者を輩出
214……模型 一向一揆のRed Boxや木造模型のUgears等個性メーカー
215……日宇関係 クリミア占領以降急接近、北方領土とサムライで親近感

221……参考文献
223……あとがき

前書きなど

はじめに
「こんにちは/ドブリー・デーン」。一見無表情に見える国境警備隊員にパスポートを差し出すと、彼らはあなたに少し微笑みあいさつをする。ボリスピリ空港を出て、電車かバスかタクシーかに乗り、30分ほど西へと走る。大きなドニプロ川に差し掛かると、窓から見える向こう岸には、夏なら青々とした木々、冬なら一面真っ白な雪に覆われている街が目に入る。それがキーウ(キエフ)だ。緑か白の景色の合間に見えるいくつかの金色のドームは、季節を問わずに鮮やかなコントラストと得も言われぬ調和を生み出し、街を訪れる者を魅了する。
丘の上には、1000年の歴史を誇る聖ソフィア大聖堂が立つ。大聖堂の中に入り、当時の姿の絢爛なモザイク画を眺めれば、否応なくルーシ時代の繁栄に想いを馳せることになる。鐘楼をくぐって外へ出たら、まっすぐアンドリー坂へ向かおう。このアンドリー坂は、古より丘の上の「政(まつりごと)」の台地と川沿いの低地に広がる「商い」の地「ポジール」を繋ぐ道であった。聖ソフィア大聖堂の周りに漂う、麗しいながらも、どこか厳かでいささかの緊張を帯びた雰囲気は、お土産屋の並ぶアンドリー坂を下っていくにつれほぐれていき、辺りは次第に、くだけた、「人の顔」の見える町へと変わっていく。そこでは、楽しそうに散歩をする市民、あちこちから漂うコーヒーの香り、ひっそりと佇む教会、気取らない建物、といった、キーウのもう一つの顔があなたを待っている。あなたが最初に食事をするお店では、おそらくウクライナの伝統料理「ボルシチ」を見つけるだろう。真っ赤な煮込みスープは、見た目からの想像とは裏腹に、まろやかで奥深く、ほんのり甘みを感じさせ、豊かなウクライナの大地の恵みを絞り出した味がする。そうして、あなたは、ウクライナに「出会う」のだ。
この本を手にした方の多くが、ウクライナ、と聞いたときに、あまり多くのことをイメージできないのではないだろうか。日本とウクライナは、単に遠い国、というだけでなく、間に存在するロシアの存在が分厚いフィルターとなり、ウクライナの姿はしばしば歪んだ形で伝えられる。しかし、黒土、カルパチア山脈、黒海に育まれた食材から生まれる豊かな料理、戦闘集団コサックが生み出した激しい舞踊、艶かしいほどに繊細な刺繍の民族衣装、数十の弦で複雑な音を奏でるバンドゥーラ、数々の美しい教会やお城、地平線まで続く夏のひまわり畑、あなたを優しく迎えてくれる個性豊かな人々……、ウクライナは、欧州の東端にある、おいしくて楽しくて美しい、隠れた宝石のような国である。
ウクライナ人とは、どんな人達であろうか。日本ではサムライがしばしば歴史上のシンボルとして扱われるのと同様に、ウクライナでは多くの人が自らの先祖を「コサック」とみなしている。ウクライナのコサックとは、周辺の民族と戦い、奪い、守り、敗れながら、自らの自由のために生き抜いてきた戦闘集団のことである。彼らが国の真の「独立」を得たのは1991年であるが、それ以前のウクライナには、様々な闘い、苦しみ、悲しみと喜びからなる複雑な歴史があった。そして、悲願の独立を得たウクライナの人々にとって、「自由」と「独立」は今日まで重要な価値となっている。
日本国民がウクライナへ短期の観光で訪れる場合、ビザは必要ない。しかし、今のところ日本からウクライナへの直行便はない。日本からはどの国を経由してウクライナへは行くのが便利か。到着したら、まず何を見れば良いか。何を食べるといいか。ウォッカ以外にもお酒はあるのか(たくさんある!)。そもそも、ウクライナ人とはどんな人達なのか。このような当たり前の質問に答える本が今まで日本にはほとんどなかった。この本では、1000年の歴史、深く多様な文化と伝統、美味しい食事、あたたかな人々、魅力あふれる素敵な国ウクライナを、多くの写真と言葉で皆にわかりやすく紹介したい。ウクライナに関心を抱く人が一人でも多く増えてくれれば、心から嬉しく思う。

著者プロフィール

平野高志 (ヒラノ タカシ)
1981年、鳥取県生まれ。東京外国語大学ロシア・東欧課程卒。2013年、リヴィウ国立大学修士課程修了(国際関係学)。2014~18年、在ウクライナ日本国大使館専門調査員。2018年より、ウクルインフォルム通信日本語版編集者。キーウ在住。写真家としても活動。

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