村田恭基さんによる『オールドスクール・デスメタル・ガイドブック 上巻』が完成したので、ブログで詳しく紹介します。

カバーのイラストはスペインのJuanjo Castellano Rosadoにお願いしました。

本職は恐竜のイラストレーターなのですが、オールドスクールで有名なAvulsed、DSMBのVanhelga、そして日本のCoffinsやInvictus等のアートも手掛けている今引っ張りだこの人気者。

こちらの意図を的確に理解し、うまくオールドスクール感を実現してくれました。

このイラストを見た未来の『世界過激音楽』の著者の何人かから、「こんな感じが良い」とか「この人に頼みたい」と言われました。

イラストレーターとしては珍しく、非常に温厚で、ややこしい事は一切言ってきませんでした。

日本のデスメタルバンドをやっている方々にも、強く推奨できるイラストレーターです。

帯を着脱した状態。

この『オールドスクール・デスメタル・ガイドブック』は「上巻」とある通り、過去のデスメタルの歴史を総合的に振り返るもので、収録対象が余りにも多く、1冊では収まりませんでした。

これはアメリカの南部の章。フロリダのタンパを含んでおり、デスメタル発祥の地の一つです。

まずは何と言ってもCannibal Corpse。出身はニューヨークのバッファローですが、早い段階で拠点をフロリダに移しています。

デスメタルで一番有名なバンドといえばこのCannibal Corpseと言っても誰も否定しないでしょう。「Theデスメタル」と言っても過言ではなく、そのイメージを作り上げた第一人者です。

はっきり言って「デスメタルそのもの」なので「オールドスクール」とカテゴライズするのもどうかと思いましたが、基本中の基本として収録。

名前自体が「Death」で、皮肉なことにフロントマンが早死にしてしまったバンド。このバンドもデスメタルを象るだけでなく、後のテクニカルデスの方向性を決定づけました。

重さや鈍さでは随一のObituary。左のページはデスメタルの帝王Morbid Angel。

この辺りは基本中の基本です。

『オールドスクール・デスメタル・ガイドブック』は元々デスメタルに馴染みのない方々、別ジャンル出身の人達にとっては入門書にもなると言えます。

別名『デスメタル入門』と言っても過言ではありません。

さて大御所だけでなく、今度はDeceased…のインタビュー。

章の後半は音源のレビューです。MassacreやMontsrocity、Nocturnusなど重要バンドが見えますね。

デスメタルがどういう経緯で生まれたのかを説明した「デスメタル前史」コラム。

フロリダを離れると結構マニアックになってきます。これはニューヨークのWinter。後のフューネラルドゥームやスラッジ、ドローンなどに影響を与えますが、当時は無理解に苦しみました。

『ウォー・ベスチャル・ブラックメタル・ガイドブック』でも紹介され、ブルータルデスメタルと認識する人も多い、Incantation。後にリチュアル系の元祖と見なされます。

Nunslaughterのインタビュー。

章末のレビューコーナー。個人的にお気に入りだったMorpheus Descendsも。

Internal Bleedingとも似たグルーブ感があり、当時は必ずしもOSDMとは見なされていませんでしたが(そもそもその様な概念がありませんでした)、後になってから評価が高まった様です。

デスメタルを発生させる要因となった、それ以前の重要音源。HellhammerやSlayer、Possessedなどが見えますね。

今でも活動しているデスメタル長老Master。

現在はチェコに移転し、Krabathorとも関わっています。インタビューも載っています。

プレデスコア的な存在で、部分的にブルータルデスメタルとも見なされていたJungle Rot。インタビューにも答えてくれました。

あのWild RagsやJL Americaなどを含めたレーベル紹介。

オールドスクール・デスメタルと言われて一番思い付くのがAutopsyではないでしょうか。

同ジャンルの第一人者的な存在で、その音はまさにオールドスクール。

まさにオールドスクール・デスメタルの代表格であるAutopsyのインタビューに成功しました。

オールドスクールに対峙すると言われるブルータルデスメタル。そのブルータルデスメタルから見たオールドスクールについて、著者の村田さんと編集者のハマザキカクの対談が載っています。

お互いの相違点がはっきりと浮かび上がりました。

アメリカの次はカナダ。今ではアヴァンギャルド、テクニカル・デスメタルの創始者の一つと認定されているGorguts。

カナダ、特にケベックは良質なバンドが沢山います。

ウォー・ベスチャル・ブラックメタルとも密接に関係のあるオールドスクール・デスメタル。

『ウォー・ベスチャル・ブラックメタル・ガイドブック』のアウトブレイク・ショウ氏によるコラムも。

南米でもオールドスクールは大きな勢力を持ち、メキシコのThe Chasmの超ロングインタビューも掲載。

日本で最もオールドスクール・デスメタルを取り扱っていると見られる高円寺のRECORD BOYの大倉店長の寄稿コラム。

最後の章はアジアですが、特に公平な目で見ても世界的なシーンの中でトップクラスだったとも言える日本の初期デスメタル。

ざっと見どころをダイジェストで紹介しましたが、ここでは十分説明し尽くせません。是非、本書を買ってみて下さい。

なお隣接ジャンルの『ブルータルデスメタルガイドブック』は在庫切れで重版未定。プレミア価格で転売されています。

『オールドスクール・デスメタル・ガイドブック 上巻』も企画の性質上、大部数を刷っている訳ではないので、後で入手困難にならないように、早めにお買い求めになる事をお勧めします。