ウォー・ベスチャル・ブラックメタルガイドブック

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世界過激音楽4
究極のアンダーグラウンドメタル
アウトブレイク・ショウ(著/文)
ISBN 978-4-908468-06-3
C0073 A5判 224頁
価格 2,200円+税
書店発売日 2016年11月10日

 

 


紹介

ブラックメタルやデスメタルがメインストリーム化するなか

世界各地の地下シーンで

スラッシュメタル・デスメタル
・グラインドコア・ハードコアを

融合させながら
真の野獣性や野蛮さを死守し続けた

オールドスクールな背徳者達
究極のアンダーグラウンドメタル

軟弱化した北欧ブラックメタルに対して、メタルが本来持つ暴力性を頑なに貫き通したシーンの主要バンドやリリースを丹念に紹介した前代未聞の歴史的資料

■ベスチャル・ブラックメタルのレジェンドSARCÓFAGO

■「冒涜」ウォー・ブラックメタルの権化BLASPHEMY

■極悪プリミティブ・ノイズブラックメタルの帝王BEHERIT

HOLOCAUSTO・PARABELLUM・MYSTIFIER・ARCHGOAT・NAKED WHIPPER・BESTIAL WARLUST・ABHORER・DEIPHAGO・UNHOLY ARCHANGEL・CONQUEROR・HADES ARCHER・NUCLEARHAMMER・PROCLAMATION・TRUPPENSTURM・SADOMATOR・REVENGE・MORBOSIDAD・BLACK WITCHERY・DEMONOMANCY他

■Nuclear War Now! Productions!・Deathrash Armageddon
Record Boy・はるまげ堂・Cyclopean Eyes・SIGH等重要人物インタビュー

■インタビュー収録バンド、IMPURITY・GOATPENIS・GOAT SEMEN・NECROHOLOCAUST・LÜGER・PSEUDOGOD・DIOCLETIAN・
INFERNAL EXECRATOR・NOCTURNAL DAMNATION・GENOCIDE SHRINES・SEX MESSIAH・REEK OF THE UNZEN GAS FUMES
時代解説・レーベル紹介・フライヤー特集・カバー曲解説・メキシコ移民・ヤギ崇拝コラム・ウォーベスチャル用語辞典

目次

2 はじめに
6 目次

Chapter1 1980-1992

9 イントロダクション
10 ベスチャル・ブラックメタルのレジェンドSARCÓFAGO
13 ブラジリアン・ブラックメタルの創始者VULCANO
14 初期こそSARCÓFAGO と肩を並べた南米の代表格SEPULTURA
15 ブラジリアン・メタル史上最も過激なバンドHOLOCAUSTO
16 MUTILATOR/NECRÓFAGO/SEXTRASH/Cogumelo Records
17コロンビアン・カルトメタルのパイオニア PARABELLUM
18 BLASFEMIA/REENCARNACIÓN/MASACRE/HERPES
19 ATAQUE DE SONIDO
19 Rodrigo D: no future
20 ペルヴィアン・ブラックメタルの代表格HADEZ
21 MORTUORIO/MORTEM/ATOMIC AGGRESSOR/DEATH YELL
22 第二世代キングス・オブ・ブラジリアン・ブラックメタルMYSTIFIER
24 2014年に来日を果たした黒司祭率いる不浄集団IMPURITY
25 Interview with IMPURITY
30 バンド名以上のインパクトを誇るUG ウォーマスターGOATPENIS
32 Interview with GOATPENIS
35 BEHEMOTH/INQUISITION/ANAL VOMIT/AMMIT
36 「冒涜」の名を冠するウォー・ブラックメタルの権化BLASPHEMY
39 PROCREATION/ANTICHRIST/CREMATION/Wild Rags Records
40 デモテープ1 本だけで伝説級のカルトバンドNECROVORE
41 ザ・カルトブラックメタルVON
42 ニヒリズムな視点で戦争を取り上げたデスメタル・バンドORDER FROM CHAOS
43 後のウォー・ブラックメタルに影響を与えた地獄デスメタルINCANTATION
44 GOATLORD/PROFANATICA/IMPRECATION/EMBALMED
45 極悪プリミティブ・ノイズ・ブラックメタルの帝王BEHERIT
48 ブラックメタルを体現し続ける伝道師ARCHGOAT
50 インダストリアル・サイバー・パンク・サド・メタルIMPALED NAZARENE
51 BLASPHEMYとも関係のあるグラインドコア・バンドBLOOD
52 グラインド発ウォー・ブラックメタルNAKED WHIPPER
53 POISON/MAYHEM/BESTIAL SUMMONING/PRIMIGENIUM
54 Turbo Music/Seraphic Decay Records/Osmose Productions/Iron Bonehead Productions
55 オセアニアン・ブラックメタルの始祖SADISTIK EXEKUTION
56 オセアニアン・ブラックメタルの金字塔BESTIAL WARLUST
58 アジア初SARCÓFAGO 崇拝カルトABHORER
60 究極破滅的オーディオ拷問兵器DEIPHAGO
62 シンガポールのブラックメタル帝王IMPIETY
63 MARTIRE
63 フライヤー特集①
64 Interview with Nuclear War Now! Productions

