突然ですが、栗原久定さんによる『ドイツ植民地研究』を出版します。

著者は若手ドイツ史研究者の栗原久定さんです。

後発帝国主義国として最大の領土を得つつも
第一次大戦で全てを失い、短期間で消滅地
ナチスの生存圏やジェノサイドにも
影響を及ぼしたとされる
忘れ去られた幻の領土の謎に迫る

副題は「西南アフリカ・トーゴ・カメルーン・東アフリカ・太平洋・膠州湾」とある通り、
過去にドイツ帝国が植民地として領有していた地域です。

それぞれにかなりの特色があります。

■西南アフリカ 「生存圏構想」の端緒となり、ナチ党ジェノサイドの起源とも言われる
■トーゴ キリスト教ミッションと協力し、補助金なしでもやっていけた「模範的植民地」
■カメルーン アフリカの縮図であり、大幅に領土拡大し「中央アフリカ」構想に繋がる
■東アフリカ キリマンジャロを有し、農業・交通の面で大規模なインフラ開発が行われた
■太平洋 首長介し間接統治し、第一次大戦後に日本が「委任統治領」として後を引き継ぐ
■膠州湾 植民地化は出来ずに「租借地」として海軍省が管轄した中国市場の経済拠点

西南アフリカは今のナミビアですが、ここにはドイツ系の人が数多くいて、ゲーリングの父親も弁務官として赴任していた事が知られています。

日本とも馴染みの深いパラオや等の太平洋の島々が一時、ドイツ領だった事を知っている人も多いでしょう。

そしてプロイセンをお手本としておきながら、第一次大戦時には日本軍が青島のドイツ軍を攻撃し、捕虜となったドイツ兵士達が日本にドイツ文化を根付かせた事も有名です。

旧植民地を含め、失われた領土を回復するためにナチスドイツが勢力を拡大したとも言えます。

短期間だったにも関わらず、ドイツ植民地は今現在にも多くの影響を与えています。

ナミビアの右端がフライパンの取っ手のように突き出ており、不自然な国境線になっているのを気になった事がある人も多いでしょう。

カプリヴィ回廊というのですが、イギリスと結んだヘルゴラント=ザンジバル協約によって、あの様な国境線になっています。
なぜあの様な不自然な国境線が画定されたのか、本書ではその背景を詳しく説明しています。

地形や民族を無視した
直線過ぎる国境線
など73枚もの地図

またビスマルク諸島やサモアなどの南国に、ヨーロッパ風の建物が建っていてミスマッチ感を覚えた人もいるでしょう。

常夏ビーチやジャングルに突如現れる
 メルヘンチックな植民地建築

 など1180枚以上の写真

この『ドイツ植民地研究』では今まで目にする機会が非常に限られていた、
ドイツ植民地の様子が分かる画像を1180枚も掲載しました。
見ていてとても不思議です。

またドイツ植民地と関係のある「社会主義者と植民地」「中央アフリカ計画」「日本統治下の太平洋植民地」等のコラムも用意しています。

ドイツ史や植民地研究、帝国主義研究の中でも重要なテーマであるにも関わらず、ドイツの植民地に関する包括的な概説書は今までありませんでした。

この本が切っ掛けとなって、この分野の研究が進むことを期待しています。

是非、ドイツ史や植民地研究に関係する方々だけでなく、歴史マニア、軍事オタク、共産趣味者など幅広い読者層の方々に読んでもらいたい内容です。

A5半上製480ページと圧倒的なボリューム。5月10日頃発売予定です。

既刊書の『第二帝国』上下巻も絶賛販売中です。

明後日4月21日には赤坂のライオン堂という書店でイベントも開かれます。

4/21(土)17:30〜『第二帝国』(パブリブ)刊行記念イベント<編著者 伸井太一特別講義>