Chapter2 1993-2000

67 イントロダクション
68 マニアを驚愕させた山羊精液冒涜音楽GOAT SEMEN
70 Interview with GOAT SEMEN
73 紅一点女性の残虐ヴォーカルBESTIAL HOLOCAUST
74 原理主義的ブラック・デスメタルSEGES FINDERE
75 BLACK ANGEL/NECROMANCY/GRAVE DESECRATOR/DIABOLICAL MESSIAH
76 現行ウォー・ブラックメタルの権化REVENGE
78 差別を蹂躙するヒスパニック系ウォー・ブラックMORBOSIDAD
80 メキシコ移民
80 Hammer of Damnation/Nuclear Winter Records
81 00 年代のウォー・ブラックメタル再興を担った最右翼BLACK WITCHERY
83 R.I.P Tragenda
84 ウォー・ブラックメタルの暴力性を極限まで持ち上げたレジェンドCONQUEROR
85 80年代エクストリームメタルの流れのピークAXIS OF ADVANCE
86 Peter Helmkampの最高傑作ANGELCORPSE
87 地味ながらUS ウォー・ブラック・シーンの実力者MANTICORE
88 ALLFATHER/RITES OF THY DEGRINGOLADE/OUROBOROS/CULT OF DAATH
89 RITUAL KILLER/BLACK TORMENT/ALFA ERIDANO AKHERNAR/Hells Headbangers Records
90 カタストロフィック・ウォー・ブラックメタルUNHOLY ARCHANGEL
92 ヘレニック・ウォー・ブラックの重鎮EMBRACE OF THORNS
93 情報を明かさない神秘的暴虐ブラック・デスメタルCHARON
94 デンマークカルトSADOMATOR の前身SADOGOAT
95 GOATVOMIT/WARGRINDER/NÅSTROND/SORGHEGARD
96 BESTIAL WARLUST 後期の残照DESTRÖYER 666
97 ハイクオリティー・ブラック・デス・ドゥームVASSAFOR
98 日本語として読むのが憚れるベスチャル・デスラッシュMANTAK
99 2012 年に来日を果たした白塗り東南アジアブラックメタルSURRENDER OF DIVINITY
100 ABOMINATOR/GOSPEL OF THE HORNS/DESTRUKTOR/KORIHOR
101 Iron Pegasus Records/Invictus Productions/InCoffin Productions/Blood Harvest
102 Interview with Deathrash Armageddon
106 Interview with Record Boy
109 フライヤー特集②
110 カバーから見るウォー・ベスチャル・ブラックメタル

Chapter3 2001-2007

111 イントロダクション
113 チリUGシーンの覇者にしてチ○ ポメタラーHADES ARCHER
115 現行チリシーンを牽引する実力派バンドPERVERSOR
114 スペイン語ヴォーカルが強烈なベスチャル・ブラックKULTO MALDITO
115 五寸釘バンドが凄過ぎるエクアドルの猛獣NIHIL DOMINATION
116 DEMONIC RAGE/ASSAULT/SLAUGHTBBATH/DEATH SKULL
117 MISERYCORE/MORBID GOAT FORNICATOR/WRATHPRAYER/ANTICRISTO
118 WAR HAMMER COMMAND/RAVENDARK’S MONARCHAL CANTICLE/ALCOHOLIC RITES/BESTIAL POSSESSION
119 ゴートメタルの権化NECROHOLOCAUST
120 Interview with NECROHOLOCAUST
122 Goat Worship
124 コンセプトを重要視するブラック・デスメタル・バンドNUCLEARHAMMER
125 「時代遅れ」どころか最先端の音楽性ANTEDILUVIAN
126 火傷注意な強烈ハーシュノイズ・ブラックNYOGTHAEBLISZ
127 バーバリック・スカム・パンク・デス・ブラックメタルAMPÜTATOR
128 WEAPON/A.M.S.G./HELLVETRON/MARTYRVORE
129 BAPHOMETS HORNS/KOMMANDANT/NUCLEAR DESECRATION/BLASPHERIAN
130 APOCALYPSE COMMAND/Proselytism/Legion Of Death Records/Kill Yourself Productions
131 フライヤー特集③
132 Ross Bay Cult から認められたBLASPHEMYの後継者PROCLAMATION
134 現行ブラック・デスメタル・シーンを代表する存在TEITANBLOOD
136 「Nuclear Fuck」がモットーのカルトバンドLÜGER
137 Interview with LÜGER
140 BLASPHEMY+ SARCÓFAGO BLASPHEMOPHAGHER
142 凍てつく北の大地から激熱ブラック・デスPSEUDOGOD
143 Interview with PSEUDOGOD
145 ドイツでは珍しいピュア・ウォー・ブラックメタル・バンドTRUPPENSTURM
146 ポーランドで気を吐くウォー・ブラックメタルBESTIAL RAIDS
147 ウォー・ブラック界隈随一のカルトバンドSADOMATOR
148 DEATH SQUADRON/WARGOATCULT/CHAOSBAPHOMET/WARGOAT
149 RIDE FOR REVENGE/ANAL BLASPHEMY/SADOKIST/NECROS CHRISTOS
150 WARFIRE /BLASPHEMOUS NOISE TORMENT/IN LEAGUE WITH SATAN/NECROVOMIT
151 PEK/PURIFICATION KOMMANDO/GOATFAGO/GODSLAYING HELLBLAST
152 キリスト教を弾圧したローマ帝国の皇帝の名前DIOCLETIAN
153 Interview with DIOCLETIAN
155 レバノンの黒き炎の抗いし址DAMAAR
156 ヨーロッパツアーも成功した東南アジアの雄INFERNAL EXECRATOR
157 Interview with INFERNAL EXECRATOR
160 アジアン・ウォー・ブラックメタルの決定版ZYGOATSIS
161 SANGUINARY MISANTHROPIA/NECHBEYTH/SADIZTIK IMPALER/BATTLE STORM
162 DEATHCHURCH/DEMONICAL CRISIS ASSEMBLY/Satanic Skinhead Propaganda/Old Cemetery Records
163 Interview with Narutoshi Sekine from Harumagedo(はるまげ堂)

Chapter4 2008-2016

171 イントロダクション
172 来日2 回の極悪ベスチャル・バンドINFERNAL CURSE
173 VOMIT OF DOOM/SPIRITUAL DESECRATION/GOATOIMPURITY/BLOODY VENGEANCE
174 ISTENGOAT/HAMMERGOAT/POISONOUS/MORBID MACABRE
175 IMPALER OF PEST/MASTER OF CRUELTY/GOATBAPHOMET/METAL ATTACK
176 新世代ウォー・ブラックメタルの雄WEREGOAT
177 近年のウォー・ベスチャル有望株筆頭ABYSMAL LORD
178 BLACK DEVOTION/NOCTURNAL BLOOD/RITUAL NECROMANCY/SATANIK GOAT RITUAL
179 VOMITCHAPEL/CAVEMAN CULT/SACROCURSE/LORD DIABOLUS
180 大先輩から可愛がられまくりな新星ウォー・ベスチャル・バンドDEMONOMANCY
181 2010年代山羊メタルの決定版GOATBLOOD
182 BLASPHERIT /OGDRU JAHAD/FUNERAL GOAT/BLACK FEAST
183 BESTIAL NOISE/WÖMIT ANGEL/GOAT TORMENT/GOATVERMIN
184 NECROBLOOD /TYRANT GOATGALDRAKONA/HIC IACET/SUPREMATIVE
185 NUCLEAR MAGICK/EGGS OF GOMORRH/NECROSEMEN/SARINVOMIT
186 極東アジアで独り咆哮を上げるウォー・ブラックNOCTURNAL DAMNATION
187 Interview with NOCTURNAL DAMNATION
190 仏教ナショナリズムに抗うメタルテロリストGENOCIDE SHRINES
191 Interview with GENOCIDE SHRINES
194 国内随一な不浄冒涜メタルバンドSEX MESSIAH
195 Interview with SEX MESSIAH
198 伊賀発・謎の覆面ウォー・ブラック・グラインドREEK OF THE UNZEN GAS FUMES
199 Interview with REEK OF THE UNZEN GAS FUMES
203 HERESIARCH/WITCHRIST/DECREPIT SOUL/LUSTRATION
204 ESKHATON/IMPIOUS BAPTISM/TEMPLE NIGHTSIDE/HELLUCINATE
205 SERPENT’S ATHIRST/TETRAGRAMMACIDE/BLASPHMACHINE/WARKVLT
206 Dunkelheit Produktionen/Black Goat Terrorist 666/Dark Descent Records/Chalice Of Blood Angel
207 Vault Of Dried Bones/Deathrune Records/Kvlt/Von Frost Records
208 Interview with Cyclopean Eyes Productions
213 Interview with Mirai Kawashima from SIGH

221【付録】War Bestial Dictionary
223 あとがき

前書きなど

本書はウォー・ベスチャル・ブラックメタル(War/Bestial Black Metal)を主題としたディスクガイドを目指して作成されたものである。ウォー・ベスチャル・ブラックメタルとは北米で生まれたウォー(ブラック)メタル、そして南米で生まれたベスチャル・ブラックメタルの総称であり、海外ではしばしば「War Metal a.k.a. Bestial Black Metal」と表記されている。
両者は共に近い音楽的ルーツを持ちつつも、世界情勢が大きく変化していった1980年代に創生されたこともあって、それらは地域ごとにローカライズされてアンダーグラウンドにて音楽的志向性を固めていった。それにはインターネット以前という時代背景が大きく関与している。
一方でそのようなデジタル社会到来以前であっても両者は相互に影響を与えあってきた。特にそれを支えてきたのは様々な国のカルトなマニアが作成していたDIYファンジンであり、またそのファンジンを通じた海外同士のバンドやマニアのコネクションとして文通や音源トレードの存在である。
また現在ではインターネットの普及などにより、親和性の高い両者のボーダーレス化が進んだことで、双方の影響を受けたバンドが多数活躍していることから、大枠で一つのジャンルと捉えられることも多く、本書でも一括した主題として紹介している。
今日、特に日本においてこのウォー・ベスチャル・ブラックメタルは「ブラックメタルのサブジャンルの一つ」として捉えられることが多く、更に現在、ブラックメタルとして広く認知されているものとは音楽性が異なるため、一部のマニアを除くと知名度や人気が低いのが実情であろう。また文通、音源トレード、ファンジンによる交流などオールドスクールなアナログスタイルを好むファンが根強いジャンルであるため、インターネットなどを通じて広く体系立てられた認知に至ることがなく、マニアの中で不文律のように存在している印象があった。
そこで本書では書物というアナログな手法で、ディスクレビューや重要なバンドのバイオグラフィ紹介やインタビューなどを通じて、当ジャンルの歴史とその流れを体系的にまとめあげることを目的としている。なお今回は出版物であるということでインタビューを快諾頂いたバンドも多数存在しており、如何にアナログというスタイルがこの界隈において重視されているかお分かり頂けるであろう。
また冒頭に「ディスクガイドを目指して」と濁した理由としては本書の記事はほぼ独りで執筆したが故である。本書においては様々なキャリアを持つバンドや識者へのインタビューなども織り交ぜており、多元的な視野が含まれるように試みた。しかしディスクガイドの肝であるレビューに関して、そのラインナップこそ協力者の方々との相談の上の産物だが、レビューそのものに関しては一部を除いて独りで執筆した。そのため取り上げたアルバムに個人的な体験や好みに由来する偏りが生じている。しかしそのようなスタイルも上記ファンジン文化へのリスペクトだとご理解いただければ幸いであるし、本書を通じて更に論議などが発生して体系化が進むことを期待している。なお、唯一のゲストレビュワーとしてK.O.N.氏に参加していただいた。文末に(K)と記載してあるものが氏の執筆レビューである(計9枚)。この場を借りて改めて御礼を申し上げたい。

へヴィメタルとのエクストリーム化とVENOM
さて、本題に入る前にメタルのエクストリーム(過激)化の流れについて先に述べたい。ウォー・ベスチャル・ブラックメタルは古くからのメタルやハードコアをルーツとし、それらのエクストリーム化の流れこそがジャンルの成り立ちであるためである。そのため少々長くなるがお付き合い願いたい。
まず1980年以前のメタルとハードコアのエクストリーム化の流れについてであるが、本題のエクストリーム化という視点でヘヴィメタルの源流を考えると、その始祖がBLACK SABBATHであるということに異論は少ないだろう。1968年に結成したイギリスのBLACK SABBATHが提示した「人を怖がらせる音楽を作る」というコンセプトによって生み出された音像やイメージは実に怪奇的なものであり、黒魔術や悪魔といったオカルトとも親和性があった。このような当時革新的な過激さはへヴィメタルムーブメントを引き起こし、その後、同じイギリスのJUDAS PRIEST(1970年結成)、IRON MAIDEN(1975年結成)、ANGEL WITCH(1977年結成)などを生み出した。特にIRON MAIDENはNWOBHM(New Wave Of British Heavy Metal)を牽引した存在であり、メインストリームを切り開いた存在である。
またBLACK SABBATHの怪奇的なスタイルはイギリス国外に波及し、イタリアのDEATH SS(1977年結成)、デンマークのMERCYFUL FATE(1980年結成)らが「Horror」をテーマにしたダークなオカルトメタルを創り出した。こちらは後にブラックメタルでよく見られるオカルティズムの礎となった。
一方でハードコアパンクに関してはアメリカのRAMONES(1974年結成)らのパンクロックに影響を受けたイギリスのSEX PISTOLS(1975年結成)によってヨーロッパでもシーンが形成され、THE DAMNED、THE CLASH(全て1976年結成)と共にロンドン三大パンクバンドと呼ばれたもののその勢いは長く続かなかった。そこでハードコア(極端)パンクとしてロックの要素を排除した過激な音楽がDISCHARGE(1977年結成)、G.B.H.(1978年結成)らによって創出された。この流れはNWOBHMの持つロック性と相反する形となり、メタルとハードコアパンクの決定的な隔たりとなった。
一方であくまでパンクロックとしてのエクストリーム化を追求したのがイギリスのMOTÖRHEAD(1975年結成)である。彼らはロックンロールを軸に据えてエクストリーム化を追求した結果、へヴィメタルにもハードコアパンクにも通じる音楽性を完成させた。MOTÖRHEADの存在こそがメタルとハードコアパンクの唯一の接点であった。
そこで生み出されたのが1979年に結成されたVENOMである。流れとしてはNWOBHMから生み出されたバンドであるが、MOTÖRHEADに通じるエクストリーム化の追求によって全くの異端児として世の中に現れた。それは当時、反目していたハードコアパンクの過激さに勝るとも劣らないものであった。但し彼らの場合、更に徹底的に悪魔主義を押し出したイメージ戦略により(後に彼らは本気ではなかったことを言及している)、へヴィメタルという枠組みを超えたエクストリームメタルの始祖となったのである。VENOMの存在はアンダーグラウンドなメタルシーンにおけるエクストリーム化の道筋を示した。それに追随したジャンルがスラッシュメタルであり、そしてブラックメタルである。

1st Waveブラックメタル
VENOMの影響を受けて過激な音楽性とアティチュードを掲げたバンドであるアメリカのSLAYER(1981年結成)はIRON MAIDENやMERCYFUL FATEの影響も公言しており、へヴィメタルの過激化の流れを踏襲しているが、同時にメンバーのJeff Hanneman氏はハードコアパンクの愛好家でもあったため、そのエクストリームメタル化に拍車が掛かり、同1981年結成のMETALLICAと共にスラッシュメタルを創出した。彼らの音楽性は現在のデスメタルやブラックメタルを含むすべてのエクストリームメタルに絶大な影響を及ぼしたと言える。
一方でヨーロッパにおいては、ドイツのSODOM(1981年結成)、スイスのHELLHAMMER(1982年結成)、スウェーデンのBATHORY(1983年結成)もVENOMのエクストリームメタル化の道筋を辿ったバンドであり、この3バンドが起点となって形成したサタニックなメタルのムーブメントは後に「1st Waveブラックメタル」と称されるようになった。また先に示したオカルトメタルの要素が加わることで、よりそのサタニックなイメージを増強している。そのジャンル名は明らかにVENOMの2ndアルバムタイトルが語源ではあるが、当時こそこれらのバンドはスラッシュメタルと評されることもあれば、1980年代半ばには既に「Black Metal」という単語が一部で使われていたことも当時のファンジンなどで確認できる。更に言えば上記バンドを「Death Metal」と呼んでいることもあったようで、決してジャンルとして定義・確立されていたわけではなかった。それはデスメタルもブラックメタルも現在のようにサブジャンルも含めて詳細に区別されることなく、一つのエクストリームメタルとしてシーンを共有していたからである。また日本においても1983年に結成されたSABBATが現在でも1st Waveブラックメタルの代表格として世界中からリスペクトされていることも追記しておきたい。また80年代前半より活動していたブラックメタル・バンドの影響を受けて生まれたスイスのSAMAELやチェコのMASTER’S HAMMER(共に1987年結成)はヨーロピアン・オカルトメタルの継承者であり、そのオカルティズムの表現方法は1st Waveブラックメタルから新たに発生した2nd Waveブラックメタルへの橋渡しも担ったとされ、かつ現在も活動しておりヨーロッパでの人気は絶大である。

スラッシュメタルからデスメタルへ
さてエクストリームメタルとしてのもう一つの流れであるスラッシュメタルから新たにデスメタルというジャンルが発芽しようとしていた。1980年代前半には既に後のデスメタル・レジェンドであるバンドたちがデビューをしていたが、この頃の音楽性はスラッシュメタルから逸脱していないものであった。それらのバンドを中心に過激化を推し進めていった結果としてデスメタルが生まれた。デスメタルの起源は諸説あり、ここでの解説は最小限に押しとどめておくが、過激化の方向性としてVENOMのサタニックなアティチュードを推し進めていったサタニック・デスメタル、もしくは後で言及するグラインドコアとの相互作用によるサウンド面での苛烈化としてのフロリダ・デスメタル、北欧ハードコアの影響も受けたスウェディッシュ・デスメタルといった分岐が生まれ、特にフロリダ・デスメタルとスウェディッシュ・デスメタルは商業的にも成功を収めた。一方でサタニック・デスメタルは1st Waveブラックメタルとの親和性もあり、主に北米にてアンダーグラウンドなメタルシーンを形成していった。
またグラインドコアはハードコアパンクからメタリックなサウンドを取り込んでいった中期NAPALM DEATHによってサウンドの基本が創出され、それをイギリスのCARCASSやアメリカのREPULSIONなどの活動を反映してグラインドコアと呼ばれるに至った。グラインドコアはエクストリーム化としての進化の方向性において飽和が見られた音楽でもあり、そこから要素の棚卸的に様々なジャンルに向かっていった。1987年結成のTERRORIZERはデスメタルのスピードアップに影響を与えたし、CARCASSはより猟奇的なテーマを扱ったゴアグラインドの道を切り開いた(テーマによる過激化)。更にドイツのBLOOD(1986年結成)、AGATHOCLES(1985年結成)などは後のウォー・ブラックメタルの始祖、BLASPHEMYのサンクスリストに掲載されているなど関連性が見受けられる。

ウォー・ベスチャル・ブラックメタルとは
長いことお待たせしたが、ようやく本書のテーマであるウォー・ベスチャル・ブラックメタルの言及にたどり着いた。先ほどまで示したへヴィメタルとハードコアパンクを起点とするエクストリーム化の流れにおけるスラッシュメタル、グラインドコア、デスメタル、1st Waveブラックメタルの立ち位置において、ウォー・ベスチャル・ブラックメタルはそれらのハイブリッドなスタイルによって構築されている。
まず、南米を起点に発生したベスチャル・ブラックメタルは1st WaveブラックメタルのうちSODOMの影響が強く、またスラッシュメタルの要素も多く入っており、当時はデスラッシュと呼ばれた(昨今は他の音楽スタイルを呼ぶ際に使われることも多い)。これは南米という地域性により、他の国で起きていた当時の音楽のエクストリーム化の爆発的な変遷に必ずしも同期していなかったため、スラッシュメタルを変化させずに南米らしいローカライズをしていった結果ではないかと思われる。特にこの頃の南米のアンダーグラウンド・メタルシーンはハードコアパンク界隈との交流もあったようで、それが南米らしさを生んだ一つの要因だという意見もある。
一方でウォー・ブラックメタルはベスチャル・ブラックメタルに対してよりカオスに様々なエクストリーム化への要素を組み合わせた80年代のエクストリームメタルの究極形態であると言える。またこのジャンルの始祖であり頂点であるカナダのBLASPHEMY(1984年結成)はあくまで(1st Wave)ブラックメタルの上にこの音楽スタイルがあるとして、ブラックメタルそのものであると主張している。そのように当初はウォー・ブラックメタルというジャンルは存在しておらず、後に称されるようになった言葉であり、実際はウォーの要素の入っていないフィンランドのBEHERIT(1989年結成)もBLASPHEMYからの影響を大きく受けたということで、現在はウォー・ブラックメタルとして見られることが多い。
またウォー・ブラックメタルに限りなく音楽性が近く、現在に至るまでシーンを強く共有しているのが北米のサタニック・デスメタルからの流れで生まれたブラック・デスメタルである。こちらは極めてジャンルとして曖昧なポジションであり、特に近年はウォー・ブラックメタルとの境界線がほぼ薄れてきていることから本書では同一のジャンルとして扱っている。但しサタニック・デスメタルルーツではないものに関しても一部ブラック・デスメタルと称されているバンドがあるが、そのようなバンドに関しては基本的に紹介していない。

最後に
ここで本書の内容についても触れておく。まず第一章ではそのようなウォー・ベスチャル・ブラックメタルの成り立ちとして1992年までに結成されたバンドの紹介を行っている。つまりそこにはSARCÓFAGO、BLASPHEMY、BEHERITなど現在でも語り継がれているレジェンドが登場し、南米からアジアまで世界の各地域でどのようにレジェンドの影響が波及してシーンが形成されていったかを知ることができる。
第二章では1993年から2000年までに結成されたバンドの紹介を行っている。1993年とは第一章で取り上げたレジェンドが次々と解散していった年でもあり、これはブラックメタルのトレンド化が進んだ結果である。そのためこの時期は暗黒時代とも言え、埋没していたバンドも多い中、後に再評価されていったことについても触れている。
第三章では2001年から2007年までに結成されたバンドの紹介を行っている。2001年はBLASPHEMYがライブ活動に本格復帰した年で、ウォー・ベスチャル・ブラックメタルの再評価への機運が高まりだした年である。そのためこの時期は過去の音源が盛んに再発され、90年代に雌伏の時を過ごしていたバンドたちが表舞台に返り咲いた時代であり、最も活発な時代であったと言える。
第四章では2008年以降に結成された、言わば最近のバンドを取り上げている。それらの特徴は過去のバンドへのリスペクトを重視したオールドスクールなスタイルから、それらをミックスしてよりディープで新しいウォー・ベスチャル・ブラックメタルを築き上げようとチャレンジするスタイルまで幅広くなっており、今後のウォー・ベスチャル・ブラックメタルの展開を占うものとなっている。

そのように本書では「地域性」と「時系列」の二点に着目することでこのジャンルの体系を具現化した。またそのために必要な証言を得るためのインタビューは18件にも及んでいる。どのインタビュー相手も今までの商業誌面では掲載されなかったようなアンダーグラウンドのディープなバンドやレーベルばかりであり、貴重なものになっている。またカバーアートにはこ
のジャンルにおいて第一人者のアーティストであるSickness666氏に作成していただいたが、その邪悪なウォー・ベスチャル・アートに負けない内容になったと自負している。

著者プロフィール

アウトブレイク・ショウ(アウトブレイク ショウ)
1982年生まれ。生まれた時から年の離れた兄の影響でヘヴィメタルと密接な環境に育ち、学生時代に自宅のCDラックから発掘したSODOMとBEHERITに魅せられ、その後は一切趣向に変化がない。社会人になって「なぜこんな騒々しい音楽が魅力的なのか」という自我が芽生え、その答えを求めて拙ブログ『Outbreak of Evil』を開設して今に至る。現在でもその答えは出ておらず、その活動の延長上に本書の存在がある。二児の父としてレコードを聴く時間を作れないのが最近の悩み。

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